2023.09.13

牛窪恵さんがマーケティング視点で解説! 「働く女性とマンガの親和性調査」

先日「C-station」が実施した「働く女性とマンガの親和性調査」を、マーケティングライター、世代・トレンド評論家の牛窪恵さんが分析。現代の働く女性のインサイトを紐解きます。

撮影:山田ミユキ

働く女性はマンガ好き。スマホでマンガを読める時代になったことも影響

今回の調査では、「マンガは好きですか?」という問いに対して、76.6%のユーザーが「好き」と回答。さらに、内27.8%のユーザーは「ほぼ毎日マンガを読んでいる」と答えました。

牛窪さんの分析
C-stationロゴ「働く女性たちは、毎日を忙しく過ごしています。そのなかで、移動時間などの隙間時間や、休日の空いた時間に、マンガアプリを通じて、マンガを読んでいるのではないでしょうか。つまり、スマホでマンガが読める時代になったことが、結果に大きく影響を与えていると考えられます。また、調査対象の女性たちは、少女時代にマンガに夢中になった世代ですから、大人になっても『マンガを読みたい』という潜在ニーズがあったことも大きいでしょう。加えて、昨今の『推し文化』によって、好きなものを通してSNS等で人とつながれるなど、新たな楽しみが生まれたことも、プラスに働いていると思います」

マンガ・アニメのコラボアイテムはもはや一般化。購入ハードルは低め

「マンガ関連商品」や「コラボ商品」の購入経験について聞いたところ、72.5%のユーザーが「購入経験がある」と回答。実際に購入した商品のトップは雑貨、次いで、文具となりました。また、食品や飲料、ファッションアイテムの購入経験もあるなど、幅広い商品に興味を示していることがわかりました。 

牛窪さんの分析
C-stationロゴ購入経験率の高さは、アイテム数の多さとも関係していると思います。昨今、大人向けのマンガ・アニメのコラボアイテムが増え、コスメやファッションなど、その範囲も多岐にわたります。もはやマンガ・アニメコラボ商品は一般化していますし、購入ハードルも非常に下がっていることがわかりますよね。72.5%の方がコラボアイテムの購入経験がある。これを見ても、現代においては、コラボアイテムを買うことに抵抗がある方のほうが少数派と言えそうです

コラボアイテム購入の背景には、ギフト需要も存在

購入アイテムの価格帯は、500円から3,000円がボリュームゾーン。ただ、5,001円以上の商品を購入している人も6.7%おり、高価格帯の商品でも購入意向がおとろえないことがわかりました。

牛窪さんの分析
C-stationロゴ購入金額の幅が広いのは、自分用だけでなく、ギフト需要もあるからだと見ています。私の会社で実施するマーケティング調査(個別インタビュー)でも、コラボグッズを友人や家族にプレゼントするという話をよく耳にします。雑貨や文具の購入経験がある方が多いのも、気軽に贈りやすいという背景があるのではないでしょうか。また近年は、マンガ・アニメとハイブランドとのコラボレーションも展開されるなど、高額なコラボアイテムが登場していることも、高価格帯の購入経験に影響しているかもしれません

特別な場所から普通の場所へ。アニメショップで購入する女性たち

マンガに関連するグッズを、働く女性たちはどこで購入しているのでしょうか。いちばん多い回答は「書店」(45%)でした。次いで、「量販店」(43.7%)、「アニメショップ」(42.8%)、「コンビニ」(40.2%)という結果となりました。

牛窪さんの分析
C-stationロゴ購入場所の3位に『アニメショップ』が入っていることに驚く方もいるのではないでしょうか。なぜなら、以前はアニメショップ=オタク層が集う場所というイメージもあったからです。しかし近年はそうではありません。池袋には、アニメショップが立ち並ぶ『乙女ロード』と呼ばれる一帯があります。女性オタクの聖地とも呼ばれる場所ですが、昨今はおしゃれな女の子が普通に歩いているんですね。感覚的には、竹下通りに行くように、乙女ロードに足を運んでいる。それぐらい、マンガやアニメに親しむことは、若年層にとって心躍る日常であって、異質な感覚ではないわけです。そして働く女性にとっても、もはやアニメショップが特別な場所ではないことが、調査結果からわかりますよね

時代はジェンダーレス。好きなマンガにも時代性が反映

講談社のマンガ作品で好きなものを聞いたところ、ドラマ化もされている2000年代のヒット作品『のだめカンタービレ』が1位に。次いで、2位の『きのう何食べた?』、3位の『東京卍リベンジャーズ』と、実写化され、話題となった作品がトップ3を独占する結果となりました。

