2024.04.16

「何をしたらいいのか」手探りからのスタート。伝え方を模索してきたセブン&アイ サステナビリティ推進部の現在地

FRaU 関編集長のSDGs Talk vol.1(前編)
今回より『FRaU』編集長 兼 プロデューサー・関龍彦が、SDGsを推進する様々な立場の方と対談する企画、「FRaU 関編集長のSDGs Talk」をスタートします。vol.1では、前後編の2回に分けてお送りします。

*この記事は姉妹サイト「講談社SDGs by C-station」で2024年3月にアップされたものです。

『FRaU』が女性誌として初めてSDGs特集号を打ち出した時2018年、SDGsの認知度はわずか14.8%でした。それが2023年、91.6%にまで上がり、「聞いたことがない」という人はほぼいないという状況になっています。

SDGs推進の部門を持つ企業は珍しくなくなりましたが、「社内で重要だと理解してもらえない」「経済合理性を問われる」「発信方法がわからない」などなど、悩みを抱える担当者は多いのではないでしょうか? 『FRaU』が2019年よりパートナー企業として共に取り組みを進めてきたセブン&アイ・ホールディングスも同様だったそうです。

同社サステナビリティ推進部の小野真義さんが直面してきた数々の悩みと、現在に至るまでの試行錯誤を、『FRaU』編集長 兼 プロデューサー・関龍彦とともに振り返ります。

「サステナビリティ」を「推進」するってなんだ?

関 セブン&アイ・ホールディングスさんに初めて『FRaU』に出稿いただいたのは、2019年の『OCEAN号』からでしたね。

FRAU_OCEAN_SDGs表紙2

『FRaU SDGs MOOK OCEAN 海に願いを。』2019年10月

小野 ちょうどその直前の2019年3月に、弊社のCSR統括部という部門の名称が「サステナビリティ推進部」に変わりました。私はそのタイミングで配属されたのですが、その当時の上長と「何から始めたらいいんだろう?」と手探り状態でした。

ですので、手段を厳選せずにできるだけ幅広くチャレンジしていこうと。そんな時にちょうど『FRaU』さんにお声かけいただき、パートナーシップが今まで続いています。

小野 真義さん(株式会社 セブン&アイ・ホールディングス ESG推進本部 サステナビリティ推進部)

関 当時すでに何年もSDGsをやってこられたような安定感がありましたけど(笑)、そんな背景があったんですね。

小野 それまでのCSR統括部というのは、持ち株会社であるセブン&アイ・ホールディングスが、事業会社の取り組みを取りまとめて、情報開示し、コミュニケーションするための部門でした。そういう意味では「統括部」という名称に違和感はありません。でも「サステナビリティ」を「推進」するって一体なんだ? と。

関 当時は社内の理解を得ていくのがかなり難しかったのでは?

小野 そうですね。当初は、社内の内線で部署名を聞き取ってもらえなくて、『サス......なんですか?』って言われてました。根気強く「サ・ス・テ・ナ・ビ・リ・ティ」って繰り返すと結局「サスなんとかの小野さんです〜」って感じで(笑)

幸いにして、経営トップの意識が非常に高く、当部の活動を全面的にバックアップしてくれたことは大きいです。2019年5月に策定された環境宣言『GREEN CHALLENGE 2050』も、経営トップの思いがあったからこそ社内へのコミュニケーションがスムーズでした。

「世の中の変化と社内意識のギャップ」間に立って社内で進言する力

関 トップの推進力は本当に大きいですね。結局、SDGs推進部門の担当者の皆さんは、上からは期待されるものの、下からは経済合理性がないことを追及されて板挟みになり、孤独になってしまうケースが多いように思います。

小野 地域社会で事業をさせていただいていますので、地域におけるお困りごとの解決には創業来取り組んできました。世の中の環境変化はもちろんですが、普段接するお取引先様や、投資家の方々と幅広く会話する中でより強く意識するようになりました。

一般論になりますが2019年当時、企業の多くは、短期・中期の目標は設定できるのですが、「こんな世界を目指す」と理想からバックキャスティングすることにはあまり馴染みがなかったと思うんです。

それは30年後、50年後なんて自分が生きていないかもしれないのに、実現不可能かもしれない約束事にコミットするなんて逆に不誠実じゃないか? と考えていたのだと思います。でも時代は変わりました。

今、東証市場のプライム市場では気候変動に係るリスクと機会についての情報開示が実質的に義務化されていますし、世界中で新しい規制がどんどん出来て、取引ができないリスクまで出てきました。そういうニュースが溢れています。

サステナビリティの領域は、世界中で起きていることを広くキャッチするのはもちろんですが、その一つ一つが奥深く難解です。「世の中の変化に対して、社内意識のギャップが生じている」という危機感を誰よりも持って社内に進言し、推進していくことが役目だと考えています。

関 龍彦(講談社 『FRaU』編集長 兼 プロデューサー)

関 今、大学生への仕事選びに関するアンケートでは、企業の社会課題解決への取り組みを「意識する」と答えた学生が7割にまで上ることがわかっています。これから入社してくる社員や、これから育つ顧客のことを考えても、SDGsに取り組まないことにはリスクが大きくなってくる。

小野 おっしゃる通りだと思います。小学校の指導要領にもSDGsやサステナビリティが入ってる時代です。それを無視することはビジネスの舞台から退場せざるをえない事態になる、それくらいの意識でいます。

社内にも、社外にも、SDGsは「伝え方が大切」

関 SDGsの取り組みを推進していく上で悩んでいる担当者さんも多いと思うのですが、小野さんは社内外への「伝え方」で意識したポイントはありますか?

