2023.09.26

ポストZ世代の若者たちとマーケターが共に歩むために|心をつかめ! Z世代のリアルとコンテンツづくりのヒント vol.05

Z世代のリアルタイトル画像

現代の若者を象徴する「Z世代」とは、どのような世代なのか。そして若者たちはどのようなコンテンツを求めているのか。

本連載はこのふたつの問いをメインテーマとし、女性誌ViViのネット版「NET ViVi」で編集長を務める講談社の平本哲也氏に、C-stationでさまざまな連載を手がけた宿木雪樹氏がインタビューして「Z世代の実像」を紐解いてきた。連載最終回となる本記事では、Z世代の次なる世代との対峙に向け、未来を見据える。

どの時代にも若者たちに刺さるコンテンツを作れる企業とは

前回の記事では、Z世代に対してヒットコンテンツを届ける「NET ViVi」編集チームの成功事例を例に挙げながら、「マーケターに必要とされる編集力とは何なのか」を平本氏に解説してもらった。

マーケターの皆さんは、ペルソナに基づいた戦略を立て、それに基づく施策を考えるだろう。もちろん、データ分析や顧客理解に努める姿勢は重要である。一方で、商品の魅力を訴求したいという想いが強く反映されるあまり、顧客層にとってはそれほど魅力的ではない成果物が生まれてしまうこともある。

そこで立ち戻りたいのが、企業や商品のブランドと紐づく"良さ"や"おもしろさ"の定義である。

「NET ViVi」編集チームはこれを"胸きゅんポイント"と定義し、コンテンツの勝負ポイントを追求し続けることでバズコンテンツを生み出している。そして、新しいものや知らないことを受け入れ、自らの価値観をアップデートし続けることが編集力を磨く足がかりになる、と平本氏は教えてくれた。

さて、ここまでの記事を読んでいただいた読者の皆さんの中では、Z世代への認識の解像度がだいぶ高まったと思う。実際にコンテンツを作るとき、どんな意識で臨むべきかもイメージできたことを願っている。

しかし、時代が変われば世代も変わっていく。そう遠くない未来、新たな"〇〇世代"が定義され、また読者の皆さんは頭を抱えるかもしれない。そこで今回は、未来に視点を向けながら、次の世代に対しても引き続き魅力的なコンテンツを届けるためのヒントを平本氏に聞いていこう。

「ものまね」と「人任せ」から卒業しよう

「新しい世代は常に生まれてくるものですから、そもそも新しい世代に対応しよう、と悩むのはあまり本質的ではありません。そこにこだわってしまうと、新しい世代を象徴するインフルエンサーの意見に自社の軸を左右されてしまったり、コンサルタント任せになってしまったりしますから」

NetViVi平本編集長写真

NET ViVi 平本編集長

トレンドをいちはやくキャッチしようとすると、どうしても誰かの答えが欲しくなってしまう。昨今はインフルエンサーや、SNSマーケティングを専門とするマーケティング系のコンサルティング企業の影響力が高い。そのような個人や企業から専門性や先見性を取り入れる努力は間違ってはいないものの、それだけで企業がマーケティングに成功した事例はそれほど多くない、と平本氏は続ける。

「外部の意見を取り入れて成功している企業は、いずれも任せきりにするのではなく、非常に近い距離で専門家やプロフェッショナルと議論を交わし、自社のブランドやコンテンツの勝負ポイントに対して真摯に向き合っています。発信の担い手である企業のマーケティング担当者が泥臭い努力をしているからこそ、しっかりとターゲットにメッセージを届けることに成功しているという印象です

何かしらのコンテンツがバズって、トレンドが生まれたとしよう。そのパターンを自社でも真似すれば同じように多くの反響が得られるかといえば、決してそうとは限らない。そのバズコンテンツがなぜ受け入れられたか分析し、その理由を自社でどう落とし込めるか考えなければ、自社のコンテンツは伸びないのだ。

「観察と内省、これを繰り返しながら前に進んでいくしかないのが現実だと思います。もちろん、感覚だけでなくデータ分析も必要です。データを武器として扱いつつ、そこに自社がどんな視座を取り入れるのか内省していくことで、コンテンツの精度は高まっていくのではないでしょうか。

すこし話が逸れますが、マーケティングに成功している企業のコンテンツを見ていると、その施策担当者の方の顔がつい浮かんでしまいます。アパレルや化粧品などを手掛ける企業のマーケティング担当者と接する機会は普段からあるのですが、前のめりに日々おもしろいことを考えている方からは、やはりヒットが生まれている。

すごい! おもしろい! と感想したコンテンツを見た時、もしかして〇〇さんが手がけているのかな......と思って調べると、やはりそうであることが多いんです。バズコンテンツの裏側には人任せにしていない仕掛け人がいて、皆さんこだわりをもって自社のブランドをどう見せるか考え抜いているのだと思います」

