2019.08.20

日本の「ほんもの」を『FRaU』から発信。「Japan's Authentic Luxury」号 企画説明会レポート

令和元年11月1日、「Japan's Authentic Luxury プロジェクト」の活動を代表するマガジンとして、『FRaU』~「おしゃれな人」より「素敵な人」~日本発のラグジュアリーMade in Japan"LUXURY" ~世界が憧れる理由(仮)と題した一冊が刊行の予定です。7月18日(木)、この特集号の企画説明会および懇親パーティーが、オトノハカフェにて開催されました。「Japan's Authentic Luxury プロジェクト」とはどのようなプロジェクトなのか、その発足の経緯と『FRaU』が参画した背景についてレポートします。

1991年に創刊されて28年、ワンテーママガジンとして、さまざまな角度から「これからの憧れの価値は何だろう?」を追求しブームを作り出してきた『FRaU』。昨年3月からは、コンテンツに応じて雑誌やウェブなど最適な形を選ぶ、オプティマムなメディアとして新たにスタートしました。そんな中、昨年12月に発売されたSDGs特集号が注目を集め、今後も『FRaU』の軸となるテーマとして掲げられています。

そして、もうひとつの大きな軸となろうとしているのが、この「Japan's Authentic Luxury プロジェクト」です。
「メディアの役割も変わってきています。雑誌というメディア単体ではなく、日本の企業と一緒になって女性や日本を元気にしていく、新しい価値を共創していく時代だと思っています」と関龍彦FRaU編集長の挨拶からイベントは始まり、当該号の責任編集者である吉岡久美子より、『FRaU』とこのプロジェクトの関わりがどのように生まれたのかという経緯が紹介されました。

「デザインだけの服には興味がない。おしゃれな人より趣味のいい人」のコンセプトに共感

吉岡と「Japan's Authentic Luxury プロジェクト」の発起人であり、「AUXCA TRUNK(オーカ トランク)」というブランドを作っているテイラーアンドクロース株式会社代表、隅谷彰宏さんとの出会いは、昨年の冬のこと。新宿伊勢丹でとても着心地のよい服を見つけたことからだと言います。

「こんなに着心地がいい洋服が日本にあったんだと、心を奪われました。洋服が生まれる背景には素晴らしい理念があることを聞き、それはあらゆる業界でこれから不可欠な哲学だと確信しました。この理念を講談社として何か形にしなければ、そしてここにいらしている素晴らしい『もの』『こと』『サービス』を創出している皆さんと一緒に発展していけたらと思います」と吉岡が語り、隅谷さんへバトンを渡します。

隅谷さんは、赤坂で70年以上の歴史を持つ老舗テイラーの3代目社長。祖父はマッカーサー元帥や吉田茂といった政界人の、父は芸能界の方々のスーツを仕立ててきました。2001年からイタリアブランドの輸入代理店を始め、2016年に「AUXCA TRUNK」という自社ブランドを立ち上げます。このブランドを展開する中で思いついたのが「Authentic Luxury」というキーワードだと隅谷さんは言います。

元々、ファッションビジネスの不合理に疑問を持っていたという隅谷さん。委託取引の仕組みや雑誌のタイアップに寄せた姿勢などから、在庫過多やセールの常態化、低利益、借り入れの増大と、何をしているのかさっぱり分からないという状態に悩み、これからどんなブランドを作るべきか考えていたころ通っていたのが、慶應義塾大学大学院のシステムデザイン・マネジメント研究科(SDM)です。ブランディングをテーマに修士論文を書いているなかで立ち上げられたのが「AUXCA TRUNK」。2016年のコンセプトショップのオープンから始まり、現在は新宿伊勢丹で常設店舗として展開。50%近いリピートがあるブランドとして成長しているとのこと。

「洋服のデザインはもちろんですが、『AUXCA TRUNK』では心地よさを追求し、信念のある本物をデザインしました。周りの人に心地いい雰囲気を与えるような、そんなセンスのある素敵な洋服を作りたいなと思いました」

