2020.11.30
10代が熱狂する"感情型メディア"が仕掛けるモチベーション革命とは──「講談社メディアカンファレンス 2.0」ビジネスプログラムレポート②
2020年11月4日に開催された、ライブ配信と事前収録を組み合わせたオンラインイベント「講談社メディアカンファレンス 2.0」。"出版広告の再発明に繋がるプログラム"が多数配信された同イベントの中から、今回はビジネスプログラム「10代が熱狂する"感情型メディア"が仕掛けるモチベーション革命とは」のレポートをお届けします。
10代、20代から圧倒的な支持を得る、サッカー専門ウェブメディア『ゲキサカ』。ECを始めた狙いや、その先に描く「選手たちと築くメディアの未来像」について語りました。
(左)株式会社Moonshot 代表取締役 CEO 菅原 健一さん
(右)株式会社講談社 第一事業局 ゲキサカ プロデューサー 石井 健太
石井 健太(以下、石井) No.1サッカー専門メディアの『ゲキサカ』が他と大きく違うのが、ユーザー属性です。年齢は10代、20代が中心で、サッカーをやっている部活生が大きな割合を占めています。
特に我々が丁寧に取り上げているのが「高校サッカー」と「大学サッカー」です。そのため、サイトトップのカルーセルでは、メッシや南野拓実などのスター選手と並んで"俺がいる"、ということが起こりうる媒体となっており、「ゲキサカで紹介されること」がアマチュア選手たちのひとつの目標であり、モチベーションにもなっています。
菅原 健一(以下、菅原) 活躍しているサッカー少年であれば、名前を検索したら、SNSアカウントよりも『ゲキサカ』が検索上位に表示される、なんてこともありそうですね。
石井 はい。ちなみに、これは数年前のエピソードですが、「高校サッカー選手権」で優勝した山梨学院の選手たちが記念撮影する際に、普通なら応援歌をみんなで歌ったり、「うおー!」と歓喜の声を挙げたりするのですが、その時は「ゲキサカ! ゲキサカ!」と叫んでいたんです。これは驚きましたね。
菅原 「優勝したぞ。ゲキサカに載れるぞ!」ということですよね。大会で優勝するモチベーションのひとつとして『ゲキサカ』がある。すごいことになっていますね。
石井 もちろん彼らは、サイトを見て情報収集もしているんです。しかしそれ以上に、"ここに載りたい"という気持ちを強く持っています。また、基本的に高校生やアマチュアに関しては、「メディアとして応援したい」という思いがありますから、ポジティブな紹介を心がけています。やっぱり、『ゲキサカ』を見に来てもらって、「サッカー楽しいな」「もっとがんばろう」と思ってほしいですから。
菅原 だから「ゲキサカ=感情型メディア」と称しているわけですね。同世代の選手の活躍に刺激を受け、友人が載っている姿に奮起する。その"熱狂(感情)"を生み出しているメディアが『ゲキサカ』なんですね。
石井 若い子たちは、本当に熱心にサイトを見ていてくれているんです。とある大会で現役プレイヤーにアンケートを取ったところ、「95%がゲキサカを見ている」と回答しました。さらに、ほぼ半数が毎日見ていて、朝起きたらチェックして、学校の休み時間、部活前、寝る前に見るのがルーティンになっていることがわかりました。彼らの生活の一部に『ゲキサカ』がある。こんなにうれしいことはないなと思います。
菅原 もはや、認知度調査をする必要もないレベルですね。私も色々なメディアのバイイングをする仕事をしていましたが、認知率が100%ある媒体はほぼないので、"かなり熱狂的なファン層を抱えているメディア"と言えると思います。
内容が充実していても、ユーザーは普通、なかなか毎日は訪れない。しかし『ゲキサカ』のユーザーたちは、自ら望んで毎日サイトを訪れて、しかも日に何回もチェックしている。これは本当に珍しいメディアだと思いますし、ユーザーとの距離感が非常に近いとも感じます。
