2023.12.14

選び方から活用法まで! マンガIPタイアップを成功させるためのヒントと今後の可能性 ── 共催ウェビナーレポート

昨今、注目を集めている、マンガIPとのタイアップ施策。活用事例が増えている一方で、どのIPを選べばいいのか、効果を最大化するために何が必要なのか、何から始めればいいのかといった、お悩みをお持ちの方も増えています。そうした疑問にお答えすべく、今回、オンラインでの共催セミナー「マンガIPとのタイアップって難しい? 効果を上げるためのヒント」が実施されました。その内容を、レポートします。

プロデュースカンパニーとIPホルダーによる、マンガIPウェビナー

今回のウェビナーには、マンガIPと企業の多種多様なコラボレーションを実現させてきたMinto社の取締役COO 高橋伸幸さんと、豊富なマンガIPを有する講談社のIPビジネス部 岩切秀一が登壇。マンガ・アニメを活用したコンテンツのプロデュースカンパニーと、IPホルダーという立場で、マンガIP活用のヒントを届けました。

Minto社は、コンテンツの販売、流通、制作事業を担い、アニメ・マンガなどのエンタメビジネスをアップデートするスタートアップです。新しいテクノロジー、コンテンツのトレンドなどを自社のデータベースと掛け合わせて、最適なコミュニケーション方法や広告表現を生み出しています。これまでに、講談社のマンガIPを活用した事例も多くあり、その縁から、今回の共催ウェビナー実施に至りました。

SNS×マンガ/アニメ広告で国内最大級の約2000件の実績を持つ、Minto社の概要。
2023年には、大手IPホルダーと提携し、著名IP検索‧活用システム「キャラバコ」をリリース

「ファンの熱量の転移×伝播」がIP活用の最大のメリット

Mintoの高橋さんは、マンガIPとコラボすることのメリットについて、「コラボコンテンツのX(旧Twitter)における会話発生率(イイネ/RT /リプライ)の平均は9%前後で、通常の#PRがついている投稿と比較すると平均して15倍程度のSOV(※)が見込める」と語ります。さらに、マンガ・アニメとコラボをすることで「ファンがブランドを好きになる、 "好意の転移"が起こる」ことが最大のメリットと話します。

※Share Of Voice:競合企業や競合する商品・サービス間の広告出稿量やメディアへの露出量を表す数値

マンガIPとコラボレーションすることで、ファンの熱量がマーケティングにも活かされる

昨今、動画配信サービスの普及もあって、マンガ・アニメの接触時間は増え続けています。そのなかでマンガIPを活用することは、親しみを持って商品・サービスとの接触を生み出すことができるため、マーケティングにおいても有用であると言えます。

高橋さんは続けて、自社の調査によって判明した、マンガIP活用の3つの効果について説明しました。

マンガIP活用の効果〜認知獲得、情報拡散、ブランドリフト効果〜

FACT1:新たな顧客認知の獲得
「マンガIPはSNSでもっとも相性の良いコンテンツのひとつです。潜在層にリーチし、新たな認知獲得が期待できます」(高橋さん)

マンガIP活用の効果〜FACT2:熱量高い拡散力〜
「作品のファンの熱量がSNS上での発話につながるため、マンガIPとのコラボは、高い情報拡散力を生み出します」(高橋さん)

マンガIP活用の効果〜FACT3:ブランドリフトの向上〜
「マンガIPとのコラボコンテンツは、タレント起用のテレビCMより10%近く、ブランド好感度が上昇。作品および声優のファンがブランドのファンになるという、好意の転移が期待できます」(高橋さん)

パネルディスカッション

ウェビナーの後半では、高橋さんと岩切による、パネルディスカッションが展開されました。最初のテーマは「最適なマンガIPの選び方」。

Minto独自のデータベース「キャラバコ」を活用し、最適なIPを選定

高橋 弊社ではIPとのマッチングを成功させるためのナレッジを、3つのステップで考えております。これは、企業の商品やサービスとコラボレーションすることで、マンガやアニメの作品にメリットがあること、そして作品のファンが喜んでくれる企画であることが前提となります。

マンガやアニメのキャラクターはあくまでもメッセージの代弁者であるため、まず最初に、企業がステークホルダーに届けたいメッセージは何かを定義することが重要です。次に企画にブリッジする段階では、IPのデータとマーケティングのターゲットとのマッチ度を定量化してIPを選定します。そしてファンが作品に求めるストーリーや、ファンが喜んでくれる見せ方は何だろうというところを相談しながら作りあげていくことになります。

