2020.12.28

新たな価値を創出する企業のSDGs活動とは by C-station──「講談社メディアカンファレンス 2.0」ビジネスプログラムレポート⑥

「講談社メディアカンファレンス 2.0」で配信されたビジネスプログラムから、今回は「新たな価値を創出する企業のSDGs活動とは by C-station」のレポートをご紹介します。
企業のSDGsへの取り組みが注目される中、SDGs先進企業のユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 アシスタントコミュニケーションマネジャー・新名 司さんと、女性誌としては世界初の"一冊丸ごとSDGs特集"を刊行し話題を集めた株式会社講談社『FRaU』編集長 兼 プロデューサー・関 龍彦をゲストに迎え、企業のSDGs活動のこれからについて考察します。


企業がSDGsに取り組むべき理由とは?

株式会社講談社 C-station チーフエディター 前田 亮(以下、前田) C-stationは、講談社がマーケッターや販促のご担当者に向けて役立つソリューションを提供するサイトです。"マーケティングの情報コンシェルジュ"と銘打ち、販促や広報、広告宣伝における指針になることを目指しています。

C-stationでは、重点テーマとして「企業のSDGs活動の支援」をメニューとしてご案内しています。SDGsの企業取り組み事例をご紹介した記事もあり、これまで14の先進企業に取材し、ユニリーバさんにもご協力いただきました。

本題に入ります。SDGsとは"持続可能な開発目標"の略で、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。昨今、企業の事業活動としてSDGsが急速に注目を集めていますが、企業がSDGsに取り組むべき理由は何でしょうか。それは、すべてのステークホルダーに影響をもたらす活動だからです。関さん、SDGsが企業活動に及ぼすことについて、代表的なものを教えていただけますか。

関 龍彦(以下、関) 投資家や株主は、ESG投資を見据えて企業がSDGsにどう取り組んでいるかをシビアに見るようになりました。また顧客はコロナを経て、これまで以上に各社がサステナブルな商品やサービスをしているかをチェックするようになりました。

さらに就活生は、社会貢献している会社でないと入社したくない、また会社側もそうした学生を採用したいという流れが起きています。社員や社長にとっては、SDGsを進めている会社のほうが社員の意欲が強い、離職率が低いというデータもあります。そのくらい、すべてのステークホルダーにとってやりがいがあるものであり、逆の言い方をすると、やらなければリスクが大きいのが現状だと思います。

ユニリーバとSDGsの歴史

前田 新名さん、ユニリーバはSDGs先進企業として知られます。御社のSDGs活動について、教えていただけますか?

新名 ユニリーバは40年ほど前からSDGsに取り組んできました。もちろんその頃にはSDGsというものは影も形もありませんでしたが、弊社には当時からSDGsにつながる思いがありました。

ユニリーバの創業はビクトリア時代のイギリスで、衛生的な習慣がないため病気で命を落とす方が多い状況を何とかしたいと考えた創始者のウィリアム・ヘスケス・リーバ卿が、誰でも使える「サンライト」という石鹸を発売したのが始まりです。この石鹸は、清潔であるということを当たり前にして、多くの人命を守ったと伝えられています。

ビジネスを通じて社会の課題を解決したいという創設者の思いは、画面右側の縁中央にある、現在のユニリーバのパーパスにも受け継がれています。パーパスとは、"目的"や"存在意義"という意味で、ユニリーバの存在意義として「サステナビリティを暮らしのあたりまえに」ということを掲げています。

これを単なるお題目にするのではなく、2010年にはビジネスとサステナビリティを両立する成長戦略として「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」を発表しました。以来、世界中で取り組みを進めています。これまでの経験は、2012年に弊社の当時のグローバルCEOポール・ポールマンが、国連のハイレベル・パネルに民間企業から唯一参加したことで、SDGsの草案作成にも生かされたと聞いています。

 SDGsの草案にも貢献されていたとは、あらためて驚きました。

「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」とは?

前田 「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」について、詳しくご説明をお願いできますか?