高校生たちの"熱い思い"をサポートしたい! 「大学合同トライアル」イベント
石井 メディアとして、彼らのサッカーへの熱い思いを"サポートする"ことも我々のミッションのひとつだと考えています。情報発信もそのひとつですが、もっと具体的なカタチとして表現したい。そう考え、生まれたのが「高校生サッカー・大学共同トライアル -THE CHALLENGE- supported by 森永乳業」です。
菅原 これはリアルのイベントなんですね。
石井 はい。今年、新型コロナウイルスの影響を受け、サッカーはもちろん、多くの競技の夏の大会は中止となりました。突然、サッカーをする機会を失ってしまった高校生たちのショックは計り知れません。
特に、卒業を控えた高校生たちは「進路」の悩みも抱えることになりました。なぜなら、夏までに自分のプレーを対外的にアピールできなければ、大学推薦の道は断たれてしまうからです。例年ならインターハイ予選などにプロや各大学のスカウトが来て、そこで目に止まれば、推薦を得ることも可能でした。しかし、今年はアピールの場がない。
菅原 3年生にとっては、"今年"しか、ないわけですもんね。
石井 そこで彼らがアピールできる場所を用意してあげたいと思い、「高校生サッカー・大学合同トライアル -THE CHALLENGE-」というイベントを開催しました。一都六県、山梨含めた関東圏で各都道府県2日ずつ行い、450人くらいの高校生が参加しました。
大学のスカウトも20数校が各会場に足を運んでくれました。実際に入学するのは来年なので、まだ確定ではないですが、現状では20人ぐらいの学生が、大学の進路がほぼ決まったそうです。大学に入ってもサッカーを続けられる、という"喜び"はもちろんですが、一方でサッカー選手になることを諦めるための"区切り"として場を活用した子もいました。双方ともに、「こういうイベントがあってよかった」という声をいただくことができたことに、開催した意義を感じることができました。
菅原 これは、森永乳業さんのスポンサードで開催されたのですか?
石井 はい。私たちの趣旨にご賛同くださり、ご協力いただきました。
菅原 オンラインメディアも変わってきましたよね。ただ広告を出すだけではなく、メディアや一定の枠(イベントなど)をスポンサードすることで名前を出していくという取り組みになってきたと思います。
実際にイベントを開いて、かつそれを広告主さんが支援するというのは、とても有意義ですよね。森永乳業さんの反応は、いかがでしたか?
石井 アマチュアのカテゴリに協賛した経験は少なかったそうですが、学生たちが本気でボールを蹴っている姿を見て、「来年もやるならスポンサーを継続したい」というお声をいただき、大変うれしく思いました。
菅原 一瞬だけ目に触れる広告よりも、長期的な顧客との関係を構築できる可能性がイベント協賛にはあります。また、今回のように誰かに助けてもらった経験は心に深く刻まれるもの。飲料メーカーはもちろん、子供たちを応援するお母さんたちに向けた消費財メーカーや、自動車メーカーとの相性もいいかもしれませんね。
石井 参加した高校生にとっては、アンバサダーが長友選手だったことも、大きなモチベーションになったと思います。
菅原 長友さんといえば、"ミスター努力の人"。まさに適任ですね。諦めずにコツコツやってきてスターになった長友さんは、きちんと努力すれば報われることを体現した人であり、子どもたちにとって憧れの存在ですよね。
ですが、テレビCMに出演するような有名人である長友さんを、ウェブメディアでキャスティングするのは簡単なことではないですよね。どなたがキャスティングしたんですか?
