2023.02.27

「発信するだけでなく、売れるものを作るところから。これからの編集者の活用法『ビジネスコンサルティング』」 ── 講談社メディアカンファレンス2022 ミライトーク05レポート

ミドル女性向けWEBマガジン「mi-mollet」が通販会社「フェリシモ」とコラボした「エブリデイバッグ」が累計約1万9000個(※)の大ヒットを記録。このコラボバッグ商品開発事例から見る、メディアブランドのチカラと編集者の活用法をご紹介します。
※ブラック約1万4000個、グレー約5000個(2023年2月末現在)

※本稿は、ビジネスオンデマンド動画「講談社メディアカンファレンス 2022 ミライトーク05」のレポートです。本動画のアーカイブは、今後、C-stationのプレミアムメルマガ「My C-station」ユーザー限定で公開予定です。

(左から)株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長 谷口 優さん
株式会社フェリシモ ファッション事業部 販売作戦グループ 三宗千尋さん
講談社 mi-mollet事業部 mi-mollet編集長 川良咲子

コラボ企画が生まれたきっかけは「mi-mollet」が持つ寄り添う力

株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長 谷口 優(以下、谷口)
出版社のメディアブランドには、世界観や価値観を共有するからこそ「読者との強い絆がある」という強みがあります。その絆があるからこそ、態度変容だけでなく、強い行動喚起を促せるケースもあります。そのメディアブランドのチカラを生かして、ミドルエイジの女性向けメディアである「mi-mollet」と通販カタログサイトのフェリシモがタッグを組み、開発したエブリデイバックが、累計約1万9000個という売上を記録。この事例から、これからの編集者の活用、ビジネスコンサルティングをテーマに、本日は「mi-mollet」編集長の川良咲子さんと、株式会社フェリシモの三宗千尋さんにお話を伺っていきます。

まず、どのようなプロセスを経てこのヒット商品が誕生したのか、川良編集長からご説明いただけますでしょうか。

講談社 mi-mollet事業部 「mi-mollet」編集長 川良 咲子(以下、川良)
「mi-mollet」は、これまでも多くのコラボの商品をさまざまな広告主さまと手がけており、どれも好反響であるという点を評価していただいていました。そのなかで、2020年6月にフェリシモさんから「何か一緒にできないでしょうか」と、ご連絡をいただいたことが企画のスタートです。

できれば私たち編集者のクリエイティビティだけではなく、読者の"リアルな気づき"も商品に生かしていきたいと考え、有料読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕とのコラボレーションをご提案させていただきました。

谷口 フェリシモさんは、講談社と組むことに、どのような期待感があったのでしょうか。

株式会社フェリシモ ファッション事業部 販売作戦グループ 三宗千尋(以下、三宗)
大前提として、私自身がいち読者として「mi-mollet」さんのことがすごく好きだった、ということがあります。

数あるメディアのなかで、「mi-mollet」さんにお声をかけたのは、「圧倒的に寄り添ってくださるチカラが他とは違うこと」と、弊社の販売方法と合っていると感じたからです。

川良 フェリシモさんは、カタログに企画担当の方が出ることもあります。私たちも顔と名前を出してサイトに登場しているので、そういった点もすごく親近感を覚えました。

読者の声を反映した、ヒット商品「エブリデイバッグ」

谷口 今回のコラボ商品の説明もお願いします。

川良 「作るなら売れる物を作りたい」と考え、フェリシモさんにどのようなものが人気なのか、根掘り葉掘りヒアリングすることからスタートしました。

商品はバッグの内側が3部屋に分かれており、パソコンやドリンクボトルが入るスペースや、濡れたものを入れられるスペースもあります。これ以上はないと言うほどの利便性を備えているだけでなく、ナイロン製のバッグであるにも関わらず、実際の価格より高価に見えて、このまま仕事に持っていっても差し支えがないという点も大切にしました。

コラボ商品「エブリデイバッグ」は、使いやすい3室構造。A4サイズのファイルや雑誌も収納できる


谷口 三宗さんは、制作の過程で〔ミモレ編集室〕メンバーの声を聞かれて、どう感じましたか。

三宗 作るときに「これが好きでしょ?(流行り)」を詰め込み過ぎると、実用性から離れてしまうことがあります。そのなかで、参加メンバーのみなさんからは、お困りごとや、欲しい機能など、さまざまなリアルな声(ヒント)をいただくことができ、とてもありがたかったですね。

「mi-mollet」だからできた、距離の近いプロモーション

谷口 谷口 今回はメディアと組まれたことで、商品の企画・開発からその後のプロモーションまで一気通貫で進められたそうですね。

川良 「mi-mollet」では、商品を編集部メンバーの私服とコーディネートする「着比べ隊」という企画をやっています。たとえば「モデルさんが持ったら素敵だけど、157センチの自分が持ったらどうかな?」といった、読者の目線からもリアリティを感じさせることが大切なのです。

谷口 商品を作るだけでなく、読者を主語にして、生活の中までご一緒できるというのは、メディアだから実現できたことですね。

三宗 はい、私たちだけではできなかったことです。川良さんがバッグを持ったウェブ記事をみて、社内で大感動しました。

川良 ありがとうございます。〔ミモレ編集室〕メンバーが実際に使用している写真(SNAP)をみると、電車の中などいろいろなシーンで持っています。

〔ミモレ編集室〕メンバーが実際に使用したSNAPも、「mi-mollet」内で公開し、多様なシーンで使えるバッグであることを訴求した


三宗 写真からメンバーの方の生活を感じました。

川良 メンバーも一緒に開発しているからこそ自分ごと化されますし、「mi-mollet」から発信できる強みが出てくると感じました。

谷口 ウェブメディアで有料会員がいるというのは新しいビジネスモデルですね。紙の媒体ではなくとも読者との絆が作れるというひとつの証明になります。

川良 私も紙の雑誌の経験が長いですが、ここまで読者との距離が近いメディアはありませんでした。媒体自体にもコミュニティの要素があり、読者が「mi-mollet」を近く感じてくださっているようです。

広がる「mi-mollet」の事業領域。編集者によるビジネスコンサルティングとは?

