2020.01.24

【第1回】サステナブルなマーケティングとは? 戦略立案のための3つの主軸

<連載>サステナブル・マーケティングのすすめ

数々の社会問題が浮かび上がるなか、企業が今後取るべきは「時代とともに持続可能なマーケティング戦略」を進めること。
新連載「サステナブル・マーケティングのすすめ」、初回はサステナブル・マーケティングの定義や重要性について考えます。

トレンドワードで終わらせない「サステナブル」に向けて

「サステナブル」という言葉や概念は1987年に提唱されていましたが、日本国内のメディアで使われるようになったのは2000年を過ぎたころです。2010年を境に「サステナブルな〇〇」という形でさまざまな領域でその考え方は応用されるようになり、現在は領域を問わずスタンダードなトピックとして扱われつつあります。
「サステナブル・マーケティング」も2010年ごろに生まれた言葉のひとつです。しかし、トレンドのひとつとして取り上げられることが多かったからか、あるいは具体的な取り組みに結びつけづらかったからか、それほど業界で定着を見せなかったようです。

国内で環境問題やジェンダー平等、社会平和への関心が高まりつつある昨今、サステナブル・マーケティングへの注目は再度高まってきました。この流れを汲み、改めてサステナブル・マーケティングとはいったい何であり、どのように取り組むべきか、本連載で考察していきたいと思います。「サステナブル」をトレンドとしてではなく、社会課題を解決するためのひとつの手法として捉え、マーケティングの領域での可能性を考えてみましょう。

3つの軸から考える実践的なサステナブル・マーケティング

サステナブル・マーケティングは、そのまま解釈すれば「持続可能な市場創造」と言い表すことができます。では、持続可能であるためにどのような施策が考えられるか、実際の企業の取り組みを例に挙げていきましょう。

①ソーシャルグッドな企業として共感してもらおう

これまでは社会的な貢献活動をCSRとして括ることが一般的でしたが、今後は広くマーケティングの領域でもこうした取り組みについて発信したり、関心を高めるトピックを提供したりという動きが求められるのではないでしょうか。

ひとつの事例として、米国発のメガネ販売店「Warby Parker(ワ―ビー・パーカー)」の成功を挙げます。ワ―ビー・パーカーは独自の試着システム(複数のメガネを無料郵送し、自宅で試着を楽しめるというもの)の他、ソーシャルグッドな取り組みが多くの購入者の共感を得ました。ワ―ビー・パーカーのメガネをひとつ買うと、誰かにメガネを寄付できるというシステムを設けたのです。
ワ―ビー・パーカーは視力矯正が必要にも関わらず、メガネを購入することのできない人々がいることを訴えたうえで、こうした社会貢献に資する活動を販売戦略の一部として取り入れました。そのほかにもファンド・レイジングを目的としたレモネード販売など、メガネにこだわらない柔軟な活動を広げています。

こうした活動の一つひとつが顧客への強いメッセージとして届き、SNSなどを通じてファンを増やしたことにより、ワ―ビー・パーカーのマーケティングは成功しています。社会貢献を前提とした情報発信の姿勢は、今後のマーケティングで一層意識したい点です。その成功は、マーケティング戦略そのもののサイクルの持続性を高めることでしょう。

②消費者と手を取り合い、マーケティングを共に考えよう

マーケティングを顧客と共に育てていく戦略も、サステナブル・マーケティングを形作る礎のひとつです。SNSが普及し、個々人の生活や意見をもとに購買を検討する消費者が増えた昨今、企業からの一方的なマーケティングは手法の如何を問わず注目されない危険性があります。

アパレルアイテムを中心とした企画・販売を行なう「ALL YOURS」は、顧客を「共犯者」と呼び、クラウドファンディングによる商品開発のための資金調達のほか、SNSによる情報発信を誘発するイベントの定期開催などに積極的です。
トレンドのサイクルが早まり、消費者の需要を越えた商品の供給が続くアパレル業界の歪みを是正するべく、本当に消費者が欲しい商品を提供することをコンセプトに複数ブランドを展開するALL YOURS。ミニマルかつ上質志向のラインナップは、ビジネスパーソンから若年層まで多くの人々の共感を集めています。
そして、ファンは情報発信や資金提供、商品購入などのアクションを通じブランドの一部に貢献していることを強く感じられます。その感覚はコンセプトへの共感を一層強め、ファンと企業の関係性を育んでいくでしょう。

社会に良き考え方や商品を届けるために、消費者の共感と協力を求める。この方法は、売上を目的としたマーケティングとはまったく違った戦略をもたらすと共に、今後のマーケティングの在り方を示唆するものかもしれません。

③短期的な目標と中長期的な目標を切り分けよう

サステナブル・マーケティングがこれまで有用なものとして語られなかった背景には、短期的な効果が見えづらい特徴があります。たとえば、ファンを巻き込んだソーシャルグッドな施策と、一方的な情報発信を伴うデジタル広告を比べたとき、ある商品への注目を短期的に集めるなら後者のほうが効果的であるケースが多いということです。

数値的な結果を価値判断基準にしていくと、短期的に効果が生まれる施策が選ばれがちです。一方で、消費者の共感を誘う情報発信は、長期的に企業や商品を愛するファンを育てていく力があります。
サステナブル・マーケティングはこうした中長期的な効果を生み出すものであり、効果測定するのが難しい場合も少なくありません。経営戦略として、主軸に据えるのはやや危険性が高いと考えるのも無理はないでしょう。

一方で、時代や環境がサステナブルを軸とした考え方に注目を集める今、マーケティング領域でサステナブルな考え方を取り入れることが飛躍的なブランド成長につながる可能性もあります。
短期的な目標のほか、中長期的なマーケティング領域での目標を設け、測定数値に囚われない地道な戦略を進めていくことが、今後の企業に求められる真摯な姿勢なのでしょう。

サステナブル」の定義を拡張する

①ソーシャルグッドな企業として共感してもらおう
②消費者と手を取り合い、マーケティングを共に考えよう
③短期的な目標と中長期的な目標を切り分けよう

ここまでで、企業がはじめてサステナブル・マーケティングに取り組むときに意識したい軸をご紹介しました。これらの軸はどの領域に属する企業でも取り入れやすく、応用が利くものだと思います。
これに加えて、今後のサステナブル・マーケティングを成長させていくのは、各企業におけるサステナブルへの解釈の違いです。サステナブルやサステナビリティといった言葉は、環境問題など単一のテーマと結びつけて利用されることが多いのではないでしょうか。しかし、今後はより柔軟にサステナブル・マーケティングが広まる必要があると思います。

SDGsは持続可能な開発目標と題し、世界各国の問題を解決し得る具体的な目標が17個選ばれました。もちろんサステナブル・マーケティングにも直結するものであり、各企業で取り組みやすい目標を選ぶことで、具体的な施策のヒントとすることができるでしょう。
このほか、まったく違った観点から持続可能な施策を試みるのも重要です。先に述べた"ソーシャルグッドな企業"の定義も、SDGsに掲載されているものから選ばなければならない決まりはありません。

むしろ、サステナブル・マーケティングの新しい事例を作りあげる気持ちであらゆる施策を試したほうが、注目度は高いでしょう。サステナブル・マーケティングの定義が拡張されればされるほど、その波及効果はさまざまな消費者や企業を巻き込みながら強いものとなるはずです。その中心軸をとるような戦略を考えることが、今後のマーケターの目標となるでしょう。

次回より、そんなマーケティング戦略に関連付けられる成功事例を取り上げるとともに、その事例の成功をどう解釈すべきかを考えていきます。

筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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