続いて、吉岡の心を奪ったその"心地よさ"のベースになっている考え方を、SDMで隅谷さんが学んだ白坂成功教授が語ります。

SDMでの学びが、「AUXCA TRUNK」のベースに

SDMでは、企業で働いている人たちがどうやって新価値を生み出していくかという、「日本型イノベーションの創出」について研究が進められています。

「もの作りはつい機能性を追及しがちですが、隅谷さんの服作りは人間中心に考えられています。しかも着る人だけではない、生地を作る人、デザイナー、それぞれの考えを俯瞰的にとらえ、双方をつなぐということをやっています。さらに、ものごとを真正面から捉えるのではなくて、多様性を活かしていきながら人とは違うアプローチで物事をみていくこと、つまりリフレーミングが取り入れられています」と白坂教授が説明します。

この、人間中心のデザイン思考と、全体的に捉えるシステム思考を持ち、リフレーミングを繰り返すことを活用して生まれたのが「AUXCA TRUNK」です。

日本のラグジュアリーとは

隅谷さんにマイクが戻りました。
「SDMで学び修士論文を書き終えたとき、日本からはラグジュアリーブランドが生まれていないということにハッとしました。ラグジュアリーって何だろうと考えました」

2020年には、約120兆円のラグジュアリーの世界市場が予想されており、そのうちファッションが40兆円ぐらいになると言われています。隅谷さんは、日本のラグジュアリーマーケットは、一部を除きほとんどが欧米のラグジュアリーブランドで埋め尽くされているのではと考えました。

ラグジュアリーを日本の辞典で調べると「高価なもの」「贅沢」「華美」というような、ちょっとネガティブな印象も書かれていますが、英英辞典で調べると、「とても心地がよい」「上品な様子」「めったに得られない喜び」と書かれています。日本と欧米ではラグジュアリーの捉え方が違っているという気づきがあったそうです。

「僕のビジネスパートナーで、靴のブランドを持っているミラノ貴族の友人に、『ラグジュアリーって何なんだ』と聞いたとき『ラグジュアリーとは物ではなくライフスタイルだ』って言い切ったんですね。彼はたたずまいや振る舞いが素晴らしい人間で、なるほど、これが本物のラグジュアリーなのではないか、本当に価値のあるものというのは、ものに限らないのではと気づきました」と隅谷さん。

日本では本当に価値のあるものを「ほんもの」と呼びます。そこで隅谷さんは「ほんもの」を「作り手が心からよいと思うものを追求する信念を持って創造したものに対して、その価値を売り手、買い手、そして関わる全ての人達が体感し、理解し認めて初めて成立する」と定義づけしました。

「『ほんもの』こそ日本のラグジュアリーでは、という発想のもと、でてきたのが『Authentic Luxury』です。何かぎらぎらした豪華さだけをラグジュアリーと言ったりすることもあれば、『ほんもの』なのにちょっと輝きがないものはラグジュアリーとは呼ばれなかったりすることもあります。私たちがこれから目指していかなければならないものは、そのラグジュアリーとほんものの真ん中にある、『Authentic Luxury』ではないでしょうか」

「今日本では、ほんものが正当に評価されず、欧米を意識したものまねが根付き、自ら生み出すことや自分らしさを表現する、この大切さが薄れて、結果的にほんものが失われているように思います。日本ならではと意識するあまり、すぐ和に戻ってしまう傾向もあります。おそらく平安時代から戦前までは日本にも根付いていたはずの貴族文化が、今は失われているかと。先ほど白坂先生からお話があったように、リフレーミング、つまり日本文化をあらためて定義することに、チャンスがあるのではないかと考えています。世界が日本文化に非常に興味を持っている今、日本のラグジュアリーを発信する好機ではないでしょうか」