小野 SDGsの領域はとにかく「伝え方が大切」だと考えています。

まず社内へのコミュニケーションで気をつけたのは、「特別なこと」「難しいこと」だと受け取られないようにすることです。

SDGsって特別なことではなくて、当たり前の理想が書かれていると思います。今やっている業務の延長がSDGsの目標達成に「つながる」と意識することが大切です。普段の接客などで商品の情報を伝えることやペットボトルの回収活動もそうです。無意識にやっていたことを意識的にやるための紐付け、というんでしょうか。

社外、つまりお客様に対しては「うちの会社こんなにいいことやっています!」と発信するのは、ちょっと日本の文化にはそぐわないなと思っていて......まさに、『FRaU』さんの誌面を使わせていただいたことで、ストーリーをうまく伝えることができたと思います。これまでの広告主・媒体の関係性とは全く異なっていて、一緒に意見を出し合いながら誌面を作り上げていった感じがありました。

関 そう言っていただけてありがたい限りです。僕が忘れられないのは2020年1月号です。一見純広告のようなのですが......

小野 ちゃんと雑誌全体のテーマに沿って読んでいただけるように工夫したんですよね。


『FRaU』2020年1月号掲載の企画広告

関 だから、世界観を統一できるように「ページの右上のロゴは、通常のカラフルなバージョンじゃなくて白抜きのものがいいんじゃないですか」と、企業さんのロゴのクリエイティブにまで口を出すという、前代未聞のことをしてしまったのですが、小野さんはあっさりと「検討してみます!」とおっしゃって(笑)。

小野 通常の出稿であれば企業が枠を買って、言いたいことを詰め込む、という手法なんでしょうけど、「それじゃ伝わらない」と思っていました。

SDGsは「みんなで取り組む」が大事

関 我々としては、セブン&アイさんのように「利用したことはない読者はいない」くらいの知名度の企業さんに誌面に登場いただくことには、非常に意義を感じています。やはり、SDGsというテーマがグッと生活に近くなると思うんです。

小野 ありがとうございます。私たちは『FRaU』さんの「自分ごと」「日常生活にある身近なことから世界を変える」という部分に共感しています。広告換算がどうとか、どれくらいの人にリーチできるか、という指数も重要ですが、それだけだと企業のSDGsやサステナビリティの発信は成り立たないと思います。

『FRaU』さんはこれまで「防災」や「平和」など難しいテーマをさまざま取り扱われてきたと思いますが、しっかりと考えを持ってやられているので、取ってつけた感がない。私の81歳の父に『FRaU』の話をしたら「『平和』なんて正面から真面目に取り扱える雑誌ってすごいな!」って驚いてました。

関 しかも女性誌ですからね。特にそういうイメージがないと思います。

小野 私たちのような企業を集めてセミナーもやられていますよね。この前もカンファレンス(FRaU共創カンファレンス2023→2024)にお邪魔して、情報交換が大変勉強になりましたが、国連の広報センター長の根本かおるさんがいらっしゃって、加えて行政やNPO、NGOの方もいて......そんな取りまとめができる雑誌、他にないと思います。

2023年12月に開催された『FRaU共創カンファレンス2023→2024』の様子

関 僕は常々、「みんなで取り組む」というフレームワークこそがSDGsの楽しいポイントだと思っているんです。それが面倒だと感じる方もいるかもしれないけれど、いろんな人の意見を聞くことは純粋に面白いし、課題の解決を目指していくためには不可欠なことです。

そういえば、セブン&アイさんとお取り組みを始めたばかりの頃、当時の部長さんがこんなことをおっしゃっていました。「コンビニは50年ほど前に日本の生活を変えた。今はSDGsという観点から日本の生活を変えていく使命があると思っている」って。僕はそれを聞いてすごく感動したのですが、同時に「読者を変えていくのは関さんの使命ですよ」と宿題をくださった。

僕はそれを「本を出しただけで満足してるんじゃないよ」という激励だと解釈しました(笑)。だから前回のカンファレンスのように、いろんなセクターの皆さんによる共創やシナジーを生む役割まで担わせていただけているのは、大変ありがたいことだと思っています。

→後編:ルールに追随するだけでは「ブレ」る。これからのSDGs担当者に求められる意識とは?セブン&アイ サステナビリティ推進部の事例から学ぶ につづく

撮影/坂功樹 取材・文/清藤千秋 編集・コーディネート/丸田健介(講談社SDGs)

丸田健介 エディター・コーディネーター

C-stationグループで、BtoB向けSDGs情報サイト「講談社SDGs」担当。

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