谷口 谷口 mi-molletさんは商品開発という工程の川上の段階からかかわり、マーケティング全般をサポートされているそうですね。詳しくお聞かせください。

拡大する「mi-mollet」の事業領域

川良 クライアント様で何かを売りたいというお話があったときは、「mi-mollet」編集部や読者のストーリーと、商品のストーリーの交差点を探し出し、そこからコミュニケーションをはじめるようにしています。「こういうストーリーの中で提案したら反響があるのでは」と相談しながらお話を進めています。

谷口 ストーリーを作ることができるのは、「mi-mollet」の大きな強みですね。

川良 読者は「売ろうとする」ことに対して敏感です。だからこそ、私たちも自信を持っておすすめできることが大切で、そのなかで読者との信頼関係を積み重ねていくことが大切だと考えています。

谷口 三宗さんからみて、出版社の編集者はすごいと感じられたところはありますか。

三宗 私が拝見する限りでは、上から下に情報発信を行う媒体が多いと感じていました。しかし、「mi-mollet」さんは寄り添って、一緒に作ってくださる。本当に信頼できる友人のような関係性は他にはないので、有り難いと思います。

谷口 フェリシモさんは個々の商品の背後に、しっかりとストーリーをつくられているブランドというイメージがあるので、「mi-mollet」さんと合っていそうですね。

川良 制作は楽しかったですね。フェリシモさんも同じだと思うのですが、自分たちが欲しくないものは、お客様も欲しくない。自分たちがお金を出して買いたいと思うものを作ることが大切だと感じました。


総合的なビジネスコンサルティングサービス「キーズ」に期待すること

谷口 谷口 出版社のビジネス支援と聞くと、最近ではマンガのIP活用が浸透しています。しかし講談社さんでは今回の「mi-mollet」のようなケースだけでなく、多様な出版社ならではの資源を生かし、総合的なコンテンツ提供型のビジネスコンサルティングサービスも提供されています。

講談社のコンテンツ力を活かした、ビジネスコンサルティングサービスで「できること」

この受付窓口として、先日「KiisS(キーズ:Kodansha Inspire Impossible Stories Studio)」というサイトもオープンしました。
三宗さんが、KiisSについて、期待されることがあれば教えてください。

コンテンツ軸で総合的な課題解決を提案する、コンテンツ提供型コンサルティングサービス「KiisS」

三宗 幅広い領域で、講談社さんと一緒にできる可能性を感じました。ターゲットを絞り込みやすい取り組みだと思うので、たとえば推し活マーケティングで、ターゲットの人に刺さるような場を作れることは魅力的です。

谷口 出版社の方は、クライアントとなる企業・自治体の課題解決をしながら、最終的には読者にとっての価値創出を考えてらっしゃいます。この取り組みを通して、皆さんがWin-Winになるような新しい企画ができてくるのではないでしょうか。


今後の展望。それぞれの新たな取り組み

谷口 今回は大きなチャレンジが大ヒットして、素晴らしい成果を出していますが、今後の新たな展望についてお聞かせいただけますか。

川良 2022年6月に「mi-mollet STORE」というメディアコマースサイトをオープンしました。日々、読者を見ているなかで、その半歩先を見据えたご提案ができる商品を販売しています。

1つの商品に対して多くの記事を書いており、商品を販売するというよりはコンテンツをお届けするという気持ちで作っています。そのうちデジタルコンテンツや体験、自治体とのコラボなど、コンテンツを幅広い視点で捉えて情報発信と商品提案をしていきたいと思っています。

「mi-mollet」おすすめのアイテムを購入できる、「mi-mollet STORE」のスローガンは、「明日の私へ、小さな一歩」

三宗 フェリシモのお客様に女性のお体のお悩みについてのアンケートを行ったところ「いろいろな悩みについて話すことができないのが一番の悩み」という声を多くいただきました。そこで、2022年の秋に情報発信と商品販売、そしてお客様と一緒にものづくりをするサイトを立ち上げました。
gokigen Lab. https://feli.jp/s/pr2210283/1/

谷口 本日はコラボ商品の背景や狙いなどお聞かせいただきました。お話を通して、出版社の編集者の力ということを改めて感じることができたと思います。今日はありがとうございました。


【講談社メディアカンファレンス2022 ミライトーク】
05発信するだけでなく、売れるものを作るところから。これからの編集者の活用法「ビジネスコンサルティング』

登壇者:
・三宗千尋/株式会社フェリシモ ファッション事業部 販売作戦グループ
・川良咲子/講談社 mi-mollet事業部 mi-mollet編集長
・谷口 優(モデレーター)/株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長

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