たとえどんな世代が台頭しようとも、企業が為すべきことはひとつ。観察と内省を泥臭く積み重ね、自社のブランドの勝負ポイントを見極め続けることが、遠回りのように見えて成功への近道になるのだろう。

コンテンツの精度を高めるために考え抜く

人任せにしないで考え抜くことこそが必要

メディアとインフルエンサー、そして企業の"いい関係"

またすこし視点を変えよう。マーケティングの観点から世代を語るうえで、接点となるメディアやデバイスの話は避けて通れない。「メディア定点調査(メディア環境研究所、2023年)」によると、年々スマートフォンを通じたメディアとの接触時間は増えており、こと10~20代はその傾向が顕著だ。これまで主力とされてきたマスメディア群は、オンラインにおける多種多様な配信コンテンツによってすこしずつ"マス"と呼ばれる力を失いつつある。

「すでに多くの企業が気付いていることだと思いますが、現代におけるSNSやオンラインメディアを通じたマーケティングは、テレビCMや紙媒体、交通広告といった広告媒体に対する副次的なものではありません。まったく別の特色と影響力を持つ強力な手段として受け止めて、注力するべき対象だと私は捉えています。

たとえば、駅貼りのポスターを掲出するとき、これまでは多くの人が通る場所に掲出することが広告効果に直結すると考えられてきました。しかし、今はその駅貼りポスターが撮影され、SNSで拡散されることのほうが認知拡大につながる、つまり写真を撮りやすいスポットであればあるほど広告効果が高まる、という考え方も出ています」

SNSやオンラインメディアによる波及力を意識した施策を立てるうえで重視すべき存在が、インフルエンサーと呼ばれるSNSにおいて強い影響力を持つユーザーだ。タレントであるかどうかに関わらず、彼ら、彼女らはZ世代から絶大な人気を誇り、消費行動の促進力も高い。企業がSNSマーケティングに取り組むとき、彼ら、彼女らを適切にアサインする力が施策成功の鍵となる。

「『NET ViVi』においてもViViモデルは影響力を持つ存在ですし、それ以外にもインフルエンサーの力を借りるシーンはあります。ただ、彼ら、彼女らをフォロワー数などの支持だけで推し量るのではなく、自社のブランドイメージと合うか、あるいは起用することにメリットがあるかという観点を持つように心がけています。

また、どのインフルエンサーを起用するか判断するときに気をつけたいのは、不要な主観を混ぜないようにすることです。たとえば個人的な感覚で、独自のスタンスを貫くインフルエンサーを『なんとなく嫌だから』と排除するのは避けたほうが良いと思います。ここではあくまで客観的に、自社との関係性を見極めるべきでしょう。私自身も、人気のあるインフルエンサーとのコラボレーションなどについて検討するときは、不要な個人的趣向や考えを反映しないよう注意しています」

たしかに、人気のあるインフルエンサー群を見渡すと「どうしてこの人が人気なの?」と首をかしげてしまうこともある。そこで「若者の価値観はわからないものだ」と一歩引いてしまっては、波及力の高いコンテンツを作ることは難しい。ここでも、自社について観察と内省を繰り返してきた経験値が、誰を起用すれば良いか判断する目の精度を高める。マーケターの皆さんには、ぜひ彼ら、彼女らの魅力を客観的に見極めることを心がけてほしい。

インフルエンサーを適切にアサインすることが重要

多種多様なインフルエンサーから、誰をどのように起用するかがカギとなる

ポストZ世代の若者たちにとって、「自分らしく」は当たり前?

さらにインフルエンサー起用について掘り下げていくと、平本氏はその多様性について触れ、おもしろい話をしてくれた。マスメディアが限られたタレントを"憧れ"の対象として提示していた時代と比べて、影響力を持つ人物像の幅は広がっているという。

「Z世代から人気のあるインフルエンサーを見渡すと、さまざまなタイプの人たちがいます。学校の教室で例えるならば、いわゆる人気者タイプから真面目な委員長タイプ、さらには教室の隅で漫画を描いているようなタイプまで、それぞれが多数のファンを擁しています。いわゆる"ワル"と呼ばれるような層も、世代を超えて一定の人気がありますね。

現代にはこれだけ豊かな個性を持つインフルエンサーがいるのですから、むしろ企業側としては自社のブランドイメージに合う人物を見つけやすいのではないでしょうか」

強みを活かしながら、自分らしく生きる姿を発信する。SNSと共に生まれ育ってきたZ世代のふるまいは、多様なインフルエンサーが活躍する文化を成熟させたのかもしれない。企業がその影響力を適切な形でマーケティングに活かすことができれば、若者にコンテンツを届けるための強力な原動力となるだろう。

一方で、平本氏はこの多様なインフルエンサーがSNSをけん引する時代にもやがて終わりが来ると予想している。その予想には、次世代の若者像につながるヒントが含まれていた。

「Z世代は、いわゆる"セルフラブ"の精神が強い世代です。定型にはめて自分自身を歪めてしまう風潮が時代に蔓延していたからこそ、反して『自分らしくあること』にこだわりを持ち、それを発信するインフルエンサーが絶大な支持を集めたのだと思います。

