eスポーツへの取り組みにも力を入れている国内最大級の総合サッカーメディア『ゲキサカ』が、eスポーツの高校生大会を初主催。総視聴回数2万再生を超える盛り上がりを見せ、「メディア×eスポーツ」の可能性を感じさせました。ゲキサカ×eスポーツの生み出す市場効果について、『ゲキサカ』編集長の西山紘平が解説します。
※eスポーツ:エレクトロニック・スポーツ(Electronic Sports)の略。コンピュータゲームをスポーツ競技として捉える際の名称であり、今回取り上げるサッカーゲームは人気種目のひとつ
『ゲキサカ』編集長の西山紘平
「ゲキサカeスポーツ」でファン層が拡大
──サッカーメディアである『ゲキサカ』がなぜ、eスポーツを取り上げるようになったのでしょうか? 経緯を教えてください。
西山 『ゲキサカ』は若年層を中心に、"現役プレイヤー"から"ファン・サポーター"まで、幅広い層から絶大な支持を得ているサッカーメディアです。
2006年のスタート以来、国内外、アマチュア・プロを問わず、幅広いカテゴリーのサッカー情報を届けてきました。特に注力しているのが、「高校サッカー」の分野で、大会の結果だけでなく、選手の活躍などを精力的に取材しています。
国内最大級の総合サッカーメディア『ゲキサカ』は、若年層を中心に多くのファンを抱えている
そのなかで、2年ほど前からeスポーツの人気種目である「サッカーゲーム」にも注目し始め、少しずつeスポーツ関連の記事や情報を増やしてきました。リアルなサッカーと同じように、大会の取材記事や最新情報を記事として掲載していくところから始め、徐々にゲーム動画配信も増やしてきました。
ゲキサカはチャンネル登録者数約10万人のYouTubeチャンネルを持っています。最初はそこでゲーム動画も配信していたのですが、視聴者層がやや異なることがわかり、「ゲキサカeスポーツ」として新しくチャンネルを開設しました。プロゲーマーに出演してもらい、さまざまなテクニックやコツなどを紹介してもらう動画などをアップしています。
YouTubeチャンネル「ゲキサカeスポーツ」
──「視聴者層がやや異なる」というのは、どういうことですか?
西山 当初、eスポーツのサッカーに興味があるのは、「リアルなサッカー好きやサッカー経験者が多いだろう」という予測のもとに動き始めたのですが、やっていくうちに実はそうでもないことがわかってきました。つまり、必ずしも、「サッカー好き=サッカーゲーム好き」ではないという事実が見えてきたわけです。
ならば「サッカーが好きなユーザー」と「eスポーツのサッカーが好きなユーザー」は、わけて考えるべきだと思ったんです。
とはいえ、eスポーツはスポーツの一種ですし、「eスポーツのサッカー」も、サッカーです。ならば『ゲキサカ』が扱わない理由はないと思いますし、新しいユーザーとの出会いが待っているのであれば、注力していこうと考えるに至りました。
動きを加速させるべく、2019年に、eスポーツで"世界を目指すチーム"を目標に掲げ、「ゲキサカFC eスポーツ」というプロゲーミングチームを立ち上げました。
『ウイニングイレブン』(ウイイレ)の世界大会で3年連続ベスト8に輝いた国内No.1プレイヤーであるプロゲーマーのMayageka氏を選手兼コーチに招聘。2019年夏にARATA、カクケンの2名が1期生として入団しました。
「ゲキサカFC eスポーツ」のメンバー。2021年秋にはさく、DAISUKEの2名が2期生として新加入。
総勢5名となり、活動の幅を広げている
「ゲキサカFC eスポーツ」公式サイト: https://web.gekisaka.jp/pickup/detail/?343949-343949-fl
現在、彼らはサッカーゲームの『eFootball』(ウイニングイレブン)『FIFA』を中心に、公式YouTubeチャンネル「ゲキサカeスポーツ」で動画を配信するなど活動を展開。eスポーツの各種大会やイベントにも積極的に参加しています。
市場ポテンシャルを感じた、eスポーツ高校生大会
──2021年の夏には、eスポーツ大会「第1回全国高校eサッカー選手権大会 supported by PUMA」を開催しました。大会を主催したことでどのような発見や反響がありましたか?
