2022.04.27

#1 動画を活用するためにまず知っておくべきこと|効果を生む動画マーケティング戦略と、その手法

この連載では、ビジネス向け動画配信プラットフォームのグローバルリーダーであるブライトコーブのRegional Channel Director森貴浩氏が、動画をマーケティングに活用するための実践的なノウハウをお伝えします。
これから動画を利用していきたい方や、すでに導入しているものの思うような成果が出せていない方のために、動画マーケティングの基本的な知識から具体的な取り組み方まで幅広く解説。第1回は、動画マーケティングの重要性や、ターゲットや目的の考え方、配信プラットフォームの特性についてご紹介します。

動画マーケティングで効果が上がる理由

マーケティングの中でもっとも大きな比重を占める活動といえば、「顧客が求めている商品やサービスを作り、その情報を届けること」でしょう。そして、情報を届けるための手段として、動画はとても効果的な手法です。
「テキストを読んだ人でそのメッセージを覚えている人は10%しかいないが、動画視聴者の95%は動画から受け取ったメッセージを覚えている」ともいわれているように、動画の持つ伝える力はとても高いのです。
またこの数年間で、動画を視聴する習慣は広く定着しました。OTT(Over The Top)市場が拡大し、コネクテッドTVでの視聴が急増していることは、これまでも紹介してきたとおりです。

人々はいままで以上に動画を視聴するようになっています。特に音楽・エンターテイメント業界では、従来のプロモーション目的での活用から、配信動画が商品そのものとして提供されるようにシフトしました。
今後コロナ禍が収束しても、この傾向は変わらないはずです。これは一時的な変化ではなく、「新たな視聴マーケットが発生している」と捉えるべきでしょう。そのとき大切になってくるのは、視聴機会が増え、視聴デバイスも充実している視聴者に対して、どんなコンテンツをどのように届けるべきかです。

顧客にメッセージを届けるための手段として、動画は確かに有効です。しかし、動画全盛のいま、やみくもに動画マーケティングを行おうとしても十分な効果は期待できません。
ターゲットをしっかり定め、適切なコンテンツを適切な方法で送り出すことが重要です。

ファネルで考える「ターゲットとコンテンツ」

マーケティングファネルを使って、ターゲットとコンテンツの関係を考えてみましょう。
下図の「ファネル」は、消費者の意識・行動を逆三角形に図式化したものです。一般的に「認知→興味・関心→比較・検討→購入」の順に進み、徐々にターゲットの母数が減っていく様子を表しています。

ファネルで考える動画配信

ファネルで考える動画配信

ファネルの一番上部では、「非認知」の状態から「認知」を獲得する必要があります。売りたい商品・サービスがそもそも認知されていないのであれば、ここに十分なリソースを投下するべきでしょう。
認知獲得に効果を発揮するのは、テレビCMや交通広告などのペイドメディアにおける動画配信です。たくさんの人の目に触れるものですから、クリエイティブは作り込んでいかなくてはならず、配信コストも制作コストも大きくなるでしょう。

ファネル中間部の認知層に対しては、YouTubeなどが効果的です。
知りたい情報を探す際に、GoogleではなくYouTubeで検索するユーザーも増えています。昨今ではテレビ広告などよりも拡散力が高く、能動的に視聴されやすいため、興味・関心を獲得しやすいはずです。

ファネルの下の部分ではどうでしょうか。BtoBであれば、比較・検討の段階の見込み客にイベントやセミナーへ参加してもらい、詳しい導入事例を紹介するようなアプローチがあります。組織によってはここの活動はマーケティング部門ではなくインサイドセールス部門が担っているかもしれません。
この段階では、ウェビナーの開催はもちろん、ウェビナーをもとにした商品説明動画や、事例紹介動画といった手法が使えるでしょう。視聴者はすでに一定の興味は持っているので、華やかなクリエイティブにする必要はありません。見込み客が知りたい情報をしっかり盛り込み、その後のアポイントや購入につなげることを目指して動画を制作します。

このように、ファネルのどこへ働きかけるかによって、ターゲット像は変わりますし、適切なコンテンツ内容も変わってきます。これらをよく考えずにいきなり「とにかく動画マーケティングを進めよう」と決めてはいけません。

まずは「誰にメッセージを届けるのか」を決め、そのメッセージを「どんなコンテンツとして届ければ効果的なのか」を判断します。さらに、ターゲットが「どのような状況でそのコンテンツに触れるのか」を考えなければなりません。特に動画の場合は「どんなプラットフォームで配信するのか」「どんなデバイスで視聴されるのか」も検討しましょう。

