2021.01.26
ウェビナーやオンラインイベントを成功させるために必要なこと|動画マーケティング 効果最大化のための知識と手法<第2回>
コロナ禍以降、いっそう重要性が高まった動画を活用したマーケティング。
グローバルで動画配信プラットフォームを提供する「ブライトコーブ」の日本法人代表・川延 浩彰氏が、日本のマーケターが動画をどのように活用し、効果をあげていくべきか、実践的な解説でお届けします。
コロナ禍で大きく変わったことの一つに、企業のウェビナーやオンラインイベントが一般化したことが挙げられます。リアルの場に人を集めることが難しくなったことで、多くのBtoB向けイベントやセミナーがオンライン開催へと移行しました。弊社のプラットフォームも、大規模なオンラインイベントから小規模なウエビナーまで、幅広い機会にご利用いただいています。
そこで今回は、オフラインからオンラインへと移行しつつあるセミナー・イベントを成功させるために必要なポイントについて解説します。
ユーザーの細かい視聴データが追えるオンラインイベント
セミナーやイベントをオンラインで開催することの大きなメリットは「場所という制約がないこと」です。
来場を条件とするオフラインの場合は、イベント開催の何ヶ月も前から準備や集客を始めなくてはいけません。ところが、オンライン開催はその制約がない分、イベント開催1カ月~2週間前の案内でも十分な集客を得ることができます。
短いリードタイムで人を集めることができるのは、オンラインイベント・セミナーの特徴だと言えます。実例として、デジタルイノベーションをテーマに、最先端の情報を発信するイベント「PLAZMA」を紹介しましょう。
昨年2月17日、18日に開催された「PLAZMA 2020 KANDA」は当初リアルでのイベント開催を予定し、事前申込みも受け付けていました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大を鑑み、開催直前に急遽全セッションを動画でライブ配信することを決め、実施しました。
当初は結果が心配されましたが、実際にはオンライン視聴者は1,200名を超え、事前申込みの9割および想定来場者の200%を超える方へコンテンツを届けることができました。
そして、オンラインイベントのもうひとつの大きなメリットが、「ユーザーの視聴データを取得できること」です。
ウェビナーやオンラインイベントの場合は、MA(マーケティングオートメーション)やCDP(カスタマーデータプラットフォーム)と連携させることで、視聴数や視聴時間だけではなく、ユーザーの視聴前後での行動を追うことが可能になります。「どのような経路でウェビナーに参加したのか」「視聴時間はどのくらいだったのか」「視聴後にどのような行動をとったのか」といった配信前後の行動を含めて、全体像を一気通貫で見ることができることが、オンライン開催の最大の強みです。
こうした視聴前後の行動がつながったユーザーデータによって、ユーザーの興味関心の高さや、どのような分野に興味を持っているかなどのインサイトを把握し、インサイドセールスにつながることができるため、より高い確率でリード獲得につなげることができるようになります。
ただここで注意が必要なことは、配信するプラットフォームによって取得できるデータが異なるという点です。プラットフォームの選び方については後述しますが、リード獲得につなげるためのウェビナー・オンラインイベントの場合には、「ユーザーの視聴データが手元に残るかどうか」「どんなデータを取得できるのか」は重要なポイントになります。無償のプラットフォームの多くはユーザーの視聴データは手元の残らずにプラットフォーマーのものになってしまう点にご注意ください。
オンライン・オフラインそれぞれの価値を追求しよう
一方で、オフラインイベントにあって、オンラインイベントにはない強みもあります。例えば熱気に包まれた会場から伝わる臨場感や、その場限りという限定感は、オフラインイベントならではのプラス要素です。
しかし、オフラインとオンラインを比較することにあまり意味はありません。
たとえば、Amazonを思い浮かべてみてください。Amazonは書店をオンライン化したもの。書店には店員がいて、本棚があり、本を見ることができますが、Amazonにはどちらもありません。その代わり、Amazonにはデータを活用したレコメンド機能があり、ユーザーが興味を持ちそうな商品を次から次へと推薦します。Amazonにも書店にもそれぞれに便利な点があり、良いところがあります。
