2021.01.13

#2 広告プラットフォームのトレンドと特色を知って結果につなげよう|アドテクノロジーとWEB広告

<新連載>データをチカラに アドテクノロジーとWEB広告

WEB広告にはさまざまな配信方法と、それに応じた表現手法があります。表現手法には静的な画像、テキストだけでなく、動画や音声などもあります。
どんな配信方法や表現が適切か判断するためには、それぞれの広告が掲載されるプラットフォームの特色について理解しなければなりません。今回は動画をはじめ、さまざまな配信方法や表現手段で裾野を広げるプラットフォーマーについて紹介し、それに伴って増えたWEB広告の選択肢について考えます。

動画・音声、ゲームプラットフォームと広告モデル

昨今大きな成長を遂げている動画・音声、ゲーム配信プラットフォームは、WEB広告の表現手法の可能性を広げています。いずれのプラットフォームも共通しているのは、ターゲットの特性や視聴環境に合わせた広告体験を提供する点です。
動画広告の広告スキップや音声有無の選択、ユーザーを巻き込んだ体験型広告施策など、ユーザーは広告に対してさまざまなアクションを起こすことができます。それぞれのプラットフォームの特性を理解することで、広告主は最適な表現手法を検討することができるでしょう。ここからは、いくつかの特徴的なプラットフォームについて簡単にご紹介します。

YouTube

世界最大の動画プラットフォームであるYouTubeは、動画の視聴中や前後に流れるインストリーム広告・バンパー広告や、動画検索画面に表示されるディスカバリー広告など5種から選んで動画広告を掲載できます。課金方法も予算を決めてその分だけ広告掲載するタイプから、期間を決めて掲載できる掲載日数課金までさまざまです。
YouTubeに動画広告を掲載するメリットは、視聴者の興味に応じて広告費用が発生することです。スキップ可能なインストリーム広告の場合、30秒以上視聴したユーザー分のみ課金が発生するため、広告に関心を寄せた人の分だけコストをかけることができます。また、モバイルやタブレットにのみ掲載されるアウトストリーム広告などもプランもあり、ユーザーの視聴環境に応じた訴求が可能であることも魅力です。

YouTube広告の成功事例 (動画出典YouTube Ads公式ページ)

TikTok

若い世代に人気の動画プラットフォームTikTokは、15秒以内のショートムービーをスマートフォン画面全体に表示させられることが最大の魅力です。起動時に表示される起動画面広告やインフィード広告のほか、ユーザーに対し広告に関する投稿を促す「チャレンジ広告」という独自のタイアッププランもあります。
TikTokに自ら動画投稿をするユーザーは10~20代が大半を占めます。しかし意外にも視聴ユーザーには20代以降の世代が多い傾向にあり、若年層向けのサービスや商品以外の広告でも訴求することが可能です。
TikTok広告の料金体系は、インプレッション課金型、期間契約型、再生課金型、クリック課金型の4種。予算に応じた設定が可能ですが、目安としてインプレッション課金型の場合1日単位の契約で1,000impあたり770円の費用がかかります。また、タイアップ広告の場合、期間契約型1000万円のプランをスタンダードとして、より波及効果の高い上位プランが複数用意されています。


著名人の動画投稿も相次ぎ、チャレンジ動画は開始1か月で2億再生を突破するものも
画像:Bytedance株式会社

radiko

インターネット上でラジオを楽しめる音声メディアradikoは、音声メディアにおける独自のターゲティング広告モデル「ラジコオーディオアド」を提供。番組視聴中に15~60秒のから選択してオーディオ広告を配信できます。
このオーディオアドは、ユーザーの視聴履歴や行動履歴、居住地などに合わせて配信することが可能です。動画広告と比較してスキップされづらく、視聴者の体験を邪魔しないオーディオ広告は、デジタル広告市場の中でも注目を集めています。


ユーザーに応じて広告内容が変わるデジタルオーディオアド
画像:株式会社radiko

Mirrativ

ゲーム実況配信プラットフォームMirrativには、ユーザーがゲームプレイを通じて成果報酬を得られるタイアップ広告が充実しています。広告出稿主の提供するゲームの新規ユーザーを増加させる施策や、ユーザー同士のゲーム内コミュニケーションを促すキャンペーンなど、ゲーム実況配信に特化したプラットフォームならではの広告体験を提供します。視聴者の体験に乗じて商品の魅力を伝えられる、ゲーム業界には極めて魅力的な広告モデルです。


