2022.06.03

【リサーチ会社のプロが分析!】"耳"を制するものはSDGsを制する!? ── 「ラジオ(音)×SDGs」の相関関係と可能性

ラジオやpodcastなどの音声メディアがZ世代を中心に注目を浴びており、若者の間で「音の再価値化」が加速しています。同様に「SDGs」も、サステナビリティ意識の浸透とともに彼らの関心が高まっている分野です。では、Z世代が注目する「音」と「SDGs」には、相関関係や親和性があるのでしょうか。もしあるならば、それはどのようなものでしょう。今回は、ビデオリサーチ社の生活者データベース「ACR/ex」を用いて、Z世代と「ラジオ(音)×SDGs」のマーケティング活用の可能性について調査してみました。

文/株式会社ビデオリサーチ リサーチアナリシスグループ 山本勇気

SDGs意識が高い、Z世代×ラジオコア層

本稿では、Z世代=15~25歳ラジオコア層=ラジオを週1日以上聴く人と定義し、Z世代かつラジオコア層(以下、Z世代ラジオコア層)がSDGsに対して、どのような意識を持っているのか探ってみたいと思います。

まず、「リサイクル」という身近なSDGsへの意識を見てみます(図1)。2019年から2021年まで、Z世代ラジオコア層のスコアは10pt以上伸びており、彼らのサステナビリティ意識が年々高まっていることがうかがえます。

図1 「リサイクルや環境保護のために日頃から工夫をしている」Z世代の経年変化 (ACR/ex 2019,2020,2021年4-6月、全国7地区、男女15-25歳) ※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島

データから見えた、SDGsマーケティングとの相性のよさ

さらに、Z世代ラジオコア層のサステナビリティ意識を詳しく見てみましょう。ACR/exにあるSDGs項目を以下「6つのカテゴリー」(図2)に分類し、各カテゴリーについて一般Z世代とスコアを比較してみました。

図2 SDGs6つのカテゴリー SDGs各ジャンル一覧(ACR/ex2021年4-6月より抜粋)

すべてのSDGs項目において、Z世代ラジオコア層はスコアが高く、SDGs全般に対する関心の高さがうかがえます(図3)。とりわけ、「地域や社会への関心」「企業活動や商品への関与」で一般Z世代との差が大きく、10pt近く差があることがわかります。

図3 SDGs各ジャンルへの興味。スコアは各項目のうち1つ以上当てはまる人の割合。(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-25歳) ※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島

注目すべきは、「企業活動や商品への関与」への関心の高さでしょう。これは、SDGsマーケティングが彼らにプラスに働くことを示唆している結果といえるでしょう。

さらに同項目を深堀りしてみると、「環境保護を考えた商品をなるべく買うようにしている」「社会貢献のための支援活動をしている商品を買うほうだ」といった購買に関係する項目でのスコアの差も大きく(図4)、Z世代ラジオコア層へのSDGs訴求は、商品購買につながる可能性があるアプローチと考えられそうです。

図4 「企業活動や商品への関与」の各項目の該当割合(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-25歳)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島


SDGs発信が広く、深く届く、Z世代×ラジオコア層

Z世代ラジオコア層とSDGsの相性のよさが分かったところで、次に、彼らに対するSDGs訴求の有効性について調査してみました。

まずは、Z世代ラジオコア層の情報意識について見てみます。彼らは情報収集、情報発信への意識が一般Z世代より高く、情報に敏感であることが分かります(図5)。

図5 Z世代の情報意識(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-25歳) ※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島

さらに、SDGsに関連する情報も積極的に入手していることがうかがえます(図6)。

図6 ブログやSNSで「環境問題・エコロジー・リサイクル」についての情報を入手している割合(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-69歳) ※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島

続いてSNSの3ヵ月以内利用の割合を見てみると、主要SNS(Facebook、Instagram、Twitter)すべてにおいて、一般Z世代よりもラジオコア層が上回ることが見て取れます(図7)。

図7 Z世代のSNS利用状況(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-25歳) ※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島

これらの結果から、Z世代ラジオコア層はSNSを上手に活用しながら、情報収集・発信を積極的に行なっていることが見えてきます。さらに「よい情報は拡散する」のがZ世代の特徴でもあります。Z世代ラジオコア層にSDGs訴求を行えば、深く届くだけでなく、情報拡散も十分期待でき、効率のよいマーケティングが可能になるでしょう。

クロスメディアによる訴求で効果を最大化

ここまでの調査で、Z世代ラジオコア層にSDGs訴求をしたいなら、ラジオまたは「音」を活用するのが効果的と言えそうだとわかりました。しかしラジオによるコミュニケーションだけでは、その効果が限定的になってしまう可能性があります。

そこで重要になるのが「クロスメディア」の発想です。アクションとして商品購入を促すのであれば、より広く、深く届けることが大切です。複数のメディアやコンテンツを組み合わせ、効果を最大化しましょう。

ラジオは共感メディアであり、そこにはファンコミュニティが存在します。同様に、ファンコミュニティを抱えているのが雑誌メディアです。この2つのコミュニティを組み合わせるのもアイデアのひとつです。

①Z世代②Z世代ラジオコア層③Z世代ラジオコア層かつ雑誌購読コア層を比較すると、ラジオ・雑誌の両方によく接触しているZ世代の若者たち(③)は「社会貢献のための支援活動をしている商品を買うほうだ」と回答しているユーザーが、どの層よりも多くなっています(図8)。

図8「社会貢献のための支援活動をしている商品を買うほうだ」と答えた割合
(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、男女15-69歳)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
※ラジオ&雑誌コア層:ラジオ&雑誌ともに1週間に1日以上接触者(雑誌は紙雑誌、電子雑誌いずれか接触)

このことから、ラジオ・雑誌の両方によく接触するZ世代ユーザーは、Z世代ラジオコア層よりも、さらにSDGs意識が高いと考えられます。同時に、SDGsマーケティングへの有効性も高そうです。

まとめ

近年の音声メディアへの注目度の高まり、そしてSDGsへの興味関心の高まりを受け、今回はZ世代に対する「ラジオ(音)×SDGs」の有用性を探ってみました。

Z世代のラジオコア層はSDGsのさまざまな分野に興味を持っており、SDGs関連企業の商品をより購入する傾向がうかがえました。彼らは情報意識が高く、SNS利用頻度も高いため、SDGs関連の情報を早く、広く伝播することが期待でき、効率のよいマーケティングが可能になるターゲットと言えそうです。

ただしラジオ(音)単独での訴求よりも、メディアをまたいだコミュニケーション施策を行ったほうが、より深く、そして広く届けられる可能性は高まると考えられます。

「コンテンツ」は、目の肥えたZ世代とのコミュニケーションにおいて、非常に重要な位置付けにあります。SDGsに限らず、コンテンツ次第では、広告でさえも情報拡散するのがZ世代の特徴です。Z世代を動かしたいのであれば、彼らの「耳」、そして「感性」に注目し、共感を得ることが大切です。

<著者プロフィール>

株式会社ビデオリサーチ
ビジネス・ソリューションディビジョン 首都圏ユニット リサーチアナリシスグループ

山本勇気(やまもと・ゆうき)
2020年、ビデオリサーチ入社。主に広告主や広告会社をクライアントに、広告効果測定や広告コミュニケーション上の課題解決業務に従事。CMクリエイティブの分析にも携わり、成功するクリエイティブについて研究中。

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