2022.01.17

今、大きく変わる「共働き世帯」という新たなマーケットの可能性──講談社メディアカンファレンス 2021 学びコンテンツレポート①

2021年7月に『with online』の姉妹サイト、『共働きwith』を立ち上げた岡本朋子編集長と、博報堂キャリジョ研所属で女性のキャリア形成や子育てに造詣が深い瀧川千智氏が、働く既婚女性のリアルを大分析。『共働きwith』が生まれた背景や、20代・30代共働き女性という新たなマーケットの可能性について、ご紹介します。


ありそうでなかった、共働き女性向けのメディア

株式会社宣伝会議 谷口 優氏(以下、谷口) モデレーターを務めさせていただきます、宣伝会議の谷口です。よろしくお願いします。さて、本日は「共働き世帯」をテーマに2人にお話をお聞きします。

近年、女性のライフ構造や世帯スタイルの変化により、メディア環境も大きく変わっていますが、岡本さんが『with online』の姉妹サイトとして立ち上げた『共働きwith』を、瀧川さんはどうご覧になっていますか?

博報堂DYメディアパートナーズ 瀧川 千智氏(以下、瀧川) 女性誌はさまざまなジャンルがあり、いろいろな生き方を提案していますが、どうしても年齢によって分けられているイメージが多いなか、『共働きwith』ではその年齢というフィルターを外したところが新しいと思いました。どういう経緯で立ち上がったのですか?

講談社 第二事業局 『with』事業部 部次長 『with online』編集長 岡本 朋子(以下、岡本) 今までの雑誌は、年齢が上がると読む雑誌を「卒業」し、次の年代の雑誌に移るというのが一般的でした。

『with』も、もともと独身女性のための雑誌としてスタートしたのですが、『with online』が登場してコミュニティができてくると、恋愛や結婚、出産とライフスタイルが変化しても、「卒業」せずに、ずっと『with online』のコミュニティにいてくださる方たちが増えてきました。

そこで、『with online』コミュニティの既婚女性にアンケートを取ってみると、60%の方の最終学歴が大学で、60%の方の職業が正社員や公務員、77%が共働きという結果が出たんです。

世帯年収が高く、貯蓄額も自由に使える額も多く、資産運用額もかなり確保している一方で、「忙しい」「時間がない」という意見も目立ちました。

谷口 世帯年収的に余裕があるので、既存の商品購入やサービス利用のターゲットにもなりそうなマーケットですよね。

岡本 そうなんです。それなのに、この層に向けたメディアがこれまでなかったんです。

彼女たちからすると、ママ系の雑誌やママ向けメディアや主婦向けのファッション誌はあるけど、自分の価値観にフィットしない。ですが、キャリアビジネス系メディアほどはキャリア志向になれず、かといって育児・子育て系のメディアでは「1食分のおかずを工夫して100円でつくる」など、手間のかかる情報しか得られない。もっと仕事と家庭の両立できる情報はないだろうか。そんな隠れた声にお応えして生まれたのが、双方の"いいとこ取り"をしたメディア『共働きwith』です。


『共働きwith』が目指すポジション

「良い母呪縛」で便利な商品やサービスを使えない現状

瀧川 共働きはボリュームゾーンとしても多いのに、そこに向けたメディアがなかったんですね。ライフスタイルも自分らしいバランスはなかなか難しいと思いますが「これをみればヒントが見つかる」というメディアができたことは、働く女性にはありがたいと思います。

谷口 女性の働き方や生き方が変わってきたのに、メディアがまだ追いついていないのかもしれませんが、共働き夫婦にはどんなインサイトの特徴があるのでしょうか?

瀧川 私が所属する「キャリジョ研」で働くママの調査をしたところ、出産をきっかけに乾燥機付き洗濯機や、食器洗浄機などの高級家電を買う方が多くいることが分かりました。

しかし最近では、家事や掃除代行、育児サポートなどのサービスも増えていますが、家事や掃除代行といった"人"を介すサービスの利用率はすごく低いという結果が出ました。

一方で、本当は使いたいけれど使えないと思っている方も3〜4割いました。


働くママは、時短できる「モノ」は使っても、人を介したサービス利用には抵抗のある人が多い

岡本 世帯収入は高いのでポテンシャルはあると思いますが、そもそもこうしたサービスがあることを知らない方もいるでしょうし、心理的ハードルもありますよね。

瀧川 誰もが「良い母でいたい」という意識があって、本当は家族みんなでやりたいのに、良い母だったらやらなくてはいけないという矛盾のなかでもがいている。「良い母呪縛」があるように感じます。こういうサービスを罪悪感なく使える社会になったらいいなと思います。

悩みに共感し、解決までを目指す『共働きwith』

谷口 こうした壁を取り除くには、女性だけでなく、男性も含めいろいろな人の意識が変わらないといけないのかなと思います。そのなかで、『共働きwith』が大切にされている視点を教えてください。

岡本 『共働きwith』をつくる時に、どんなメディアになってほしいかというアンケートを取ったところ、「男性も読めるものにしてほしい」「男性側の意見も取り入れてほしい」という意見が多かったんです。