牛窪さんの分析
C-stationロゴ『東京卍リベンジャーズ』は少年マンガですが、女性の間でもかなり人気がある。そこには昨今の、男性向け、女性向けといった概念を気にしなくなっている風潮が現れていると感じます。現在、若年層の間では『ジェンダーレスファッション』が流行しています。あえてオーバーサイズの服を女性が着たり、男性がスキニーパンツを履いたりする。この風潮は逆も然りで、少女マンガ『ちはやふる』のファンの男性も多いはずです。もはや少年マンガは男性のもの、少女マンガは女性のものという時代ではないことが、この調査結果から見えてきます

【定性調査】4人の働く女性の本音インタビュー

①「マンガ広告」編 ── 親和性が高い、マンガ×広告

本調査では、マンガ好きな4人の女性(30代3名、40代1名)にデプス(回答深掘り)インタビューを実施しました。そのなかで、マンガ広告について、ポジティブな印象を抱いていることがわかりました。

Q.マンガ広告に対する印象に対する回答。ポジティブな意見が多く見られる

牛窪さんの分析
C-stationロゴマンガだと、つい読んでしまう。この効果を、普段は避けられがちな広告に活用することで、ユーザーの興味を喚起できるわけですね。さらに広告であっても、好きなキャラクターが出ていれば、なおさら気になる。最近は、街にあるマンガ・アニメ関連のポスターや看板を、スマホで撮影している女性をよく見かけます。それをSNSでシェアして、同じキャラを好む人同士で盛り上がる。ポスターや看板以外のマンガ広告でも、似たような現象が起きていて、このこともマンガと広告の親和性の高さを象徴するのではないでしょうか

②「コラボアイテムに使えるお金」編 ── 高くても、いいモノが欲しいと考える働く女性たち

30・40代の女性の回答の中には「いい物であれば、いくらでも」など、コラボアイテムへの高いニーズをうかがわせるものでした。


牛窪さんの分析
C-stationロゴ高額なコラボアイテムを、自分へのご褒美として購入する女性も多いのでしょう。また、推し活の文脈で捉えるのであれば、アイテムを購入することで、推しを応援したいという気持ちと、それを身に着けることで自分はこれが好きだと発信したい、という気持ちもありそうです。さらに大人の女性は、せっかくなら高くても良質なモノが欲しいと考える。その結果、数万円のコラボアイテムにも、さほど抵抗を感じないのではないでしょうか

③「体験型コンテンツ」編 ── 地方活性化など、集客効果を発揮するマンガ・アニメコラボ

デプスインタビューでは、コラボカフェをはじめとした、「体験型コンテンツ」についても調査。コラボアイテム同様、高額でも参加したいという回答が目立ちました。

牛窪さんの分析
C-stationロゴこの結果から、マンガ・アニメコラボには、集客効果があることがわかります。イメージしやすいのは、聖地巡礼ではないでしょうか。マンガ・アニメの舞台となった場所を、町ぐるみで盛り上げ、観光客を誘致する。自治体とマンガ・アニメのコラボレーションも増えていますし、地域活性化との相性もよいと言われます。また聖地巡礼やコラボカフェは、思わず写真を撮りたくなる仕掛けがあり、SNSを通じた情報拡散効果も期待できます。ユーザーとしては、特定の場所に自分と同じ作品を好む人たちが集まって来て、知らない誰かと共通の価値を共有できる喜びがあるはず。また、そうした空間に身を置く行為自体が、彼らの幸福感につながっていると考えられます

【総括】マンガのマーケティング活用のポイントは、共感と世界観の理解


C-stationロゴ今回の調査では、働く女性たちが、広告をはじめ、マンガ・アニメとのコラボを、概ね好意的に受け止めている様子が浮き彫りになりました。彼女たちの多くは、作品やキャラクターに共感を覚え、推すことに喜びを感じます。その共感をコラボでも損なわず、むしろ増幅することができると、効果も出やすいのではないでしょうか。そのためには作品の世界観を理解することが前提として必要です。加えて、現代はSNS上でさまざまな情報が取得可能です。コラボの成果をSNS上で確認しやすいことも、マンガ・アニメとコラボするメリットのひとつだと考えます。どのようなユーザー層が、何を入り口にコラボに関心を持ってくれたのか、どの程度、誰といつ話題にしたのか、多様なデータが得やすいことも大きな利点でしょう。また今回の調査は働く女性を対象にしましたが、ターゲットに合わせた作品選定も重要なポイントです。ぜひ上手に活用して、関わるすべての人がハッピーになれるようなコラボを、多くの企業に実現してほしいと願います

牛窪 恵
マーケティングライター、世代・トレンド評論家
2001年4月、マーケティング会社インフィニティを設立、同代表取締役。立教大学大学院(MBA)修了、同客員教授。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。現在、NHK総合『サタデーウオッチ9』、フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』ほかでコメンテーター等を務める。近著は『恋愛結婚の終焉』。

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