しかし、その傾向もしばらくしたら頭打ちになるのではないでしょうか。彼ら、彼女らにとって『自分らしくあること』が当たり前になったら、やがてそれは発信するまでもないことになっていきます。となると、次世代のインフルエンサーに影響力をもたらすものは、『自分らしさ』とはまた異なるものになっていくのでしょう」

まだまだ「当たり前」にはほど遠いものの、自分らしさを尊重する風潮や言論は年々増している。社会的にもダイバーシティの重要性が語られる今、それぞれが自分の個性を持つことは次第に受け入れられつつある。誰もが自身の個性を主張できるようになった今、その良さを測るものさしが多様化したからこそ、個性そのものが強みと言える時代は終わるのかもしれないのだ。

個性が強みとなる時代は終わるかもしれない

個性が強みとなる時代は終わるかもしれない

より"優秀さ"を求められる次世代の若者に、企業は何を届けるのか

「すこし話が逸れるかもしれませんが、最近の学生たちは内申点を気にする傾向があるようです。他者から見た"いい子"という基準が、その後の人生やキャリアに大きく響くことを理解しているからこそ、そこへの意識が高まっているのでしょう。

また、少子化に伴った有名大学同士の合併が多くなりつつあったり、滑り止めの併願が定着したりするなかで、今まで若者の優劣を判断する指標となっていた学歴の基準は変容しています。その中で、若者たちの生存戦略も揺らいでいるのだと思います。

みんなが一様に"いい子"で、総合的な学力は横並び。そんな社会になっていったとき、彼ら、彼女らに差をもたらしていくものは何か。そう考えると、ずば抜けたスキルやほかとは異なる一芸がある者がより評価される時代が来るのではないでしょうか。『あなたは何ができるんですか』と問われ続ける次世代の若者たちは、今よりももっと激しい競争を経験するのかもしれません」

Z世代の次なる世代に想いを馳せてみると、企業がこれから届けるメッセージの方針も変わっていくのだろうと想像できる。観察と内省を繰り返しながら自社の勝負ポイントを磨いていくことに変わりはないが、そこから未来の若者たちが求めるコンテンツを敏感に察知していく意識も必要だ。

最後に、平本氏自身は「NET ViVi」を通じて未来の若者たちとどのような関係性を築いていきたいか聞いた。

「社会のなかで厳しいジャッジに晒される彼ら、彼女らにとって、ViViが一種のセーフプレイスになればいいな、と思っています。ViViは誰のこともジャッジしないし、排除もしない。読めば明るくなれる、前向きになれる。そういう場所を作っていきたいですし、それが今後のニーズにも合致していくと考えています。

それから、失敗を恐れない、失敗しても改善すればいいという姿勢も伝えていきたいです。SNSが浸透している今、誰もが自分の発信を通じて大きく失敗するリスクを抱えています。ViViもさまざまな情報を発信するなかで、時には厳しい指摘を受けることもあります。

そういうときに委縮して沈黙するのではなく、素直に間違いを認めて修正し、次回につなげていく。その姿勢をメディアとして示すことで、失敗しても問題ないということを読者の皆さんに伝えていきたいです。ViViはどこまでもリアルでありたいですし、読者ともリアルな関係性を築いていきたい。その想いが、コンテンツを通じて伝わればと考えています」

Z世代に向けたマーケティングのヒントを得るために取材を続けてきたが、最後の平本氏のメッセージには、いい意味で衝撃を受けた。企業は「いかに商品の魅力を届けるか」という命題に集中してしまい、「自分たちのふるまいや姿勢が多かれ少なかれ若者たちの心に影響を与える」という視点がおろそかになっていないだろうか。すこしでも良い影響を届けたい、どんな時代であっても安心して生きてほしい。そんなあたたかな願いは、きっと世代を超えて若者たちの心に届くはずだ。

全5回にわたる連載を通じ、Z世代の心をつかむマーケティングのポイントを紐解いてきた。目まぐるしく変容する社会背景の影響を受けた存在として注目を集める一方、つかみどころがないからこそマーケターの悩みの種でもあったZ世代という対象。そのライフスタイルや内面性、欲しているコンテンツを語り明かし、最後に見えてきたのは、世代を超えて企業が若者たちとどう向き合っていくべきか、という問いだ。

若者たちの心に届けるマーケティング

いま問われているのは「若者たちの心に届ける」マーケティング

今回の連載を読んでくださった読者の皆さんには、ぜひ自社と若者との良好な関係というものを、改めて考えてみてほしい。彼ら、彼女らへの理解を深めようとする探求心と、自社のブランドや魅力の解像度をデータ分析から高めていく地道な努力が、きっと最適解とマーケティング施策の成功をもたらしてくれるだろう。

【心をつかめ! Z世代のリアルとコンテンツづくりのヒント シリーズ記事】

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聞き手:宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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