Minto社が実施している、IPとの最適なマッチングを実現するための3つのSTEP

「なぜその作品なのか」「この企画やこのIPでどれだけリーチが期待できるのか」といった課題を相談されることも多く、それを解決すべくリリースした弊社独自のデータベースサービスが、「キャラバコ」です。こちらを活用して、極力簡単にIPを選べるように、ご相談もクイックリーにしていきたいと考えていますし、このようなサービスを作っていることが僕らのアプローチになっています。

もっとも重要なのは、企業側が持っているブランドの価値観、コンテンツIPが持っている価値観、それぞれを照らし合わせたときに、真ん中のメッセージをどう作るかということです。企業が届けたいメッセージや積み上げてきたブランド価値を極力言語化していきます。コンテンツIPは購入してスタッフみんなで全巻を読み込み、このIPはどういう価値観があるのか、何を大事にしているかというところを抽出していきます。双方に共通する価値観からコンテンツを作りあげるのが、僕らの手法ですね。

Minto社が考える、最適なコミュニケーションのイメージ図

講談社のマンガIP検索サイト「マンガIPサーチ」

岩切 講談社では2017年から「C-staion」というBtoBメディアを立ち上げました。「C-staion」を通して、具体的な活用事例やどういったIPを使いたいかご質問いただき、弊社からご提案させていただくというケースが非常に増えています。

もうひとつIPを探す参考として紹介させていただくのが、「マンガIPサーチ」です。昨年立ち上げたメディアで、講談社のマンガ1500タイトルを網羅しています。カテゴリや過去の映像化作品、マンガに関わる事例を検索できますので、クライアントの訴求商材に合わせたマンガを探す参考にしてもらいたいですね。

講談社のマンガ作品情報データベース。
登場キャラクターの詳細、企業とのコラボ事例、映像化作品、売上ランキングなど、マーケティングに役立つ情報も掲載

講談社のマンガIP活用のメリット〜リーチ・共感・拡散〜

岩切 次に講談社のマンガIPを活用するメリットとして3つの効果をご紹介したいと思います。

1つ目は、『セーラームーン』や『進撃の巨人』など国民的に人気が高く認知効果の高い作品とコラボすることで、幅広い世代にリーチできることです。2つ目は共感力、つまり心を動かす力があることです。作品にはファンがついてますので、そもそも共感力があるキャラクターがブランドを訴求することで、自分ゴト化しやすいことがポイントです。3つ目は情報の2次拡散が狙えることです。プロモーションを展開すると作品ファンの方がSNSで拡散してくださることが多く、SNSとの相性が非常にいいと言えます。

高橋 僕らが想像しているよりもファンの方のボリュームとキャッチアップ力がすごい。発話のハードルが非常に低いと感じています。企業が提供しているコンテンツの中でも、マンガに変換されてるもののほうが、そうでないものに比べて話題にしやすい印象です。特に人気アニメの放送日や、雑誌の発売日などは、発話量が増えますよね。

IPコラボの成功例〜講談社の事例〜

高橋 「IPコラボに効果はあるのか」というご質問をいただくことも多いので、事例を紹介したいと思います。

IPコラボの成功例:「ホットペッパービューティー×東京タラレバ娘」
岩切
 Mintoさんとご一緒した企画をご紹介します。クライアントがホットペッパービューティー様、コラボしたIPが『東京タラレバ娘』で、Xでキャンペーンを行いました。人気キャラクターの倫子とKEYという主役級の2人が登場する、オリジナルストーリーを展開しました。本編の続きのようなストーリー設計をMintoさんが作成し、興味を持っていただいた東村先生に書きおろしていただいたもので、7ページほどの短編が完成しました。ファンの方からのコメントも多く、非常に盛り上がった事例です。

「ホットペッパービューティー×東京タラレバ娘」の事例。本編の続きのようなストーリーを展開し、ファンの心を掴んだ


高橋 ストーリーの続きを書くというのは、事例としては最近増えてきていますね。キャラクターや作品にもすごく思い入れがあって、続きを追体験したいというファンの方がたくさんいるなと感じています。旬なIPというのも、もちろんたくさんありますが、ちょっと前にメディアミックスされ、いまだに根強いファンがいるようなIPを書きおろして、もう一度表現する。これはファンからしたら非常にうれしいですよね。そうしたファンの想いをコンテンツに反映していくのは、僕らと御社が作った成功パターンだと思っています。