石井 『ゲキサカ』編集部です。
菅原 すごい。メディアパワーがキャスティングでも発揮されたのですね。
石井 長友さんご自身が『ゲキサカ』をご存知だったのは大きかったですね。過去の話でいうと、長友さんの出身校・東福岡高校が優勝した際の記事を長友さんがリツイートしてくれたり。我々が「高校サッカー」に対して真摯に向き合っていることを理解してくださっていたので、その信頼もあったと思います。
購買につながる『ゲキサカ』のECサービス
石井 サッカーの相棒といえば、スパイクです。しかし自分に合ったシューズを選ぶことは容易ではありません。そこで、自分の足に合うかスパイクをパーソナルに選んであげて、情報と一緒に届けられるスパイク専門の「ECサイト」を立ち上げました。
『ゲキサカ』には、スパイクマイスターのKoheiさんという方がいまして、スパイクに関わる小売さんやメーカーさんで知らない人はいない、というほど有名なインフルエンサーです。これまで1000足以上のスパイクを履き比べてきた経験とノウハウを持つ、スパイク選びのプロフェッショナルです。
彼がすごいのは、足を見て「君の足に合うのはこれ」と適切なアドバイスが行えること。スパイクのバリエーションも知っているので、選択肢としての引き出しも多い。彼が選ぶシーンを見ていると、足の形やサイズもですが「ポジションはどこなの?」など、細かなヒアリングを重ねながら素材や形を決めていくんです。そして、みんな感動してそのまま買っていく。その一連を目にした瞬間、これはすごいなと思いました。
もし、彼の頭の中をオンラインサービスに落とし込めたら、デジタルを通してユーザーに適切なスパイクを届けられる。そう考え、スパイクのECサイト内には、「スパイク診断」というサービスも設けています。
菅原 スパイクマイスターのKoheiさんが監修されているのですか?
石井 彼が組んだロジックを我々がデジタル上で具現化したようなイメージです。利き足や足のサイズ、合わなかったスパイクなどを選ぶと3分ほどで診断結果が出ます。今履いているスパイクも悪くないけれど、本当はもっと合うスパイクがあるとか、気づきを提供できればと。『ゲキサカ』のECで買ってもらうにしても、店頭に行って試してみるにしても、「君に合ったスパイクでサッカーをがんばってね」というエールを込めて作りました。
菅原 東京にいると試そうと思えばすぐに試せますが、地方だと、そうはいかない。その方たちに、「えっ! こんなのあったんだ!」という驚きを届けることができそうですね。
石井 地方の学生さんもそうですが、寮に入っている学生はなかなか外出できないので、WEBで情報を得て、通販で買わざるを得ない。
菅原 しかも通販で買うときは自分の想像力でしか検索できないから、対面に近いようなアドバイスがもらえるのは本当にありがたいですね。
『ゲキサカ』自体が特定の人を応援し続ける。それに呼応して、見ている人たちが熱狂して、そういうループの中に商品がすっと入ってくる。企業がここに連携すれば、実購買につながるイメージが持てますね。
石井 取材を通じて彼らとしっかり信頼関係を作っているなかで、「あのゲキサカがすすめるのだから」というのは強いと思います。
ゲキサカが目指すものとは?
菅原 これから『ゲキサカ』は何を目指していきますか?
石井 まずはユーザーがいかにサッカーを楽しく、面白く、上手くなりたいという思いを持って我々らと関わってもらうかがいちばん大切だと思っています。
プロになりたい子もいれば、明日試合に出られるようになるために、がんばりたいとか、目標のレベル感も全然違う子たちに、パーソナルな情報やフィジカル的な何かを提案することで、その子たちが『ゲキサカ』を見て楽しくなってもらえたらいいと思うので、ECはあくまでも第一歩。その先にはユーザーさんからいただいたIDをもとに、トレーニングのメソッドや食事法を提供するのもいいですし、サッカーが楽しく、上手くなるための情報やサービスを提供していきたいです。
菅原 この話を聞く前は、サッカーってニッチな世界だと思っていました。でも冷静に考えると、プレイヤーも観戦者もサッカー人口はとても多いですよね。しかも寿命は伸びていくから、入った人たちは年々増えていき、家族や友達を巻き込みながら規模が大きくなっていくイメージがありました。今後広告など、どんな取り組みをしたいですか?
石井 私自身もサッカー経験者で、全日本少年サッカー大会に出た際、協賛されていたコカ・コーラさんからいただいたバスタオルを今でも使っているんです。高校時代に大塚製薬さんから貰ったエネルゲンの粉末をサッカーのときに必ず飲んでいたので、いまだにサッカーをするときに見つけると必ず選んでしまう。そんな風にサッカーのイベントとともに深く心に刻まれる商品が、サッカーをやっている子たちの中には必ずあるんです。
メディアと、サッカーのイベントを絡めながら、一緒にその子たちを応援してあげることで、10年20年先まで、クライアントさんのブランドが愛され続ける。そういった取り組みを多くしていきたいですね。
『ゲキサカ』の媒体資料はこちら