この連載では、ビジネス向け動画配信プラットフォームのグローバルリーダーであるブライトコーブのRegional Channel Director森貴浩氏が、動画をマーケティングに活用するための実践的なノウハウをお伝えします。
皆さんもお感じの通り、コロナ禍によって人々の購買行動は大きく変容しました。リアル店舗での対面購入よりも、製品やサービスの情報を取得して、購入に至るまですべてオンライン完結することが当たり前となり、オンラインでのマーケティングの必要性を改めて実感した企業も多いのではないでしょうか。
オンラインでのマーケティング手法の中でも、顧客に有益なコンテンツを提供して、サービスや商品の購買行動促進やブランディングにつなげていく「コンテンツマーケティング」の重要性が高まっています。
これまではテキストや画像を活用したコンテンツマーケティングが主流でしたが、コロナ禍を経て、直感的に大容量のメッセージを伝えることが可能な動画をコンテンツマーケティングに活用する企業も増えてきました。
今回は、コンテンツマーケティングの中で動画を活用するメリットや、オウンドメディアなどで動画を活用することがリード獲得や売上増に効果的な理由について解説します。
特にすでにオウンドメディアを使ってマーケティングを行っているものの、いまひとつ売上につながっていないという課題感をお持ちの方は、ぜひ参考にしてみてください。
テキストや画像にはない「動画活用のメリット」とは
コンテンツマーケティングは従来のプッシュ型の広告手法ではなく、どちらかというとプル型のマーケティング手法です。検索エンジンやSNS上など、見込み顧客の行動に対応するキーワードなどを拾っていきながら、顧客の興味に合った形でコンテンツを提供していく方法です。こうした手法が主流になったのは、プッシュ型の広告が歓迎されない傾向や、Googleなどの検索エンジンがコンテンツの質を重視していることも要因とされています。
コンテンツマーケティングのメリットは、コンテンツが蓄積されて自社の資産になることで長期的なトラフィックや集客効率が上げられる点や、顧客のロイヤリティを高めてナーチャリングやブランディングに有効である点が挙げられるでしょう。ペイド広告と比較すると、結果的に集客にかかる広告費を削減できることが多いこと、また期間の制約を受けないことも大きなポイントです。
コンテンツマーケティングにおいて、動画はテキストなどと同様に、コンテンツ提供のための情報伝達手段の一つとして考えられています。そして動画には、テキストや画像にはない、非常に有効な特徴があります。
動画を活用するメリットとしては、まず「世界観やイメージを伝えやすい」という点が挙げられるでしょう。エモーショナルに表現できる訴求力の高さは、動画ならではの特長です。
テキストに比べて「情報を直感的に理解しやすい」という部分も大きなメリットです。アメリカの調査会社Forrester Researchがブライトコーブと共に発表した研究結果によると「画像は文字の7倍、動画は文字の5000倍の情報量を伝えることができる」とされています。
ブライトコーブの調査でも、同じメッセージをテキストで読んだ場合、視聴者がそのメッセージを覚えている割合は10%にとどまりますが、動画で見た場合は95%と格段に高くなることがわかりました。さらに、動画があるサイトはテキストや画像だけのページよりも滞在時間が60%長いという結果が得られました。
また2020年はコロナ禍の影響で世界的に動画視聴が飛躍的に伸びましたが、2021年もさらに動画市場が成長しました。コロナ禍が長引いていることも一因ですが、5Gなどのネットワークが整備されるなど、動画視聴環境が大きく変化していることも影響していると考えられます。コロナ禍という状況にそれほど変化がなかったにもかかわらず、動画市場が拡大しているということは、動画視聴がより一般化したといえるでしょう。
コロナ禍の行動制限緩和後でも、動画の視聴回数は全世界で急激な伸びを示す(20年第3四半期対21年第3四半期)
オウンドメディアだけでなく、プライベートやビジネスなどあらゆるシーンで動画の活用が進んでおり、コンテンツマーケティングでの動画活用にますます追い風が吹いていると言えるでしょう。
動画で「リード獲得」「売上増」を狙うには
すでに一定期間コンテンツマーケティングを実施しているものの、なかなか売上につながらないという課題感を持っている企業も少なくないでしょう。しかし、適切な場所に適切な動画を用意し、適切なタイミングで動画視聴を促すことによって、今以上の売上増を見込むことができるはずです。
アメリカのビデオ制作サービス会社のlemolightの調査でも、84%の消費者が「動画を見て納得して購入した」と回答していますし、動画を使ったキャンペーンでのコンバージョン率が34%上昇したという結果も得られました。動画には購入の後押しをする効果があると言えるでしょう。
ところで、コンテンツマーケティングによってすぐに売上につなげることはできなくても、将来の売上につなげるためには、オウンドメディアやSNSを訪れた人をできるだけリード化していく必要があります。そのためにはより多くの「リードの実名化」が欠かせません。
しかし、自社のオウンドメディアやSNSを訪れる人は、まだアノニマス(匿名)の状態。つまり「誰かはわからないが、コンテンツを見ている人はたしかにいる」という状況です。SNSにしても、登録者数やアカウント名はわかるものの、住所や氏名、メールアドレスなど個人情報まで得られている状態ではありません。
ただ、こういったアノニマス状態の人たちが個人情報を入力するまでには心理的ハードルがあり、一筋縄ではいきません。そのハードルを違和感なく超えさせるために、エンタープライズ企業がエンターテインメント系の動画コンテンツを活用する事例が増えています。特に、プレミアム感のあるオンラインライブは他の情報伝達手段と比較して集客力が格段に大きく、かつライブを視聴したい人が違和感なく個人情報を入力してくれるのもポイントです。
次回は、動画を使ったコンテンツマーケティングの応用編として、オンラインライブの活用について具体的な事例を用いて解説します。
筆者プロフィール
ブライトコーブ株式会社 Regional Channel Director Japan
森 貴浩(もり たかひろ)
株式会社USENでGYAO事業本部のショッピングチャンネル立ち上げと新規顧客開拓に従事し、当時日本初のWEB動画による広告媒体の営業を実施。その後、凸版印刷株式会社へ入社。営業としてイベントプロモーションをはじめとするアカウント先のプロモーション業務全般を担当し、動画制作業務も複数実施。
2019年にブライトコーブ株式会社に入社し、Account Managerとしてエンタープライズ領域の伸長をリード。2021年には新設されたChannelセールスチームのDirectorに就任、日本における販売代理店プログラムの立ち上げを行う。動画配信サービスのチャンネル立ち上げやイベントプロモーション、ブライトコーブでの様々なビジネスにおける動画活用のユースケースを作成してきた経験から、事業会社における動画活用全般に関して精通する。