2018年、ミラノサローネに「AUXCA TRUNK」を出展したところ、動員は1000人前後でしたが「ものすごくラグジュアリーを感じた」「すごいJAPANを感じた」という声が非常に多かったそうです。先述のイタリア人貴族から「こんなにミニマムにそぎ落としたものは、ヨーロッパ人は絶対作らないよ」と言われ、今の私たちが生み出すことで、十分JAPANというものを表現できるのだなという、気づきを得られたと隅谷さんは言います。

最後に「何かのマネごとや競争をするのではなくて、自分が心からよいと思える唯一無二の物事を、自らの力で生み出すことに価値を求め、人々が自分らしい生き方に誇りを持って、心から幸せと思える社会にしたい。物はあふれているけどワクワクすることが少ない、そんな時代に育ってきた我々の世代が、夢や希望にあふれ、熱く沸き立つ時代を生きようという気運を、今こそ持つべきではないかと思います。『Authentic Luxury』という道こそが、成熟した日本が輝くための原動力になると確信しています」と締めくくられました。

「Japan's Authentic Luxury」特集号、企画内容

「今を生きる私たちが大切にしたいと感じるものでなければ、『ほんもの』ではないと確信しています。さらにこの『ほんもの』を世界の言葉にしていきたい。当該号では、ファッション、美容、食、おもてなし文化といったみんなが知りたがる幅広いジャンルに光を当て、その美しい輝きを楽しんでいただきたいと思います」と、吉岡から企画説明が続きます。

表紙は、世界のラグジュアリーを知る後藤久美子さんが登場予定。さらに世代を超えて圧倒的な人気を誇る長谷川潤さんに、心地いい時間を過ごすために感じていること、思うこと、考えることなどを中心に聞いていきます。その他、ビューティジャーナリストでエッセイストの斉藤薫さんが美容の日本ラグジュアリーについて語る記事や、日本の5つ星ホテルの魅力を著名人が語る記事、おもてなしの総合芸術、世界中が注目する進化し続ける和食についてなど。もちろんインテリア、ライフスタイルなど日本のラグジュアリーとは何かということについてさまざまな角度からアプローチしていく企画が用意されています。

「何度も見て読みたくなる、ワクワクドキドキする高揚感や満足感溢れる内容をお届けしていきたいと思います。ぜひご期待ください」と吉岡が語り、スピーチがバトンタッチ。最後に、講談社第二事業局コミュニケーション事業第二部部長の佐藤栄より、協賛メニューが案内されました。

「私たちは、このプロジェクトに共感し、大切に思っております。ぜひ世の中ごと化していきたい。今日はそのための仲間づくりの場だと考えております。世の中ごとの実現は、『FRaU』一誌で叶えられるものではなく、ぜひ皆さまのお力添えをいただければと考えております」

『FRaU』に関する具体的な協賛メニューは、中心となる従来の広告的なメニューも、クライアント様という呼び方をせずに、よりこのプロジェクトに深く関わっていただきたいという意味を込め、パートナー協賛という名前がつけられています。さらに本誌の買い上げ協賛、編集企画協力など、一緒に盛り上げていけるような新しい形の協賛メニュー、キュレーションメディア・アンテナとの提携により広告的価値を上げていけるようなメニューも考えているとのこと。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

「このプロジェクトは令和への改元、そしてオリンピックという、否が応でも日本が世界から注目される年に立ち上げられました。『FRaU』の成功は、今後のプロジェクトを続けていくかどうかの試金石になるのではと。今日いらっしゃっている皆さまと何か新しいムーブメントを作っていく動きができればと思っています」と佐藤が締めくくり、その後は、カフェの1階にて歓談・交流の時間帯となりました。

「Japan's Authentic Luxury プロジェクト」の思いに共感し、スタートに参画することになった『FRaU』。日本が育んできた美意識や技術による「ほんもの」を、『FRaU』を通して日本はもちろん世界に発信していきたいという熱意が、随所から伝わるイベントでした。

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