『with online』の共働き読者が新メディアに期待することにはこれまでにない新しい視点が含まれている

いままであった女性メディアでは、自分の不平不満を吐き出して共感を得るという接点はあっても、男性側から見たらどうなのかという目線が抜けていました。

そもそも男性側が読める形になっていないので、女性たちが困っていることが届いていない。そこで、『共働きwith』では、男性目線での連載記事なども掲載しています。

また、「キラキラした話よりリアルな話がほしい」という意見も多くみられ、SNSなどですごく素敵な生活をしている人の、写真に写っていない部分をリアルにお伝えできるようにもしています。

加えて、「"かわいそうだね、がんばろう"(共感で終わる記事)ではなく、具体的な解決法を提示してほしい」というご意見も多くいただいたので、
・『つくりおき.jp』というサービスが便利ですよ。
・自動お掃除ロボットで掃除負担がこれだけ減りました。
といった、課題を解決してくれる商品やサービス、アプリの紹介や、男女の家事分担が上手にできている事例などをなるべく具体的に紹介するようにしています。

新しい顧客の創造や発見にもつながる場

瀧川 現在市場にあるサービスをご紹介するだけでも解決になると思いますが、まだ世の中にないサービスや商品を生み出していくこともできそうですね。『共働きwith』のコミュニティには、クライアントの方も注目されているのではないでしょうか。

岡本 そうですね。コミュニティメンバーが実際に使ってみての感想や、解決法の提案などのリアルな声を届けられるのも『共働きwith』の強みです。

瀧川 企業の発信はどちらかというと「この商品がどういいか」という機能的な発信になりがちです。しかしその先にある、ライフスタイルや情緒価値までを伝えられるのはメディアの力だと思います。

同時に企業目線で捉えると、新しい顧客の創造や発見にもつながりそうです。そういった循環を生み出せる場になるといいですよね。

たとえば、男性の要望も反映された保育園の送迎用の自転車とか、「ママバッグ」と呼ばれる赤ちゃん用品を入れるカバンも、パパが持ちたくなるようなデザインにするとか。そういう夫婦分担につながるようなアイデア、根本解決できるようなアイデアも、『共働きwith』のコミュニティメンバーと一緒に生み出していけそうです。

拡散力を持つ、著名人による連載

谷口 『共働きwith』は、共感性の高い共働き著名人の連載も多数抱えているので、拡散力でも強みを発揮しますね。

岡本 そうですね。波及力の強い方に発信してもらえるので、「これを使ったら、もっと豊かで楽しい暮らしができるよ」という価値観を広めるお手伝いができると思います。

たとえば、お子さん4人を育てながら仕事も家事も頑張っておられる辻希美さんの連載は、大変人気があります。特に、「電気圧力鍋を使ってみた」というような時短家電を使う回は大きな反響がありました。

また、サッカー選手の大久保嘉人さんにも連載をお願いしているのですが、4人お子さんがいらっしゃるうちのお一人を単身赴任先の大阪に連れていき、育児と家事をこなしながら現役サッカー選手を続けておられる日常を記事にしていただいています。

記事を通して、いままで仕事が忙しくて家事はできないと思っていた男性が、「大久保選手がやれるなら俺もやらなきゃいけないかも」と思うようなきっかけになるといいなと思っています。

ほかにも、「主婦業9割削減宣言」という記事を書いている方の「夜ご飯をつくるのをやめてみたら子どもの大事な話が聞けた」という記事もすごく反響がありました。手間暇かけてご飯をつくるのをやめてみたら、子どもの話を聞く時間が持てたという記事なのですが、子どもとの時間がどれだけ大事か気づく、よいきっかけになったというお声をたくさんいただきました。

『with』の読者は、仕事も家事もがんばる方が多いんです。アウトソーシングできるものはして、生まれた時間で家族との時間を大事にしながら、スキルアップもできるんだと、背中を押す存在になれたらいいなと思います。


『共働きwith』は、共働き家庭と時間を生み出す商品やサービスとのマッチングの場を目指す

すべての働く女性にとって、いい商品やサービスを世に出すお手伝いがしたい

谷口 従来の女性メディアではクライアントの業種、業態が限られていましたが、いろいろ組み合わせることでこれまでにない市場が見えてきそうですよね。そのなかで、共感性の高いオリジナルマンガ連載も話題です。

岡本 そうなんです。『共働きwith』は、マンガでストーリーに乗せたタイアップや、タレントさんとのタイアップも可能ですが、それらを組み合わせることでより立体的なコラボなどもご提供することができます。

瀧川 家事周りの商品を扱っている企業さんの中には、価値観が大きく変わり、どうやってコミュニケーションをしたらいいか悩まれているところもあります。そういう企業さんに向けて、川上からマーケティングやブランディングのご提案もできますね。

岡本 そのなかで『共働きwith』は、働く女性の悩みを解決するだけでなく、「女性が自分らしく働ける社会」にも寄与できるメディアになれたらと考えています。

もっと発信力を高め、すべての働く女性にとって、いい商品やサービスを世の中に出すお手伝いができればうれしいです。ご興味のある企業さまは、ぜひお気軽にご相談ください。


【講談社メディアカンファレンス 2021:学び動画】
今、大きく変わる「共働き世帯」という新たなマーケットの可能性

登壇者:
瀧川 千智/博報堂DYメディアパートナーズ 新聞雑誌局 アカウント推進部 メディアプロデューサー/博報堂キャリジョ研 
岡本 朋子/講談社 第二事業局 with事業部 部次長 with online編集長 
谷口 優(モデレーター)/株式会社宣伝会議 出版・編集 取締役 月刊『宣伝会議』編集長 

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