2019.02.26

Tokyo Gets・海外統括が語る④「巨大マーケットを視野に、新たな取り組み」

映画、マンガ/アニメなどのコンテンツとのタイアップを専門に扱うエージェンシーであるトキオ・ゲッツだが、2016年から自社でイベントを主催している。それが『ハローキティラン』。タイアップ企画のコーディネイトと並行し、イベント主催に注力している狙いをトキオ・ゲッツの山田奈津子さんにうかがった。

トキオ・ゲッツ インターナショナルマーケティングディビジョン マネージャー山田 奈津子(やまだ・なつこ)

2005年トキオ・ゲッツ入社。国内事業として映画のタイアップ企画を手掛けた後、2012年の台湾オフィス開設時より海外事業に参画。2015年よりバンコクオフィスの支店長として駐在しつつ、台湾、インドネシア、中国、フィリピン、ベトナムを飛び回り、海外事業を統括する。

――山田さんだけでなく、(トキオ・ゲッツ代表取締役の)原さんのお話でも、何度か話題に上った『ハローキティラン』について教えてください。

山田 いわゆる"ファンラン"のイベントです。ファンランというのはマラソンイベントで、しゃべったり楽しんだりしながら、3kmや5kmといった短い距離を走ってもらう。いや、歩いている人のほうが多いですね。で、要所、要所に、たとえば、スイーツランであればお菓子があったり、バブルランであればバブルマシンがあり、スペシャルな体験ができる。『ハローキティラン』というのは、キティちゃんがテーマのマラソンイベント。参加される方は、皆さん、キティちゃんのおそろいのTシャツを着ています。

――自発的におそろいのTシャツを着て参加しているんですか。

山田 Tシャツ、バッグ、メダルなどがチケットに含まれているんです。それを着たり持ったりして、キティちゃんのデコレーションがいっぱいのルートを歩く。走らないですね、皆さん。写真を撮りながら歩いています。で、それをSNSに上げて楽しんでいらっしゃいます。

――それをアジア各国でやっていると?

山田 最初はバンコクでした。タイはすごくキティちゃんの人気があるので。そこで第1回目を開催したところ、参加者が5000名ぐらい集まったんです。これは面白いということで、その後、ベトナム、インドネシア、フィリピン、中国と、複数エリアで展開しています。

――アジア各国でも国民性や嗜好性はそれぞれとのお話でしたが、どこの国でも『ハローキティ』は人気があるんですか。

山田 基本的には人気があります。日本のキャラクターとして人気があるだけでなく、たとえばフィリピンでいうと、レディー・ガガさんが"キティちゃん好き"で知られていたり、ハリウッドスターの「キティが好き」という発言で知っていたりと、認知度が高いですね。それこそ世界的なアイコンです。

SNS時代以前と比較すると、イベントという広告メディアの価値は一変している。より深くターゲットにささるコンテンツでありつつ、拡散という速報性と周知性をも備えるようになった。参加者5000名規模のイベントであっても、世界中の『ハローキティ』ファンにリーチするといっても過言ではない。ハリウッドスターの支持層から、これほど『ハローキティ』ファンを取り込めるのも、情報の洪水から選択的に情報取得するのが当たり前のSNS時代ならではの現象だろう。

――今後も継続的に主催されていくとのことですが、中長期的な展望もあっての施策でしょうか。

山田 アジアではスポーツ人口とキャラクター人気が右肩上がりに上がっているので、キャラランを事業として大きくしていきたいと考えています。以前目にしたニュースですが、"2020年には週1回運動する人が7億人以上"という目標を中国政府が掲げているらしいんです。桁が違う。たしかに、アジアの皆さんも健康意識が高まっていて、ランニングなど外で活動する人は増えているので、キャラランのようなイベントを定期的にやっていける土壌は見込めます。日本にはキャラクターがたくさんいるので、有名なキャラクターだけでなく、いろんなキャラランができればいいですね。

――タイアップ専門エージェンシーとして成長を遂げてきたトキオ・ゲッツさんですが、これまでとは違った事業展開やビジネスモデルになりますね。

山田 私たちは、キャラクターの版権元でもないし、現地でライセンスを保有しているわけでもありません。日本でのポジショニングを現地でも取れるように、エージェンシー業務は突き詰めていきたい。いっぽうで、エージェンシー業務というのは、両クライアントを抱えたような事業になるので、自分たちが主体的に動けるものも保有しておきたいんです。自分たちが主催者となるキャラランのような。このふたつを確立できれば、あとは、それをどんどん横展開していけばいい。自分たちのイベントがあり、そこにキャラクターがついていて、さらに、協賛企業さんたちが、そのキャラクターをプロモーションに使っていただく、みたいな。それができれば理想的ですね。

――現在のところ、海外進出はアジア各国に限られていますが、当然、欧米のマーケットへの関心もあるのではないですか? フランスなどをはじめ、日本のマンガ/アニメは世界中にファンがいますから。

山田 すごくチャレンジしたいですね、ヨーロッパとか。『ハローキティラン』なんかは、アメリカでやってもいいでしょうし。人材がじゅうぶんいればチャレンジしたいところですが、まずはアジアでしっかり成功した後に、そのパッケージを持っていければ。

前述のとおり、イベントというのは、コンテンツであると同時に、かつてより格段に魅力的な広告メディアとなりつつある。タイアップ専門エージェンシーであるトキオ・ゲッツにとって、イベントの主催が今後のマーケット開拓のキーとなりそうだ。日本発のマンガ/アニメという強力なコンテンツを背景に、ファンランだけでなく幅広いイベントのオーガナイザーとしての進化も期待させてくれる。超巨大なマーケットを視野に入れ、新たな広告ビジネスのスキームが生み出されれば、それは、クライアント側の視点から見ても、大いに歓迎すべきことだろう。

トキオ・ゲッツ 公式HPはこちら

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら