2021.10.05

#1 これって誰に頼めばいいの? マーケティング業界はプロだらけ|マーケティングを成功させる チームビルディングの強化書

自社のマーケティングについて課題が見つかったとき、「誰に」「何を」相談すればいいのか悩むことはありませんか?
マーケティングの領域はIT化が進んだことで広がり、それをサービスとして提供するプロの肩書や、サービスそのものの名称も増え続けています。成果につながる運用を目指すためには、多岐にわたる選択肢の中から適切なアウトソーシング先を見つけ出し、長期的かつ良好な関係性を構築していくチームビルディングが必要です。
本連載では、マーケティングを成功させるためのチームビルディングに焦点をあて、それぞれの課題に対して適切なプロを起用し最善のチームを築くための処方箋をお届けします。

インハウスの限界とアウトソーシングの課題

そもそも、マーケティングを成功させるために、なぜアウトソーシングを前提としたチームビルディングについて考えなければならないのでしょうか。はじめに、社内だけではマーケティングを完結させることが難しい現状について紐解いていきます。

煩雑化するマーケティング業務、社員のみでは手一杯

マーケティングとは、顧客が真に求める価値を届けるプロセスや行為にほかなりません。市場分析や広告制作、顧客意見の収集などさまざまな業務がマーケティングとして捉えられますが、IT化が進んだ昨今、その業務の幅と深度はいずれも拡張し続けています。
EC市場が急成長を遂げ、SNSが訴求力を増し、いわゆるデジタルマーケティングと呼ばれる領域が確立したことで、マーケティングの様相は大きく変わりました。これに伴い、マーケターが求められるスキルは変容し続けており、現在では一人の社員が常にベストプラクティスを導き出すのは至難の業と言えるでしょう。このデジタルマーケティング領域は、目まぐるしい変化と拡張を続けています。数年のうちに様変わりするといっても過言ではありません。

こうした背景を考えれば、運用も含めたマーケティングの仕事をすべて社内で回すのは非常に難しいと言えるでしょう。仮に人材採用でこの問題を解決するとしても、どういった人材が必要なのかを分析するために、やはりマーケティング領域の細分化に対する活きた知識が必要です。

専門家やツールの力を借りたほうが効率よく進めやすい

ことデジタルマーケティング領域については、専門家やツールに頼ることでコストやリソースを削減できる業務が多々あります。
たとえばデータ分析に関するツールは進歩がめざましく、感覚的な操作で幅広い情報を得られるツールを、安価または無料で提供している企業も珍しくありません。また、マーケティングに特化した専門業者に頼めば、こうしたツールの選定だけでなく、戦略構築そのものについて相談することも可能です。

アウトソーシング先選びは慎重に

一方で、マーケティング担当者からは、このアウトソーシング先の選定での悩みが絶えないという声も聞きます。
マーケティングと一言でいっても、自社が困っていることに合致するサービスやツールを提供している企業と出会うのは、なかなか難しいものです。とくにデジタルマーケティングについては提供価値の判断基準や領域の線引きがあいまいなので、取引を始めてからミスマッチに気付くことも少なくありません。
こうした"発注先違い"は、隣接する専門領域同士のいたるところで起こっています。そもそも発注内容自体の方向性を見直すべきケースも含め、はじめからスムーズなチームビルディングを実現している企業は少ないでしょう。

マーケティング関連の領域/職種一覧

マーケティング業界の細分化と難しさの理解を深めるために、各職種のプロにヒアリングしながら、下記のような図をまとめてみました。企業の業態や案件によって紐付けは変わるため、これが必ずしも当てはまるとは言えませんが、ご参考にしてください。

マーケティング関連の領域とそれぞれに属する職種例

マーケティング関連の領域と職種イメージ

デジタルマーケティング領域の多様化

本連載でとくに焦点をあてていきたいのは、上図のデジタルマーケティング領域です。デジタルマーケティングに紐づくすべての領域は、IT化によって急速に定義されていったものです。上図にはあえていれませんでしたが、ソーシャル広告運用の中にさらにインフルエンサーマーケティングが確立しつつあったり、アプリ制作の領域にUnityエンジニアが参入したりと、今なお関連する人材の種類は拡張し続けています。

デジタルマーケティング領域の拡張は、新しいツールやプラットフォームが生まれたり、今はないニーズが顕在化したりすることで、これからも続くでしょう。そのたびに各領域に特化した専門家やサービスが登場し、それを包括するディレクション事業を展開する企業も増えるはずです。

