2021.12.08

#3 会社に頼む? 個人に頼む? 最適な外注先を選んでプロジェクトを成功させよう|マーケティングを成功させる チームビルディングの強化書

本連載では、成果を持続的に生み出すマーケティング・チームを組むことを目的に、企業のインハウスマーケターが企業または個人事業主に一部業務をアウトソーシングするときの注意点やケーススタディを紹介します。今回は、フリーランスのマーケターに仕事を依頼するメリットとデメリット、また依頼の際のコツなどを解説します。フリーランスのマーケターをチームに招き入れようと検討している方は、ぜひ参考にしてください。。

フリーランスのマーケター探しと依頼のしかた

外部のプロフェッショナルと連携しながらマーケティング・チームを組む際、その相手にはマーケティング会社だけでなく、フリーランスのマーケターという選択肢があります。
フリーランスのマーケターに依頼できる領域は、「リスティング広告・SNS広告などの広告運用」「SEO施策・運用」「市場調査」「データ分析」「SNS運用」「コンサルティング」などが挙げられ、これらの中に得意とするスキルやキャリアを有するマーケターが多いです。もしも一気通貫でプロジェクト全体を任せたい場合は、フリーランスよりマーケティング企業のほうが適しているでしょう。

フリーランスのマーケターに依頼する場合、大別すると何らかの成果物の納品に応じて報酬を支払う「単発プロジェクト」タイプと、契約期間中、委託契約した業務に対して継続して一定の報酬を支払う「継続契約」タイプがあります。これらの契約は自社の課題に応じて検討することになるでしょう。
信頼できる紹介などの心当たりがない状態でフリーランスのマーケターを探す際は、下記のような人材マッチングプラットフォームを参考にしてみてください。

lotsful
マーケティング、営業、広報などのキャリアをもつ人材の副業先と企業をマッチングするエージェントサービス。契約締結までの一連をエージェントがサポートしてくれる。

Workship
マーケター、エンジニア、デザイナーなど専門領域のフリーランスを週数日、フルリモートも含め柔軟な形態で採用できる。独自のユーザースコアリングで、企業と人材の最適なマッチングをサポートする。

企業かフリーランスか――それぞれのメリット・デメリット

では、企業とフリーランスのマーケター、それぞれにマーケティング領域の業務を頼む場合、どのような違いがあるのでしょうか。メリットとデメリットに分けて一覧化してみました。

取引における企業とフリーランスの差

会社に依頼することの大きな強みは、組織で仕事を請けることによって生まれる安定感です。業務のなかで生じるさまざまなタスクや困りごとについて、部署や担当ごとのフォローが期待できるため、リスクヘッジの観点では会社のほうが安心です。
一方、フリーランスはコストを抑えながら連携できることや、人選を間違えなければスキルの高い人材とチームを組めることが強みです。母体となる組織がないぶん、契約によっては社員に近いコミットで自社のマーケティング課題に向き合ってくれるでしょう。

ちなみに、ここまでの比較に当てはまらない特殊な形態の取引先として、一定の手続きにより法人成りしたフリーランスが存在します。法人成りしたフリーランスは、それができるだけの実績を重ねてきた場合が多く、実績や経験の乏しいフリーランスに比べれば信頼できると考えられます。一方、業務の進め方やリスクマネジメントの面では、フリーランスに近いことがほとんどです。取引相手が表面上法人か個人事業主かだけでなく、こういった背景まで把握してから、取引を検討しましょう。

また、令和5年から導入されるインボイス制度についても触れておきます。インボイス制度が始まると、買手側の企業は適格請求書(インボイス)を発行しない事業者との取引を懸念する動きが強まると予想されています。今後フリーランスや法人成りしたフリーランスと取引する場合は、適格請求書への対応有無についても確認すると良いでしょう。

参考:インボイス制度の概要>>

フリーランスのマーケターへの依頼が適しているのは、どんな時?

