2023.06.06

【リサーチ会社のプロが分析!】生活者データの行動から予測する、これからのネットとユーザーの関係性

デジタルシフトが加速し、インターネットとコンテンツは、もはや切り離せない関係にあります。また昨今では、コネクテッドTV(インターネット結線しているテレビ)で動画視聴するなど、活用用途も増えています。そこで気になるのが、「これからのネットとユーザーの関係性」です。今回はビデオリサーチの生活者データACR/ex(エーシーアール・エクス)」(※)を使い、未来予測をしてみたいと思います。

文/吉田正寛(株式会社ビデオリサーチ)

※ビデオリサーチ「ACR/ex」:無作為に抽出された対象者に、約1.5万の項目の調査を実施。雑誌の出稿プランニングなどに活用できる日本最大級のマーケティングデータベース

1年間の行動の増減から、未来を予測

未来予測の方法はさまざまです。昨今では統計モデルやAIでの予測も可能になってきました。しかし、その仕組み・ロジックを理解することは困難です。そこで、生活者データの分析からの予測を試みました。

ビデオリサーチの生活者データベース「ACR/ex」では、「1年前に比べ増えた行動/減った行動」の質問も取得しています。各オンライン上の行動、たとえばスマホで動画を見るなどの、1年間の行動の増減から、未来のポテンシャルを可視化することで未来予測したいと思います。

今回は各行動における、
「1年前に比べて増えた」に該当する% ÷ 「1年前に比べて減った」の%
で算出したスコア「未来ポテンシャルスコア」を活用しました。

今回、未来予測に活用した、「未来ポテンシャルスコア」のイメージ。年間を通して、行動の増減を把握できる


未来ポテンシャルスコアが1.00を超える場合、1年前に比べて増えた人が減った人よりも多く、その行動は「増加トレンド」だと解釈できます。逆に1.00を下回る行動は、「減少トレンド」です。

未来ポテンシャルスコアを時系列に見ることで、その行動が生活者に浸透しているのか、あるいは一時的なブームだったのかがわかります。「ACR/ex」は2014年から同様の設計で調査を継続しているため、こうしたトレンドの変化を捉えることができます。

未来ポテンシャルスコアによる予測結果

2018年~2022年で、未来ポテンシャルスコアの推移を、パソコン・タブレットとスマホそれぞれで確認しました。

【図1】パソコン・タブレット行動の未来ポテンシャルスコア。「動画視聴」に増減が見られる
データソース:ビデオリサーチ「ACR/ex」 7地区計:男女12~69歳

パソコン・タブレットの行動は、「動画を見る」が激しく増減

パソコン・タブレットは減少トレンドですが、唯一「動画を見る」は1.00を超え増加トレンドが見られました。これは、コロナ禍による一時的ブームだったようで、2022年では「動画を見る」が減少トレンドに転じています。

背景には、「コネクテッドTVによる動画視聴」の増加トレンドがあると見られます。コネクテッドTVによる動画視聴の未来ポテンシャルスコアは2022年で1.80でした(2022年から調査を開始したため、時系列のグラフには非掲載)。つまり、コロナ禍で定着したオンライン動画の視聴が、パソコンからテレビ受像機にシフトしているものと推察されます。

スマホの行動に見えた、パーソナルに楽しみたい欲求

【図2】スマホ行動の未来ポテンシャルスコア
データソース:ビデオリサーチ「ACR/ex」 7地区計:男女12~69歳

一方スマホは、メールを除く、すべての未来ポテンシャルスコアが増加トレンドになっています。特に「動画視聴」「スマホのインターネット」「メッセンジャーアプリ」は、2022年のコネクテッドTVによる動画視聴の未来ポテンシャルスコア(1.80)よりも高く、年々伸びています。

スマホによる「動画視聴」は、コネクテッドTVより未来ポテンシャルスコアが高い点は興味深いです。家族や友人みんなで楽しめるテレビ受像機よりも、スマホでパーソナルに楽しみたいという欲求が強い様子がうかがえます。

さらに興味深い点が「その他」の動きです。増加トレンドはおおむねSNSと連動していますから、これは、スマホの活用用途が広がっていることの表れでしょう。今後は、動画視聴やSNSと別の新たなスマホ利用の伸長も予想されます。

分析で浮き彫りになった「生活者のスマホ依存実態」

未来ポテンシャルスコアの時系列比較から、以下のことが明らかになりました。

・オンライン上の行動はスマホで伸長、パソコン・タブレットは減少トレンド
・動画視聴はパソコンからCTVへシフトするも増加が顕著なのはスマホ
・スマホは動画やSNS以外の新たな活用用途も伸長していくトレンド

今回の分析で浮き彫りになったのは、「生活者のスマホ依存実態」です。背景には情報授受のパーソナル化があると見られます。

「動画視聴」において、大画面を複数人で楽しめるコネクテッドTVは増加トレンドにありますが、特にパーソナルなスマホは顕著でした。動画コンテンツも今後、個人の趣向に合ったものがより求められるようになるのではないでしょうか。

なお、スマホの活用増加トレンドは、動画やSNSのような従来のサービス以外も顕著でした。今後はスマホならではのパーソナルなニーズを捉えた、新たなアプリ・サービスが存在感を増していきそうです。

スマホは店頭よりも売りの現場に近い存在

このように、スマホはパーソナルなニーズに応えるデバイスとして、エンターテインメントとの親和性が高い傾向にあります。他方、スマホは決済サービスの進化により財布に取って替わり、私たちの生活にも定着しています。こうしたトレンドを広告コミュニケーションの観点でみると、スマホは店頭よりも売りの現場に近い存在と捉えることができます。

エンターテインメントとコミュニケーション、購買がスマホで一気通貫になる中で、生活者に訴求するためには、その個人に寄り添った訴求であることが重要になります。今回の分析で、コミュニケーションの現場にも変化の予兆が見えました。みなさんはいかが感じられたでしょうか?
ぜひ日々のコミュニケーションの参考にしていただければ幸いです。

吉田正寛

筆者プロフィール
吉田正寛(よしだ・まさのぶ)/株式会社ビデオリサーチ フェロー

2008年(株)ビデオリサーチ入社。主にメーカー等の広報・宣伝担当部署から、広告会社や媒体社営業担当部署をクライアントに、広告活動のプランニングや広告効果測定をコンサルティング、メディアの広告役割の観点から、次期広報・宣伝施策を第三者の立場でサポート。広告メディア・コンテンツ別にある固有の役割に関する研究を継続中。

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