さまざまな分野で活躍する人物から「マンガから学んだこと」を聞く連載。第7回は、声優の増田俊樹さん。アニメ『進撃の巨人 The Final Season』でポルコ・ガリアードを演じ、現在放送中の『美少年探偵団』や7月期から放送予定の『ピーチボーイリバーサイド』ではメインキャラクターを務めるなど、さまざまな作品に声を通して命を吹き込む増田さんに、マンガへの思いを聞きました。
声優 増田俊樹
1990年生まれ、広島県出身。数多くの人気アニメ作品のキャラクターを演じる。
今回のインタビューでは、声優としてではなく、"いちマンガ好き"の視点で、話を聞いた
息をするように、マンガを読んでいる
──増田さんは声優になる前から、マンガが好きだったそうですね。好きになった理由を教えてください。
増田 僕がマンガに出会ったとき、すでにマンガは日本を代表するカルチャーのひとつでした。当たり前のように身近にあったので、特に好きになった理由というのは思い浮かびませんが、最初のマンガ体験は『コロコロコミック』だったことは覚えています。『ポケットモンスター』や『ゴーゴー!ゴジラッ!!マツイくん』などが好きでした。
──現在では、年間500~600冊ほどマンガを読まれているそうですね。
増田 数えているわけではないのですが、使った金額から算出すると、おそらくそれくらいだと思います。読む冊数が増えたのは、電子書籍の影響が大きいです。何十年も前の作品や書店にない作品も検索すれば出てきますし、手軽にマンガを読めるようになりましたよね。
マンガを選ぶ基準は、友人からすすめられたもの、表紙が気になるもの、ネット広告で知ったものなど、何かひとつでも気になる要素があれば読んでいます。もはや息をするように、マンガを読んでいますね。
──増田さんにとってマンガを読むことは、生きること。生活に欠かせないものなのですね。そんな増田さんが、最近ハマっているマンガについて教えてください。
増田 「週刊少年マガジン」で今年から連載がスタートした『戦隊大失格』です。『五等分の花嫁』の作者・春馬ねぎさんが描かれている作品で、ヒーローではなく悪の軍団の立ち位置で描かれているところが、いい意味で少年誌らしくなく、新鮮に感じています。
善か悪か。それは立場や価値観によって異なります。この作品は悪の軍団の立場で見たときに、ヒーロー側は本当に正義なのか、という視点が面白く、今後がすごく楽しみな作品ですね。
それと、美大受験マンガ『ブルーピリオド』にもハマっています。僕はもともと、マンガやアニメの絵に興味を持っていたこともあり、『ブルーピリオド』を読んでからは、絵画的な絵を描いてみたいと、創作意欲が沸きました。美術館に行ったりもしたのですが、それも作品の影響を受けたからかもしれません。まだ随分と先ですが、ぼんやりと、老後は絵を描いて過ごせたら、なんて考えたりするくらい、引き込まれた作品です。
──ほかに、これまでにハマった作品があれば、教えてください。
増田 『はじめの一歩』ですね。読んだのは5年くらい前です。この作品は電子書籍化されていないので、3日間ぐらいマンガ喫茶に入り浸って、当時発刊されていた100刊ほどを一気読みした記憶があります。
いじめられっ子だった主人公がボクシングを始めて、成長していく。僕も男なので、単純に"強さ"に憧れがありますし、自分はなれなかった「強い男の子像」に主人公が近づいていく姿に、深い共感を覚えました。ストーリーも面白くて、ページをめくる手が止まりませんでした。名作だと思います。
もしもマンガがなかったら、人生の99%を失う
──増田さんにとって、マンガはなくてはならないもの。「もしマンガがなかったら」と考えたことはありますか?
増田 僕の人生を100とすると、「マンガを失う」というのは人生の99%を失う。それくらい僕にとってマンガは大きな存在ですね。
マンガがなければ他の楽しみを探すかもしれませんが、マンガを知っている自分と比べたら、知らない人生はまるでつまらないものになりそうです。
衣食住のうち、僕は着るものについてはそこまでこだわりが強い方ではないので、制限されても大丈夫です。ですが、マンガを制限されるとなれば、それは食べるもの、住む場所を制限されるくらいに、辛いこと。それくらいマンガは、僕にとって「生きる」に近いところにあるものなんです。
──もしこの世界にマンガがなければ、アニメも声優という仕事もない。「人生の99%を失う」という表現は、決して大袈裟ではないように感じました。増田さんにとってマンガは、身体を流れる「血」のような存在なのですね。
増田 そうですね。もしくは「肉」でしょうか。日々取り入れていて、僕の人生や身体を構成している一部。マンガから学んだこと、受けた影響が多すぎて、マンガのない世界なんて、本当は想像もできません。これからも"マンガ好き"のひとりとして、たくさんの作品に触れながら、人としても声優としても成長していきたいです。
筆者プロフィール
C-station編集部
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