IPコラボの成功例:「ドコラボ×講談社人気マンガ4作品」
岩切 続いて3年前の事例なのですが、NTTドコモ様のタイアップ企画をご紹介します。講談社の人気4作品と、ドコラボというスマホケースなどのグッズを作っているブランドとのコラボ事例です。『進撃の巨人』『転生したらスライムだった件』『七つの大罪』『FAIRY TAIL』の4作品、それぞれのオリジナルデザインを5種類ずつ書いていただいて、その中の人気投票1位だったものを商品化するという、ファンからすると非常におもしろい企画だったのではないでしょうか。その投票総数が5800万票に達し、実際に商品も非常によく売れたと伺っています。

「ドコラボ×講談社人気漫画4作品」の事例。ファン投票で人気だったデザインを商品化して大きな話題となった


IPコラボの成功例:「エドウイン×島耕作」
岩切 もうひとつ今も継続している事例なのですが、エドウイン様と「島耕作シリーズ」がコラボして、「デニスラ」というブランドをプロモーションしております。2020年にローンチして今年で4期目になりますが、累計で20万本売れているとのことです。ファッション感度が高い方だけでなく、ビジネスマンを取り込みたいという課題に対して、ファッション誌ではなく島耕作を使って、『日経新聞』や『SmartNews(スマートニュース)』のバナーなど、ビジネスマンが読むであろう場所で非常に効果的に訴求ができました。

「エドウイン×島耕作」の事例。今年から「エドウインゴルフ」とのコラボもスタート。

高橋 ビジネスに活用できるマンガIPは、なかなかない。そのなかで、島耕作さんの万能性というか、ユーティリティはすごいですよね。


ニーズ高まるマンガIP、今後はグローバルにも拡大

高橋 最後に、僕らが取り組んでいることや今後の発展について簡単にお話できればと思います。

いまメタバースが盛り上がってきており、IPの制作も非常に増えています。それからAIの活用というところで、自社のIPを使って24時間人生相談にのるというような実証実験を進めています。データ活用も来年の大きなテーマになるかなと思っていますし、今後はグローバルな展開も増えていくんじゃなかと。『進撃の巨人』のイベントもさせてもらいましたが、特にアジアが熱いので、来年もたくさんトライしたいですね。

Minto社の今後の展望。AIの活用やグローバル展開も視野に入れている

岩切 私からは、講談社として今後、IP周りで力を入れていく項目をご紹介します。

講談社の今後の展望。地方創生やメタバース上でもIP活用を拡大

まず、「シン・地方創生」とありますが、佐賀県の副知事に島耕作が就任しましたというニュースをちょうど先週リリースしたばかりです。自治体とのコラボ事例も非常に増えており、キャラクターの活用も細分化が進んでいると感じています。今回のコラボで得た公務に関する知見を横展開することも可能ですし、島耕作に限らず、育児休業、地方移住、企業誘致などの推進に、マンガを活用できるのではないかと考えています。地方自治体向けの専任チームが、日々企画を考えてご提案をしている状況です。

次にメタバースです。『パリピ孔明』と徳島県がコラボして、メタバース上のバーチャルパビリオンで、阿波踊りを踊る企画を昨年行いました。まだ模索段階ですが、メタバース上での新しいキャラクターの活用法について、各社様とブレストさせていただいています。

ほかにも、今年は「K MANGA」という海外向けのマンガアプリを立ち上げまして、平行して海外での広告展開にも力を入れていこうと思っています。

モデレーター それではお時間となりましたので、本日は以上となります。ありがとうございました。


【開催概要】
・名称:マンガIPとのタイアップって難しい? 効果を上げるためのヒント
・日時:2023年11月21日(火) 14:00〜15:00
・形式:Zoomウェビナー
・お申し込み:事前エントリー制(無料)
【プログラム】
①会社紹介&自己紹介
②IPコラボの実施メリットについて
③パネルディスカッション
登壇者:
高橋信幸/株式会社Minto 取締役COO
岩切秀一/講談社 ライツ・メディアビジネス局 IPビジネス部 副部長 

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