2022.06.30

SNS動画のKPI設計とPDCAの回しかた|SNS動画時代を生き抜こう<第3回>

この連載では、SNSでの動画活用がますます一般的になるなかで、利用者が特に多いTwitterやInstagramで支持される動画を制作、投稿するために押さえておくべき基礎知識をお届けします。

第3回は、KPI設計とPDCAの回し方についてです。SNSアカウントをグロースさせるためには、目標に対する指標となるKPIを設定し、KPI達成に向けてPDCAを回していく必要があります。SNS運用においてどのようにKPIを設定すればいいのか、そしてKPI達成に向けて効果的にPDCAを回していくにはどうすればいいのかを解説します。

KPIを設計する前に、まず「KGI」を明確にしよう

Twitterの「アナリティクス」やInstagramの「インサイト」では、フォロワー数やいいねの数、シェア数や保存数、動画の再生数、インプレッション数やリーチ数など、さまざまな指標をチェックすることができます。

動画運用のKPIとなる指標は、それらの中から設定することが多くなります。フォロワー数やいいね数、動画の再生数といった数字はタイムラインやプロフィールにも表示されるため、わかりやすい目標としてKPIにするケースが多いかもしれません。

ただ、必ずしもフォロワー数やいいね数、再生数が重要指標になるとは限りません。

KPI設定では、「そもそもこのSNSや動画は、何の目的で運営・投稿しているのか?」という視点を見失わないようにすることが大事です。SNSアカウントが一人歩きして本来の目的とかけ離れてしまうと、サービスや商品に対する顧客イメージが変化してしまうことがあります。そしてそれは売上ダウンや顧客離れというマイナスの結果にもつながりかねないのです。

SNS動画の運用には、KPIを決める前に、まずKGIを明確にすることが非常に重要です。KGIは「売上アップ」なのか、「認知拡大」なのか、それとも「潜在顧客の囲い込み」なのか。そしてそのKGI達成に向けて、SNSはどんな役割を担うのかを把握する必要があります。KPIは、あくまでも最終目標であるKGI達成のための中間的指標であることを認識しておきましょう。

KGIから逆算してSNS動画のKPIを設定する

KPI設計をするにはKGIを明確にする必要があります。KPIを設計する際は、SNS運営の目的をふまえ、KGIから逆算して検討するとよいでしょう。では、KGIから逆算してKPIを設計するとき具体的にどのように考えればよいのでしょうか。下はInstagramのインサイトにおけるわかりやすい例です。

例1:KGIが「ECサイトでの売上アップ」である場合

(1) SNS運営の目的を「ECサイトへの誘導」とし、ECサイトへのリンククリック数、クリック率をKPIとする。

(2)まずECサイト自体の認知を広げたいので、SNS運営の目的を「ECサイトの認知拡大」とし、投稿のリーチ数、動画再生数、フォローされた数といった指標をKPIとする。

例2:KGIが「ファン拡大」である場合

フォローされた数のほか、投稿へのエンゲージメント数(いいね数、リツイート率、シェア数、保存数)をKPIとする。あわせてフォロワー以外へのリーチをKPIとする。

KPIは複数あっても構いませんが、アナリティクスやインサイトで取得しうる多くの数値をKPIとして追いすぎると施策が複雑化してしまいます。そしてその結果、最も大事な目的を達成できないことが少なくありません。最重要視するKPIは何なのかを明確にして、そのKPIを達成するために何をすればいいのかを考えることが大切です。これでPDCAが回しやすくなり、最短距離での目標達成を目指すことができます。

一方で前回お伝えした通り、SNSのアルゴリズムを把握するためにさまざまな指標を見ておく必要性はあります。たとえば、インプレッション数やリーチ数とリンククリック数などは、数値が連動している場合もあります。設定したKPIに関連すると思われる数値は、一緒にウォッチしておくとよいでしょう。
ただしそれらは参考値であって、最重要KPIを中心にPDCAをまわすことが基本であることは変わりません。

KPI達成に向けたPDCAサイクルの回し方

KPIを達成するためには、やみくもに投稿を続けるのではなく、アナリティクスやインサイトで数字を見ながらPDCAサイクルを回す必要があります。PDCAサイクルを回す頻度は、投稿頻度にもよりますが、週単位もしくは月単位で行うのが一般的です。

SNSでPDCAサイクルを回す場合は、数値を見ながら自分たちで仮説を立て、その仮説を持って次の動画制作とSNSにおける運用に活かすことを繰り返します。それでは具体的にどのようにPDCAサイクルを回せばよいか、例を挙げて解説します。

例1:KPIが「動画再生数」の場合

PLAN(計画):よりタップしたくなるようなサムネイル表現に変更する
DO(実行):サムネイルを変更した動画を投稿する
CHECK(評価):投稿から1週間(もしくは1ヵ月)後、変更以前との数値の差をチェックする
ACTION(改善):数値が改善されている場合はそのまま継続。改善されなかった場合は別パターンのサムネイルを検討する、もしくは、別の施策を検討する

例2:KPIが「フォロワー数」の場合

PLAN(計画):投稿する動画の最後に、フォローを促す画像(映像)やコピーを加える
DO(実行):表記を加えた動画や画像を投稿する
CHECK(評価):投稿から1週間(もしくは1ヵ月)後、変更以前との数値の差をチェックする
ACTION(改善):数値が改善されている場合はそのまま継続。改善されなかった場合は画像やコピーを変えたり、動画自体にもっと連続性を持たせるなどの別の施策を検討する

まったく新しい施策を計画する際は、過去の数値の変化から仮説を立てるだけでなく、競合アカウントで数値が伸びている投稿やトレンドとなっている投稿などを参考にするのもひとつの手です。それらの投稿のどの要素が優れているのかを分析して、自分たちのコンテンツづくりに反映させるとよいでしょう。

CHECKの段階で極端に良い数字や悪い数字が出たときには、アルゴリズムの変化だけでなく、季節要因、タイムラインを埋め尽くすような大きな事件や出来事といった外的要因も考えられます。KPIにしている指標以外に大きな変化があった数値はないか、SNSアプリのアップデートやリニューアル、アルゴリズム変更に関するトピックはないかなど、チェックしてみましょう。

また設定したKPIを無事に達成できたとしても、それがKGI達成につながらないケースもあります。その場合、そもそもKPIの目標数値の設定が低かった可能性もありますし、よりKGIにつながる別のKPIに設定しなおす必要があるかもしれません。KPIの結果がKGI達成につながっているかどうか、しっかりとそこまで数字を追うことも欠かせません。

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