2023.11.10
持続可能な未来のために、国内の有力メディア30社が集結! 「クオリティメディア宣言」誕生の背景とは──転換期を迎えた、日本のデジタル広告
10月17日(火)、株式会社BI.Garageと、新聞社・出版社・テレビ局など国内の有力メディア30社が共同運営するクオリティメディアコンソーシアムが、「クオリティメディア宣言」を発表。企業の垣根を超えてひとつとなり、日本のデジタル広告の抱える課題解決を目指します。本宣言誕生の背景、そこに込められた思いなどを、BI.Garageの九里昌宏さんに聞きました。
株式会社BI.Garage セールスリード 九里昌宏さん
「クオリティメディア宣言」は、有力メディア30社の決意表明
──「クオリティメディア宣言」からは、良質なメディアが一致団結し、日本のデジタル広告のあり方を変革し、未来に向かって大きな一歩を踏み出そうとする、強い決意を感じ取ることができます。あらためて、宣言誕生の背景を教えてください。
九里 現在、日本のデジタル広告費の多くを占める「運用型広告」では、費用対効果を最大化するために、アドテクノロジーが活用されています。CPC(クリック単価)を安くすることを最優先して、広告掲載面のクオリティーを無視した結果、悪質サイトに広告が露出するブランド毀損のリスクや、アドフラウドのリスクにさらされており、安心・安全という観点ではからは世界水準を大きく下回っているのが実状です。
つまり、ブランドセーフティーを守りながらアドフラウド対策も行った広告を世の中に届けていくためには、質の高い広告掲載面や、生活者の心に刺さる広告メディア選定を重視する必要があるのです。そこで決意表明も兼ねて、このたび「クオリティメディア宣言」を発表しました。
同宣言は、デジタル広告配信に対して、「メディアのクオリティ」「広告のクオリティ」の概念を持ち込み、広告主のデジタル広告出稿への不安、生活者のデジタル広告押し付けへの不満を解消して、デジタル広告の受容性と信頼性を引き上げ、広告今来のあるべき効果を実現することを目的としています。
態度変容につながりやすい「クオリティメディア」への広告出稿
──具体的に、「クオリティメディア宣言」をともに出した30社と、どのように連携し、課題解決を図るのでしょうか?
九里 BI.Garageでは、講談社さんをはじめ、国内の30媒体社と連携し、プレミアムメディアの上質なコンテンツにのみ掲載されるデジタル広告プラットフォーム「MediaString(メディアストリング)」の運用およびセールスを展開しています。
MediaStringは、媒体社と広告主を限定したクローズドな広告取引市場「PMP(プライベート・マーケット・プレイス)」ですから、広告を出稿した際に、どのメディアに掲出され、どのような結果が出たかを、開示することが可能です。デフォルトの発注でこれが出来るアドネットワークとしては唯一無二の存在と思っています。
広告と掲載枠のマッチングは、コンテンツのコンテクスト(記事の文脈)によって行います。この、記事起点のコンテクスチュアルターゲティングは、広告の受容性を最大化するだけでなく、新たな潜在顧客との出会いももたらします。
クオリティメディアのみのネットワークですので、当然、悪質なサイトに広告が露出することはありませんし、広告詐欺(ボットによるクリック詐欺)のリスクも大幅に低減します。
──「クオリティメディア」とそれ以外のメディアでは、どのような効果の違いがあるのでしょうか。
九里 私たちは、プロが作るコンテンツで、かつ、会社として責任を持って世の中に発信しているものを「クオリティメディア」と呼んでいます。現在クオリティメディアコンソーシアムは新聞社・出版社・テレビ局など国内の有力メディア30社が参加していますが、日本全国にはほかにも、多くの優良なクオリティメディアが存在すると考えています。
クオリティメディアは、コンテンツの信頼性を少しでも高め、受け手の心にしっかり届くように、時間とコストをかけた取材・編集を行うので、掲載されている広告への印象も高く、態度変容にもつながりやすいという調査結果があります。
クオリティメディアでの広告出稿は、広告の印象がよく、態度変容につながりやすい 画像出典:BI.Garage
人ではなく、興味関心を追うことで生まれる効果
──広告を「どこで」見るかが、効果に差を生んでいるのですね。ほかにもクオリティメディアの優位性があれば、教えてください。
九里 MediaString(クオリティメディア)を経由した流入では、サイト滞在時間が長く、送客の質がよいという結果が出ています。クリック効率を追い求めるだけではなく、「スクロール率やセッション時間で広告の効果を測定する」というクリックの質も重視する流れに変化してくれると、日本のデジタル広告の品質向上にもつながると考えています。
MediaString(クオリティメディア)経由で広告にアクセスしたユーザーは、読了率が圧倒的に高い 画像出典:BI.Garage
──なぜ、MediaString経由のユーザーは、サイト滞在時間が長く、読了率も高いのでしょうか?