オフラインにはこれができて、オンラインではこれができないということは当たり前で、それを無理に補完する必要はありません。それぞれがその場に最適化した要素を研ぎ澄ませ、共存させて展開していけばよいのではないでしょうか。
アフターコロナはオフライン・オンラインのハイブリッド型に
今後新型コロナウイルスのワクチンが開発され、感染が収束してきたとしても、オフラインイベントやセミナーがメインだったコロナ以前に完全に戻るのではなく、オフラインとオンラインのハイブリッドで展開されることが多くなるでしょう。オンラインセミナーやイベントを通じて「リードをどのように獲得していくか」という点に、引き続き注力しなくてはなりません。
コロナ前に、来場を前提にイベントやセミナーに参加していた方たちは、興味・関心が強い層だったといえるでしょう。一方で、ウェビナー・オンラインイベントの参加者のなかには、「オンラインだから参加しよう」という興味・関心が比較的薄い層が多く含まれています。
オンライン開催になったことで全体の参加者数は増えたとしても、参加者の興味・関心の度合いに個人差が大きく、有益なリードを見極めることがより重要となるでしょう。
前述したとおり、ユーザーの視聴データを取得し、配信の前後の行動を含めて全体像を一気通貫で見ることができることがオンライン開催の最大のメリットです。
継続的なイベント施策としては、ユーザーデータによって興味関心の内容を見極めつつ、「認知フェーズ向けイベント」「検討フェーズ向けウェビナー」「購買フェーズ向けウェビナー」など、細かくターゲティングしたイベントやウェビナーを用意することが、より質の良いリード獲得につながると考えます。
イベントの目的や規模など全体像をふまえ、最適な配信プラットフォームを
最後に、企業がウェビナーやオンラインイベントを配信する際のプラットフォームの選び方について触れたいと思います。数多い動画プラットフォームの中から、どのような基準でどう選べばいいか迷われている企業も多いと思いますので、ぜひ参考としてください。
例えば双方向のリアルタイムコミュニケーションを少人数で実施したいということであれば、ZOOMやGoogle Meetなどのサービスを利用して十分実施できます。また、一方向のライブ配信をする場合には、YouTube Liveなどのサービスも考えられるでしょう。
一方で大規模イベントや絶対に失敗が許されないライブ配信などを行いたいときには、セキュリティの安全性が担保され、アクセスが集中しても安定的に配信可能な大手プロバイダーによるプラットフォームを選ぶべきでしょう。
最近、オンラインイベントやコンサートのライブ配信中に、アクセス集中による遅延などで配信に影響が出たという話を耳にした方もいるのではないでしょうか。無料のイベントであれば金銭面での問題はないでしょうが、有料のイベントの場合には、チケット返金などの問題が発生してしまいます。もちろん有料でなくても、重要なイベントのライブ配信におけるトラブルは、信用低下による視聴数の減少など大きな機会損失につながります。
また繰り返しになりますが、プラットフォーム選びにおいて「ユーザーデータが手元に残るか」や「どんな視聴データが取得できるのか」も大きな要素です。継続的にウェビナーやオンラインイベントを開催していく場合には、特にここが重要です。
配信プラットフォームを考えるときは、まず目的を明確にしてイベントの全体設計を描き、「イベントの規模」「重要度」「参加費の有無」「どのようなデータが必要か」などを考慮し、最適なものを選択していくとよいでしょう。
筆者プロフィール
ブライトコーブ株式会社 代表取締役社長 川延 浩彰(かわのべ ひろあき)
合計で15年以上のビジネス経験を有し、そのうち約10年にわたり動画配信プラットフォーム事業に携わる。
ブライトコーブでは、マーケティング兼アカウントマネージャーとして入社し、ブライトコーブ株式会社第一号のアカウントマネージャーとして、日本のブランド並びにメディア企業の動画配信プロジェクトに従事。その後、2016年には、アカウントマネジメント統括としてブライトコーブ株式会社の既存ビジネスの総責任者に着任。2018年よりVice Presidentとして韓国事業並びに日本市場におけるセールスを統括。2019年9月より現職。
下関市立大学経済学部卒業。カナダビクトリア大学 Peter B. Gustavason School 経営学修(Entreneurship専攻)。