新名 「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン」は、「すこやかな暮らし」「環境負荷の削減」「経済発展」の3つの分野で約50の具体的な数値目標を掲げています。このプランの目標を達成すれば、環境負荷を減らし、社会に貢献しながらビジネスを成長させることができます。また、SDGsの17項目のほぼすべてに貢献できるようなデザインになっています。

たとえば、「すこやかな暮らし」では石鹸を使った手洗い、「環境負荷の削減」ではCO2の削減、「経済発展」では女性のエンパワメントや、原料に使う農産物をフェアトレードで仕入れることも実行しています。

 幅広く実行されていますが、ビジネスも成長できる点が大事です。地球のためにいいことをやっていくには、企業自体もサステナブルでなければならないですね。

前田 プラスチックへの取り組みについて教えていただけますか?

新名 プラスチックは軽くて丈夫で衛生的な、大変便利な素材ですが、廃棄されることが大きな課題です。

ユニリーバは全世界で、製品開発にあたって3つのアプローチをとっています。1つめが、プラスチックの使用量を減らす取り組み「レスプラスチック」。2つめが、プラスチックの循環利用を進める「ベタープラスチック」。そして3つめが、脱プラにあたる「ノープラスチック」です。日本でもこの枠組みに沿ってパッケージの軽量化などを進め、昨年1年間でプラスチックの使用量を100トン以上減らすことができました。

国内の日用品、化粧品業界の中では、かなり規模の大きい取り組みをしている自負がありますが、これまでは製品面での取り組みが中心で、回収再生に関わる活動があまりできていませんでした。そこで、11月2日から新たに始めたのが「UMILE(ユーマイル)プログラム」という活動です。

ユニリーバの新プログラム「UMILE」について

新名 「UMILEプログラム」は、普段の買い物の中で気軽に、しかもお得に、環境にやさしいエコ活ができることを意識したプログラムです。UMILEというポイントを貯めながら、プラスチックの使用量削減やリサイクルに取り組むことができます。

前田 買って貯めて、リサイクルして貯める。わかりやすいですね。

新名 UMILEはリサイクルグッズやLINEポイントに交換可能したり、ユニセフなどの団体に寄付したりすることができます。ぜひこの機会に貯めていただければと思います。

 UMILEプログラムに関しては、SDGsをリードしてきたユニリーバさんならではですし、他の企業さんも巻き込んだ素晴らしい取り組みだと思います。『FRaU』12月売りのSDGs号でも取り上げさせていただきます。

前田 新名さん、これまでの御社でのSDGsの取り組みは、事業活動へのシナジーなど、どのような成果や効果がありましたか?

新名 世界全体でみると、SDGsにしっかりと対応しているブランドは、それほどでもないブランドに比べて8割近く早く成長しているという実績があります。SDGsには、ブランドの信頼を強める、成長を加速させる力があるとみています。また長期的には、リスクの低減やコスト削減にもつながると考えています。

講談社におけるSDGsの取り組み

前田 次に、講談社におけるSDGsの取り組みについて、『FRaU』編集長兼プロデューサーの関さんにお聞きします。講談社におけるSDGsとの本格的な関わりは、『FRaU』が始まりでしたが、FRaU×SDGsの現況と、講談社全体の現状を教えていただけますか?

 『FRaU』では、2018年12月号に女性誌としては初めて、1冊まるごとSDGs号を出版しました。何故出したのかをよく聞かれるのですが、理由は大きく2つあります。

1つは、私自身がずっと女性誌をやってきて、社会的なことや地球のためになることというテーマで何かできないかな? と思ったときに、SDGsに出会ったのがひとつです。また、女性の認知率が低いということがわかり、『FRaU』という雑誌がワンテーママガジンで1冊やることで、日本の女性の認知や理解が高まる可能性があるのではないかと思い、取り組むことにしました。

その1冊目が雑誌としては珍しく重版がかかるなど好評で、これまでに4冊のSDGs号を出しました。今年は11月27日売りでSDGsマネー、12月には3年目となるSDGs号を出すことが決定しています。おかげさまで、刊行を重ねるほどにタイアップなどでご一緒いただく企業様も増えています。

前田 C-stationへの資料請求と問い合わせから、パートナー協賛につながった例もありましたね。

 リマテック東北様よりC-station経由で問い合わせがあり、7月発売号でタイアップを掲載させていただきました。同社が展開する「ATARA」という、通常は廃棄される原料を利用し、ドレッシングやクッキーを製造しているプロジェクトをご紹介しました。

前田 右側の「FRaU×SDGs共創カンファレンス」とはどんなものですか?