九里 私たちは、男性か女性か、いくら稼いでいるのか、どこに住んでいるのか、最近何を買ったか......というような「人」を追いかけるターゲティングではなく、記事に対する「興味・関心」でユーザーを迎えに行くターゲティングを行っています。
これは「家族の商品なので、家族で見ている番組でCMを打とう」というテレビの枠買いに近いやり方です。人ではなく興味関心を追うことが、効果につながっていると考えています。
「人を追うのではなく、興味関心で迎えに行くことで、属性に問われない、真の有効リーチが獲得できる」と語る九里さん
「MediaString」を活用した広告出稿イメージ mi-molletの場合
──クオリティメディアを活用した、コンテクスチュアル広告の事例、その効果を教えてください。
九里 講談社さんですと、大人の女性向けウェブマガジン「mi-mollet」で、某美容系健康食品の広告を掲載したケースがあります。「mi-mollet」の良質な読者に、広告を通じて情報を発信できたのはもちろん、反応もよく、クライアントさまからも大変喜ばれました。
「MediaString」を活用した、コンテクスチュアル広告のイメージ。
記事のコンテクスト(この記事ならコスメや美容)と一致した広告バナーが掲載されることで、広告との自然な接触を実現する
※画像はC-stationが独自に作成したもの
大切なのは、バランス。有効リーチを拡大する、オープンウェブ活用
──米国では、メディアの指名買い「PMP」が普及していると聞きます。なぜ日本では、あまり普及していないのでしょうか。
九里 まず、ブランドセーフティに対する意識の違いが考えられます。
よく言われるのは、日本の大手プラットフォームへの偏りです。たとえば2021年のアメリカと日本のデジタル広告費の内訳を比較してみると、デジタル広告費に占めるオープンウェブの割合が、アメリカと比べると日本は10分の1という低い割合にとどまっています。
これは、アメリカでは日本よりも、ブランドセーフティを重んじている傾向がかなり高いため、出稿先を慎重に選んでいる結果といえるでしょう。
日本とアメリカのデジタル広告費の内訳の違い 画像出典:BI.Garage
──今後、Cookieレスが本格化するなかで、日本のデジタル広告のあり方も変化していくのでしょうか?
九里 人を追いかけることが今まで通りできなくなっていく中で、広告本来の姿に回帰する流れが生まれると思います。これまでのように、クリック効率を上げるために既購入者や購入見込み者ばかりを追いかけるCPC至上主義な考え方は、時代遅れになっていくと思います。一方で、広告本来の姿である、興味関心のない人にも「いいね」と振り向かせる役割が再注目されていくと思います。
だからといって、大手プラットフォーマーへの出稿(ターゲティング広告)を全て止めるべきだとは思いません。大切なのは、バランス。Cookieレス時代においては、有効リーチを広げることや広告の受容性、広告メディアの持続性を重視し、「オープンウェブを併用」するという意識を強く持つことが重要だと考えています。その先に、クオリティメディアの活用があり、さまざまな課題が解決される未来が待っていると思っています。
──最後に。今後の展望について聞かせてください。
九里 デジタル広告は今や日本の広告費における最大勢力、つまり広告主さんがもっともお金を使っているのはデジタル広告という状況ですが、そのデジタル広告への信頼度や好感度は上がりません。その理由としてよく聞くのが、これだけデジタル広告が普及してもなお、デジタル広告への信頼度や好感度は上がりません。その理由としてよく聞くのが、
①ターゲティングが怖い
②クリックしたくないのにさせられる
③怪しい広告がある
の3つです。
広告主の立場になって考えれば、これだけ世の中に嫌われていて、かつ信頼度の低いものにお金を出すのはもったいない、のひと言ですよね。ユーザー目線で見ても、嫌いな広告をいやいや見せられたり、追いかけられたりと、怖い思いをするのは幸せではありません。
広告は消費者、広告主、そしてコンテンツ制作者の皆さんの間に位置するものです。私自身、長年広告に関わってきた広告マンとして、おもしろいコンテンツや人々に愛される広告が生まれ続けてほしいですし、それによって世の中の人たちが楽しく心地よくなってほしいと願っています。
今後「クオリティメディア(のPMP)」活用が広がっていけば、誰にとっても気持ちのいいデジタル環境が広がっていくはずです。その未来のために、今後もクオリティメディアとともに、前進し続けたいと思います。
クオリティメディアコンソーシアムには、講談社も参画しています。講談社 ライツ・メディアビジネス局 局次長 長崎亘宏は、今回の「クオリティメディア宣言」について、以下のように語っています。
長崎 クオリティメディアが、デジタル広告取引にもたらす価値とは何か?
それは、かつての近江商人の言葉を借りれば「三方よし」だと私は考えています。
まずは「買い手よし」。広告主から見たベネフィットとして、ウォールドガーデンのみではカバーできない生活者へのリーチと、高いエンゲージメント効果が期待できます。
そして「売り手よし」。メディアから見たベネフィットとして、広告主とより近い関係の中で、透明性、妥当性が高い広告取引を実現できます。
さらに「世間よし」。生活者から見たベネフィットとして、信頼できるメディア環境の中で、コンテンツ親和性が高い広告体験を得ることができます。
すなわち、それらはクリエイティブでサスティナブルな広告の世界の実現を意味しており、弊社としても推進してまいりたいと考えております。
▼「クオリティメディア宣言」の詳細はこちら▼
https://www.garage.co.jp/ja/pr/release/2023/10/20231017/