動画配信プラットフォームをどう選ぶか

適切なコンテンツを視聴者に届けるためには、適切な動画配信プラットフォームを利用する必要があります。
動画配信サービスにはさまざまなものがありますが、大きくは「動画共有型プラットフォーム」「企業専有型プラットフォーム」の2種類に分類できます。

「動画共有型」の代表例は、YouTubeです。TikTok、Instagram、Facebook、Twitterなども該当します。
不特定多数のユーザーが巨大なプラットフォームに動画をアップロードし、不特定多数のユーザーがそれを視聴する仕組みです。運営サイトのサーバを間借りしてコンテンツを置いている形式です。

「企業専有型」は、ブライトコーブが提供しているサービスのように、プラットフォームが保有している動画配信機能を、各企業が自社保有のシステムの一部のように使うことができる仕組みです。

動画プラットフォームの種類

動画プラットフォームの種類

YouTubeなどの動画共有型プラットフォームの特徴は、無料で利用できることです。配信する側も、視聴する側も、ほとんどお金が掛かりません。また、拡散しやすいこともメリットです。ランキングやサジェスト機能によってどんどん拡散され、多くの人に届く可能性があります。
一方で、自由度が低いことがデメリットといえます。たとえばYouTubeの多くのユーザーは広告動画を見ていますし、動画プレイヤーの横には常に関連動画が表示されています。そこには競合他社の広告動画や関連動画が表示されることもあるでしょう。

企業専有型の動画配信プラットフォームは、ビジネス向けに設計されているため、費用は掛かりますが自由度が高いうえサポート体制も充実しています。
この動画配信における「自由度の高さ」は、特にマーケティングファネルの下部をターゲットにする場合に重要になってきます。
たとえば、会員登録をしたユーザーだけが視聴可能になるようなセキュリティ設定をしたり、個々の視聴者がどのくらい熱心に動画を視聴したのかをデータとして取得できたりしますので、そこからセールス活動へつなげられる可能性が高まります。

動画マーケティングを始める前に

企業が新しい取り組みをするときには、社内調整も不可欠でしょう。ブライトコーブ代表取締役社長 兼 米国本社上級副社長の小枝逸人は、次のように話しています。

ブライトコーブ代表取締役社長 兼 米国本社上級副社長 小枝逸人

ブライトコーブ代表取締役社長 兼 米国本社上級副社長 小枝逸人

「動画マーケティングを本格的に始めようとするとき、いきなり有料の動画配信プラットフォームを利用するのはハードルが高いかもしれません。まずはYouTubeから始めて、成果が出てきたら有料の企業専有型プラットフォームに移行するという発想もありえます。
ただしプラットフォームごとの特徴を認識しておかなければ、本当の意味で成果が出ているのか、成果が出ないのはプラットフォームが理由ではないのか、といった判断ができません。流行っているらしいからとTiktokやInstagramを試してみるのもよいのですが、試した結果を分析できなくては意味がありません。本腰を入れて動画マーケティングを行うのであれば、早い段階で企業専有型プラットフォームを検討することをお薦めします」

マーケティング活動は、スモールに始めてPDCAを回していくことも重要ですが、ロジカルに考えて早い段階から適切な施策を打つことも重要です。それぞれのビジネスに合った手法を選択し、さらなる発展を目指していきましょう。

次回はテキスト、ウェブサイト、ホワイトペーパーなど、たくさんあるコンテンツ形式の中で動画のメリットとは何か、そのメリットを活かすためにはどのような考え方で活動するべきか、などについてお伝えする予定です。

筆者プロフィール
ブライトコーブ株式会社 Regional Channel Director Japan
森 貴浩(もり たかひろ) 

株式会社USENでGYAO事業本部のショッピングチャンネル立ち上げと新規顧客開拓に従事し、当時日本初のWEB動画による広告媒体の営業を実施。その後、凸版印刷株式会社へ入社。営業としてイベントプロモーションをはじめとするアカウント先のプロモーション業務全般を担当し、動画制作業務も複数実施。
2019年にブライトコーブ株式会社に入社し、Account Managerとしてエンタープライズ領域の伸長をリード。2021年には新設されたChannelセールスチームのDirectorに就任、日本における販売代理店プログラムの立ち上げを行う。動画配信サービスのチャンネル立ち上げやイベントプロモーション、ブライトコーブでの様々なビジネスにおける動画活用のユースケースを作成してきた経験から、事業会社における動画活用全般に関して精通する。

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