※"e-サッカー"は、株式会社コナミデジタルエンタテインメントの登録商標です。株式会社コナミデジタルエンタテインメントの許諾を得てeサッカーを使用しています
西山 ゲキサカでeスポーツを取り扱うようになってから、新規の読者やYouTube視聴者がすごく増えたんです。「eスポーツ」はまだ未知数の部分が多い市場ですが、大きな可能性があると感じています。
これまでも、市場の盛り上げのために、プロゲーミングチーム「ゲキサカFC eスポーツ」が積極的にeスポーツの各種大会にも出場してきたのですが、大会に出るだけではなくて自分たちで大会をつくったら、もっとeスポーツの盛り上がりに貢献できるのではないかと考え、スポーツマネジメント株式会社とともに大会を主催しました。
高校生の最強プレイヤーを決定する「第1回全国高校eサッカー選手権大会 supported by PUMA」には、延べ167人がエントリー。オンライン予選を勝ち抜いた8名が決勝大会に進んだ
第1回大会ですし、1社も協賛がつかないことも覚悟していたのですが、『ゲキサカ』でのご縁もあって、プーマジャパン株式会社が特別協賛してくれました。さらにeスポーツ文脈で3社の協賛もいただき、合計4社の協賛を得ることができ、各社には大変感謝しています。
──プーマジャパン以外の3社は、どのような企業が協賛したのでしょうか?
西山 ゲーミングチェア「AKRacing」の製造販売をしているテックウインド株式会社、「めちゃコミック」を運営しているアムタス株式会社、ゲーミングPC「GALLERIA」を扱っている株式会社サードウェーブの3社です。
協賛の背景としては、テックウインド社とサードウェーブ社は、それぞれゲーミングチェアとゲーミングPCという自社製品を将来のターゲットである高校生に広げたいという思いがあり、アムタス社はサッカーマンガのキャンペーンを兼ねてリーチを広げたいという思いをお持ちでした。
加えて、『ゲキサカ』というサッカーメディアが「eスポーツ大会を高校生に向けてやる」ということにも興味を持っていただき、今回の協賛が実現しました。
「第1回全国高校eサッカー選手権大会 supported by PUMA」初代王者に輝いたmurasaki選手 ©GEKISAKA
「ゲキサカ×eスポーツ」に協賛するメリット
──メディア発の大会ということも、プラスに作用したのですね。そのなかで、「ゲキサカ×eスポーツ」に協賛するにあたり、各社にどのようなメリットを提供できたと考えていますか?
西山 ひとつは、ゲキサカのサイトや、公式YouTubeチャンネル「ゲキサカeスポーツ」で大会の告知をする際に、スポンサー各社の社名やロゴを掲載させていただき、各社がターゲットとするユーザーに、「eスポーツを応援している企業」であることをアピールできたことだと思います。
ふたつ目は、『ゲキサカ』というメディアを介すことで、eスポーツのサッカーゲームファンだけでなく、リアルなサッカーファンにもコンテンツを届けることができるというのは、"サッカーメディアならでは"のメリットになったと考えています。
ただ、今回のメインターゲットである高校生の場合、スマホでアプリゲームをするユーザーが圧倒的に多く、まだPCや家庭用ゲーム機を使ってゲームを楽しむユーザーはそれほど多くありません。機材を用意するのにも、お金がかかりますから。
そこで、決勝大会時にはPRコーナーを設け、将来の購入見込み客である高校生に向けて、サードウェーブ社にハイスペックゲーミングPC「GALLERIA」の紹介をしていただきました。同社からも好評で、「新しい層にアピールできた」と喜んでいただけたのは、うれしかったですね。
今後も『ゲキサカ』の強みを活かして、eスポーツを盛り上げていきたい
──「ゲキサカ×eスポーツ」の強みは、どこにあるとお考えでしょうか?
西山 メディアである『ゲキサカ』にはコンテンツ制作力、そして発信力があります。だからこそ、プレイヤーだけでなく、まわりの関係者も一緒に巻き込むことができるのは「ゲキサカ×eスポーツ」の強みだと考えています。
実際、今回の大会に参加した高校生の保護者や教員から「コロナですべてのイベントが中止になるなか、思い出に残る大会に参加できてよかった」「サッカー部では活躍が難しい選手だったが、新しい活躍の場を提供してくれてありがとう」という感謝の声をたくさんいただきました。
今回、eスポーツの大会は初の試みでしたが、コロナ禍のなかで多くの方に笑顔を届けることができたことは、個人的にも大変うれしく思っています。
「選手が楽しめる大会にできたことがいちばんよかった」と話す西山編集長
──今後の目標を教えてください。
西山 「eスポーツの高校生大会」については今後も継続的に行い、ゆくゆくはサッカーなら国立、野球なら甲子園のように、ゲームをやるすべての高校生が目指す大会として定着させていくのが目標です。
プロアマ、年代問わずできるのがeスポーツの醍醐味でもあるので、オールカテゴリの大会も展開していけたらいいですね。
もちろん、「ゲキサカFC eスポーツ」として、外部の大会にも積極的に参加していきます。いずれeスポーツがオリンピックの正式競技として認められるようになるかもしれませんし、「ゲキサカからeスポーツのオリンピック選手を輩出する」というのが、この先の大きな目標です。
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