Future View業界未来図

夏目幸明責任編集
21業種 経営者が語る業界未来図

井上慎一社長

外食・各種サービス

株式会社テン コーポレーション(前編)

世界の「TENDON」を目指す社長が語る!

繁盛店のキーワードは「システム」と「カスタマイズ」

日本の飲食チェーンの黎明期を知る「生き字引」に話を聞いた。「天丼てんや」を経営するテン コーポレーションの用松靖弘社長。1977年にロイヤルホストを経営するロイヤルホールディングスに入社。“丼勘定”が当たり前だった業界に近代的経営システムを取り入れた同社で奔走し、現在は天丼てんやに長期的成長をもたらしている人物だ。彼は今後の飲食業界のトレンドをどう読むのか。

「いつもの味」と「憧れの味」
飲食店で進む“二極化構造”

夏目:用松さんがロイヤルに入社した当時は、まだ「外食産業」という言葉がほぼ使われておらず、父ちゃん母ちゃんで店を出せば食っていける程度に儲かる、といった業界だったと思います。そんななか、この道を選ぶって先見の明がありすぎじゃないですか?

用松:いえ、食べることが好きだったんです(笑)。例えば大学時代は京都・祇園の料理旅館でアルバイトしていました。忘れられないのは鯨肉のすき焼きを食べたことです。おいしい上に、尾身も含め食材を余すところなく使っていたのが印象的でした。

夏目:当時から「いろんな食材を余すことなく食べる」といった経営者視点をお持ちだった?

用松:多少はあったかもしれませんね。先見の明と言えば、そんな私が就職先を探すなか、江頭匡一ファウンダー(故人・ロイヤルグループ創業者)の「飲食業界を産業化していく」というビジョンに共感したことは、今思えば見る目があったのかな?と思います。

夏目:産業化とは?

用松:ロイヤルは、今は当たり前になっている様々なチェーンストアシステムを国内最初期に取り入れています。たとえば料理を大規模な工場で生産する「セントラルキッチン方式」。工場で「何時から何時までこれをつくる」と決めれば、各店舗で調理するより効率的です。大量調理用の厨房機器が使え、生産も効率化できます。また「フランチャイズシステム」も、日本ではロイヤルが早い時期に始めています。これにより出店ペースを速め、スケールメリット(規模が大きいことによるメリット)を出すことが可能になります。そして、これらのメリットをお客様に還元するんです。
チェーン店が伸びる時って、背景に新たなシステムがあることが多いんですよね。

夏目:余談ですが、ペッパーフードサービスさんの「ペッパーランチ」も、電磁調理器で決まった温度に熱した鉄板に肉と米とソースを載せるだけなんですよね。だから熟練の調理師がいらずチェーン化できた、と聞いています。

用松:もちろん外食はチェーンがすべてではありません。でも、こんな流れのなか、個人経営の店主さんは「ここでないとあの味は楽しめない」と個性を追求されていく、一方、産業化した外食チェーンは、いつもの安心感がある味を安心感がある価格でお届けする、と二極化してきたんだと思います。

夏目:昨今はお寿司屋さんが急激にそうなりましたよね。チェーンのおトク感と、高級店の非日常感、みたいな……。

用松社長
日本の外食産業の確立に向かって邁進していたロイヤルホスト時代の用松社長

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フードサービスは70%のサイエンスと
30%のカルチャーで成り立つ

夏目:そんななか用松さんは、チェーン店の進化をつぶさに見てきた方だと思うんですが、そこにはどんな歴史があったんですか?

用松:まずはオペレーションの進化です。ここで大切なのはチャンスロスをなくしていくことでした。今も覚えているのは、20代の中頃、鹿児島の城山にある新店舗の店長を任されたときの失敗と成功です。繁華街の近くで売り上げがいい、しかも深夜2時に閉めて朝は5時から準備を始めていたので「どうせなら」と全国初の24時間営業を始めたんですね。すると予想外のことが起きました。「深夜に少し売り上げが伸ばせれば」くらいの思いだったのに、お客様が「朝までいられる店ができた」と、もう、どんどんいらっしゃるんです。しかも酔った方も多かったので、昼間のオペレーション通りにいかない。すると採用した学生さんが疲弊して辞めてしまった。スタートした年のスタッフとの合い言葉は「悲惨や悲惨や」でした(苦笑)。

夏目:かといって「やっぱり2時に店を閉めます」とはいきませんよね。

用松:そうなんです。ところが……3年目は、社員に有給休暇をあげられる余裕ができ、かつ、夏の売り上げが3300万円から4000万円に伸びたんです。

夏目:何をされたんですか!?