徐々に増すフリーランスの存在感

マーケティング領域で活躍するフリーランスの存在についても触れておきます。法人ではなく個人でマーケティングに関わるサービスを展開する事業主は一定数おり、ことデジタルマーケティング領域については、柔軟性やコストなどの観点からフリーランスを採用するほうが適切である場合もあります。

一方で、フリーランスは対応できる業務内容やリソースが限られており、対企業と同じ感覚で取引や契約をすると後々のトラブルにつながりやすいことも忘れてはなりません。また企業と個人事業主が直接取引する際、どうしても企業のほうが立場が強くなってしまうということを念頭に入れた関係構築が必要です。

不適切なアウトソーシングが招く3つのリスク

このようなマーケティング業務のアウトソーシングの難しさに起因し、ミスマッチとなりうる3つのリスクを解説していきます。

1. 予算の無駄遣い

第一に挙げられるのが、求めていた成果を出すまでにかかる経費が予想以上にかかってしまうことです。
適切なアウトソーシング先を選べなかったとしても、PDCAを回せばおおよその成果は上がります。しかし、達成すべきゴールまでの時間がかかってしまうと、その分の工数費や人件費、さらには自分自身の稼働コストがかかります。また、依頼したアウトソーシング先が、さらに別の業者に部分的な業務を外注しているケースもあり、その場合は中に一社入ったことで無駄な経費が発生していることがほとんどです。
マーケティングはある程度の期間を経ないと成果が見えづらいものなので、このミスマッチングに気付けないまま予算を使い続けてしまうことは少なくありません。はじめのアウトソーシング先の選定の段階で慎重な検討を心がけましょう。

2. 運用面のブラックボックス化

次に、運用面のブラックボックス化も問題のひとつです。アウトソーシング先に依存した手法や運用が定着してしまうと、その成果を分析したり、そこから次の打ち手を判断したりといった舵取りができなくなってしまいます。
この問題は経年でわかってくるものなのですが、社内マーケターが常にマーケティングデータや課題を把握していくことを業務の一環と捉えていれば防げる問題でしょう。

3. ブランディングの観点でのダメージ

最後に、アウトソーシング先のミスマッチが招く最大のリスクは、企業や商品・サービスのブランド力の低下です。マーケティングに関わる諸アクションは顧客接点にも深く関わるため、運用が企業の方針と合っていないと、その不信感や違和感はダイレクトに顧客に伝わります。(※戦略はもともと社内で構築すべきとの視点でここは割愛しました)
このリスクは、アウトソーシング先のミスマッチだけでなく、自社マーケターの方針がぶれたり、伝達が不十分であったりすることでも増大します。短期的な結果では見えづらい問題ですが、中長期的にはリピーターやロイヤルカスタマーを失う可能性があるため、十分注意が必要です。

適切なマーケティングチームを組む意識の重要性

このようなリスクを防ぐためにも、マーケティングに関わるアウトソーシング先の選定は、極めて重要なフェーズです。また、そのときに意識したいのはチームビルディングの視座です。
チームビルディングとは、チームメンバーのスキルや経験を最大限に発揮できるチーム作りを指します。前項で述べたように、マーケティングに関わる企業や個人事業主の専門領域は多岐にわたります。それぞれのスキルや特徴を理解したうえでチームを作る意識が、成果へと結びつくのです。
また、アウトソーシングする企業側は、アウトソーシングする対象を「外部スタッフ」と認識せず、共に同じ目標を目指す「チーム」として扱いましょう。というのも、マーケティングは企業の顔を作る重要な役割であるからです。その役割を担うメンバーに垣根を感じさせることなく、快適に仕事できる環境を整えることが、発注側が担うべき役割といえるでしょう。

アウトソーシングを前提としたベストなチームビルディングのために

本連載では発注側の心構えから始まり、具体的な発注先の選定、そして取引をするにあたって注意すべきことなどを、各領域の専門家に取材しながら紐解いていきます。具体的には、下記のような内容を予定しています。

  1. マーケティングチームをリードする企業のマーケターが担う役割
  2. マーケティング領域に含まれるプロフェッショナルの区分け
  3. 契約から発注、運用までのプロセスにおける注意事項、懸念点
  4. 最適なマーケティングチームによる持続的な運営と取引を実現するための方法

この他にも、企業のマーケターがアウトソーシング時にトラブルになりやすい事例や、アウトソーシングしたことで成功したマーケティング事例などを取り上げつつ、社内外で最善のチームを作り、成果を出していく方法を具体化していきます。
自社でのマーケティング運用に悩みや課題があり、パートナーとして伴走してくれる企業や個人事業主を探している担当者の方は、ぜひ今後の連載にご期待ください。

筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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