 パートナー企業様とのお付き合いに関しては、タイアップを掲載した雑誌を出すだけで終わりとは思っていません。SDGs号の発売日には、最近はオンラインの場合が多いですが「共創カンファレンス」というものを開催しています。

こちらでは最新のSDGsの状況がわかるセミナーを開催し、企業関係者のみなさまが繋がっていただくこと、それによりコレクティブインパクトを生むのが目的です。『FRaU』はそのプラットフォームになれたらと思っています。

前田 講談社のメディアでは、『FRaU』がSDGsの先駆けでしたが、メディアに限らず講談社が展開しているSDGs活動についても教えていただけますか。

 まずは講談社の絵本『もったいないばあさん』による、インドでの活動をご紹介します。2018年より環境、衛生教育等を目的として、この絵本の読み聞かせをインドで展開しています。

前田 こちらはキャラクターが起用されているケースですが、新名さん、キャラクターを使った環境活動というのはいかがですか?

新名 もったいないばあさん、というネーミングと見た目が最高ですね。キャラクターを使うことで、お子さんにもわかりやすく楽しく伝わりますし、おうちの方にも波及効果があると思います。

 読み聞かせのキャラバンでいうと、講談社ではインドより先立って日本でも、1999年から「おはなし隊」という活動をしています。これはキャラバンカーに本を乗せて全国をまわり、子供達に読み聞かせをするというものです。SDGsの目標4番にある「質の高い教育をみんなに」を、講談社では随分前から取り組んでいました。

前田 キャラバンは20年以上続いているということですね。講談社のさまざまなメディアで展開されている、SDGsに関するいまの取り組みを教えていただけますか。

 幼児誌の『おともだち』『おともだち ピンク』では、ハローキティとのコラボで親子で学べるSDGsという連載が始まっています。男性メディアの『Hot-Dog PRESS(ホットドックプレス)』では「モテるSDGs」というタイトルで、40代男性に向けた情報を提供しています。

広告関連資料にある「マンガで伝えるSDGs」では、弊社のキャラクターを広告で使っていただく時に、SDGsの17ゴールのどこに当てはまるのかを、わかりやすくまとめています。さらに、『with』でもSDGsの連載がスタートしたり、『ViVi』でもページ数を長くとった特集が組まれたりと、講談社のさまざまなメディアでSDGsを発信するようになりました。

今年度に関してはSDGs委員会も発足しましたし、国連とメディアカンパニーのイニシアティブである「SDG メディア・コンパクト」に、今年の1月から講談社も正式に加盟しました。

前田 "『FRaU』ごと"から"講談社ごと"へと、全社ごとになって、いまさまざまな展開が始まっている状況ですね。

企業とSDGsのこれから

前田 ここまでユニリーバ様の取り組みや、講談社の現況に関してご紹介しました。新名さん、SDGsの観点で講談社に期待されることはありますか?

新名 SDGsは一社だけで頑張っても、一人だけで頑張ってもできない、多くの人が力を合わせて初めて達成できる目標です。BtoBでもBtoCでも強い発信力をお持ちの講談社様には、多くの生活者や企業の心を動かしていただいて、SDGsの大きなムーブメントを起こしていただけたらと思います。

前田 関さん、BtoBでもBtoCでも強い発信力という言葉をいただきましたが、『FRaU』あるいは講談社は、この先どんなことを目指せばいいか、お考えをお聞かせ願えますか?

 始めることや続けることも大事ですが、それを世の中に伝えていくことも大事だと思います。企業だけでやると、どうしても堅苦しかったり、伝わりにくかったりするので、そこがメディアカンパニーである我々の出番ではないかと。講談社にはさまざまなメディアがあるので、エンターテインメントの力を使って、企業様の素晴らしい取り組みを面白く、わかりやすく伝えることができると思います。それが、我々講談社にできるSDGsだと思っております。

前田 ありがとうございます。お二人から貴重なご意見と指針を頂戴しました。このことを念頭に、今後取り組んでいければと思います。本日はありがとうございました。

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