次に、フリーランスのマーケターに依頼したほうがより効果的と思われるケースを、具体的にいくつか紹介します。

インハウスで施策は回っているが、一部の業務だけ人手不足

マーケティング運用に携わる社内チームがすでにできており、ある程度PDCAが回っているケースです。社内のチーム編成やこれまでの業務フローを維持するためには、ピンポイントでフリーランスをアサインするほうがスムーズでしょう。とくに、分析など専門知識が必要な業務の人手が足りないときは、即戦力としてフリーランスを活用すると効果的です。

企業からの紹介など、実績が確かなフリーランスのあてがある

信頼できる企業などから紹介されたフリーランスがいる場合も、成果が期待できます。
フリーランスをアサインする際、最大のリスクはそのフリーランスのスキルが担保されないことです。すでに取引実績のある企業からの紹介があれば、安心して依頼することができるでしょう。また、紹介されたフリーランス側も企業間のつながりを配慮するため、期待に応えようとする意識が強まります。もし連携企業などがフリーランスに仕事を依頼しているのならば、紹介を頼んでみると良いかもしれません。

SNS運用やSEOディレクションなど、更新頻度の高いタスクを任せたい

頻度やスピードが求められる専門領域の業務は、フリーランスに任せると効果的です。SNS運用やSEOコンテンツのディレクションなどの業務は、その最たる例です。これらの運用業務に社内メンバーがつきっきりになってしまうと、全体を通じた施策の企画などに手が回らなくなります。ある程度ルーティン化できるけれど専門知識が必要な業務は、フリーランスの手を借りると、コストを抑えながら成果を出しやすいでしょう。

フリーランスのマーケターと仕事をするときの注意点

適材適所でフリーランスのマーケターの力を借りれば、自社のマーケティング環境は改善されるでしょう。ただ一方で、これまでフリーランスと取引したことがないなどで連携の仕方がわからず、トラブルにつながるケースも見られます。そこで、さまざまな観点からフリーランスのマーケターと仕事をするときの注意点を解説します。

依頼する業務の領域を示し、契約期間や報酬を適切に設定しよう

まずフリーランスと取引する際に重視したいのは、業務範囲と契約期間、そして報酬です。個人で企業にコミットするフリーランスは、取引する企業から比べれば、どうしても弱い立場になりやすいものです。業務範囲や報酬の取り決めが明確でないと、フリーランス側の負担が過大になってしまうこともあります。適切な業務内容を明示できないうちは、短期契約や単発プロジェクトを通じ、互いが納得いく要件を確認していくと良いでしょう。

外部に示せる社内体制と、社内外の枠を超えたチームビルディングを意識しよう

フリーランスのマーケターが社内チームに加わる場合は、意思決定者やデータ管理者などについてまで伝えましょう。誰が責任者か、誰に何を確認すれば良いのかがわからないままだと、フリーランスのマーケターには大きな支障が出ます。
そのためには、外部に相談する前に、社員がそれぞれ何を担当しているのか明確に示せるよう準備しましょう。さらに、プロジェクト進行中に社内のチーム体制が変わった場合などは、取引している外部メンバーにも共有しましょう。社員ではなくとも同じプロジェクトを進めるメンバーとして、組織構成を明らかにする意識が大切です。

自社データを開示する準備と、契約書でのトラブル防止をしよう

マーケティングの要となる運用や分析の業務を外部マーケターに相談する場合、自社データを開示する必要があります。データの漏洩防止はもちろん、インサイダー取引規制への配慮なども考えなければなりません。
まずマーケティング業務に必要なデータを明確にするとともに、そのデータを安全に共有するための環境を整備しましょう。PC貸与やVPNなどの手段や、契約書内容による徹底したリスクヘッジが必要です。

社内の暗黙知の押し付けはトラブルの原因に

社員として働いているとわかりづらいものですが、企業には暗黙知になっている事柄や人間関係の問題などが多々あるものです。それらを包括したカルチャーが強いと、外部メンバーとして関わるマーケターのストレスにつながることを配慮しましょう。また、特に過労については注意が必要です。休日や深夜の稼働を強いる納期設定はやめましょう。

フリーランスのマーケターとうまく連携し、より強いチームを作ろう

今回は、フリーランスのマーケターとのチームビルディングをテーマに、メリット・デメリット、そして取引する際の注意点などをお伝えしました。
自社マーケティングに課題があるとき、マーケティングに特化した企業に相談するのはもちろん必要なことですが、場合によってはフリーランスのマーケターを起用するほうが適切な場合もあります。フリーランスだからこそ注意しなければならない点も多々ありますが、逆にそこを押さえておけば、フリーランスのマーケターは、きっと心強いビジネスパートナーになるはずです。

筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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