用松:これがお店の面白いところで、スタッフ一人ひとりと話して、チームワークを創り上げていくと、余裕が生まれた上に売り上げが伸びたんです。例えばテーブルの片付けが終わったタイミングで別のスタッフがお待ちのお客様をご案内できればロスタイムをなくせますよね。一人のスタッフが片付けた食器を厨房に戻し、そのあとでご案内するよりはるかに効率的です。そして、お店にはこんな小さなロスタイムがいっぱいあるんです。これをなくしたらうまくいった、という……。

夏目:いわれてみれば、父ちゃん母ちゃんの店なら感覚的にできることだけど、組織でやっていくとなると“慣れる訓練”のようなものも必要ですよね。

用松:我々はこういった進化を手探りでつくりだしていきました。よく江頭から言われたのは「現場に神宿る」「細部に魂を注入する」ということです。小さなことでも、合理性、機能性を追求していく。その積み重ねが、サービス向上、売り上げ向上に直結します。たとえば私が焼肉チェーンの責任者だった時、キムチのお持ち帰りを始めようと江頭にプラスチック容器を提案したんです。すると彼はじっと凝視し「水を入れてこい」と言うんですね。その後、やおらグルグル振り回して、彼にも私にも水がかかると、一言「失格」と言いました。「キムチの汁が漏れるだろ?」という意味です。デザイン性よりもまずは機能性を重視する、当時はそんな感覚はあまりなかったんですね。また、江頭に「このブラインド、夏は西日が強いから使うべし、冬の西日は優しいから使わず光を入れよう」と言われた時は「こりゃレンブラントの世界だ」と思ったものです。

夏目:でも、そんな積み重ねが、店の資産なんですね。

用松:おっしゃる通りで、ロイヤルではよく「フードサービスは70%のサイエンスに、30%のカルチャー」という言葉が使われました。例えば「パンケーキは何度で何分焼くとおいしい」とか「これはセントラルキッチンでつくったほうが合理的」といったものが「サイエンス」。ここに、美味しく作ろうという思いや店舗のデザイン、光の取り入れ方などの「カルチャー」が乗って、いい店ができるんです。
だから私は今も、機会を見つけては、立ち食いの蕎麦からレストランまで、いろんな店で食べ歩きをしています。好きなだけじゃん、と言われますが(笑)、少しでも学び、それを活かしていくことがお客様に喜んでいただけることにつながるんです。

会社が飲食をやるなら
「システム」を創れ

夏目:メニュー開発はいかがですか?

用松:これも力が入っています。ロイヤルホストは創業の頃から、世界のおいしい食べ物を日本に紹介しよう、と「イタリアンフェア」「ラテンアメリカフェア」などを行ってきました。今は様々なチェーンが行っていますが、当社が先駆けだと思います。そしてメニューを開発するときは、ちゃんとその国に行き、食材、文化もしっかり把握して「本物」を作りこみます。「タイフェア」の時は、食材も調味料も、空輸便で送ってもらったりしていました。日本の食材、調味料では本物の味が出せなかったんです。

夏目:わかってきましたよ。用松さんたちは、街の食堂が主流だった時代に「会社」が経営する「飲食店」を創り上げたんです。なぜなら「会社にしかできない強み」があったからです。仮に私が店を開いても、僕が毎日タイから調味料を空輸はできません。セントラルキッチンも同じです。これにより「産業化」を果たした、と……。

用松:まさにそうです。どの業界でも、規模が小さければ個性が出しやすい、個別に対応できる、作り手の顔が見える、といったメリットがあります。一方、規模が大きければ、今お話ししたような様々なメリットを創出でき、それが差別化になります。飲食が産業化してからは明確に、このいずれかのメリットを打ち出せているチェーンが生き残り、伸びていますよね。
「てんや」もその延長線上にあるんですよ。

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