ゲームタイトルと連動したキャンペーンでユーザーと企業双方にメリットのあるキャンペーンを実施
画像:株式会社ミラティブ

Twitch

ゲーム実況をはじめアーティスト活動や雑談などをライブ配信する配信プラットフォームTwitchは、配信者にとって自由度の高い広告掲載が特徴です。例えば、配信者がライブ休憩中に広告を流したり、課金ユーザーには広告を非掲載にしたりといった設定を、配信者自身が行います。公式ブログで紹介されている広告チュートリアルでは、『配信者自らが広告について視聴者に説明して広告を挿入する』ことを推薦しています。
注目したいのはこの「配信者と視聴者(ファン)の信頼関係に委ねられた広告掲載」という新たな枠組みです。視聴者は配信者をサポートする一貫として広告を受け入れますので、他媒体よりも高い訴求力を持つと考えられます。


配信者自身による広告意義の説明は大きな効果を持つ
動画:Twitchクリエイターキャンプ

広告プラットフォームとWEB広告、データ分析の可能性

これらのようなプラットフォームの存在感が高まる中、広告主は広告配信先、広告配信手法、そしてクリエイティブを一貫した戦略として考えねばなりません。そのために、広告を見る読者や視聴者の視点に寄り添うことの重要性が高まっています。

ユーザーに寄り添うための情報源として広告主が活用できるのが、彼らが残すあらゆるデータです。リターゲティングやオーディエンスデータについては前回の記事で解説しましたが、このデータについてプラットフォームの多様化という点から少し考えてみましょう。

コンセプトや読者層を絞ったメディア単体と異なり、プラットフォームはいわばメディアの集合体ともいえます。年齢層や性別、個性の異なるターゲティングを行う配信チャンネルやメディアが集まっているため、そのプラットフォーム"だから"生じる広告価値は極めて判断しづらいでしょう。だからこそ視聴者や読者のパーソナリティに応じて広告掲載の可否を判断するAIの力が必要不可欠になります。

広告掲載先としてのプラットフォーマーに求められるもうひとつの要素は、ユーザーデータの厚みです。あらゆる読者や視聴者を擁することは、ランダム性の高いデータを取得可能であることにつながります。年齢や性別といったカテゴライズを越え、潜在的なパーソナリティの特性を導き出し、そのパーソナリティをターゲットとした広告を配信することができるわけです。

講談社プレミアム広告ネットワーク・プラットフォーム『OTAKAD』

具体例として、講談社プレミアム広告ネットワーク・プラットフォーム『OTAKAD』を挙げましょう。『OTAKAD』は講談社が有する複数メディアを横断したプラットフォームです。『OTAKAD』が広告配信先を決定するAI解析の軸は、ユーザーの『オタク性』です。

講談社には20代~50代各年齢層の男女をターゲットとしたデジタルメディアがあり、それぞれビジネスやファッションといったメインテーマを持ちます。OTAKADはこれらの膨大な記事とユーザーの閲覧履歴の結びつきから個々のユーザーの興味・関心を可視化し、もっとも強い嗜好(=オタク性)でユーザーをセグメントします。『外食好きなビジネスマン』や『婚活ファイターズ』といったユニークな人物像に向け、メディアを横断した広告を配信できるのです。

こうした独自の分析軸によって導かれたターゲティングを活かした広告配信は、潜在的ニーズの発見や、オタク性に紐づけた訴求力の高い施策の打ち出しなどにもつながります。こうしたプラットフォーマーへの広告掲載は、より視聴者や読者に寄り添った広告体験を提供するための手段といえるでしょう。

テクノロジーを活用して広告主と読者を繋ぐ | 講談社広告配信プラットフォーム OTAKAD

ユーザーのニーズやキャラクターに寄り添う施策を

これまでペルソナマーケティングは数々の成功事例を生み出してきました。ペルソナを精細に描けば描くほどニーズは絞られ、必然的に施策も改善できるというのが一般的なペルソナの考え方です。

しかし、昨今はWEB広告を介してあらゆるユーザーデータを取得し、その膨大なデータをAIによって分析できるようになっています。データが浮かび上がらせる行動履歴や商品購入への道筋は多岐にわたりかつ流動的で、私たちの施策の軸であったペルソナはそのひとつをとらえていたものであったことを教えてくれます。

もちろん、自社商品のペルソナを打ち出すことは重要です。一方で、そのペルソナを越えたところにあるニーズにも目を向けていくこと、ペルソナには落とし込めなかったキャラクター特性という可能性に触れることも念頭に置かねばなりません。その場合、WEB広告のプラットフォーマーが示すデータの分析結果は何よりもの判断基準となります。

プラットフォームごとのユーザーと向き合い、クリエイティブを考える

昨今のWEB広告の運用には、プラットフォームへの理解が必要不可欠です。各プラットフォームとそのデータ分析の特性を理解し、読者や視聴者のニーズに寄り添う配信手段やクリエイティブを実践することが結果につながります。
WEB広告の施策にあたっては、今回紹介した動画・音声、ゲーム、そしてメディアの集合体としてのプラットフォームなどに目を向け、ユーザー個々の特性をかんがみた広告を展開するよう意識してはいかがでしょうか。

>#1 アドネットワーク、DSP、DMP、ユーザーデータ...。WEB広告の基本とは



筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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