2023.12.21

地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(3)|マンガキャラクター活用の極意【第二部】

あっという間に年末です。12月8日に明治大学商学部「レジャービジネス論」で、先日つんく♂さん作詞・作曲の「大宇宙の無限愛」をリリースし、デビュー10周年記念ライブを2024年2月23日に控えている「ゆっふぃー」こと寺嶋由芙さんのゲスト講演「アイドル、ゆるキャラから見るファンツーリズム」を聞きました。

自身がソロアイドルとして推される活動をしながら、ゆるキャラの推し活とイベントMCなどを並行している彼女の発言は、具体的かつ説得力にあふれており、「推しの推しは推し」「『推しを布教するヲタク』が『推される側』に回った結果、ファンツーリズムが連鎖」などの名言も飛び出して、受講した学生から大いに共感されたようです。ありがとうございました!

前回は、地域魅力度ランキングで全国一律に評価が高い県、地元および周辺県のみで魅力度が高い県を整理して、それらにいかなる違いがあるのか、以下の分析結果をご紹介しました。

  • 地域魅力度ランキングのトップは北海道で、沖縄県、京都府、東京都と続く
  • 各地域共通して、観光や仕事などでの訪問経験がない県が魅力度下位に
  • 地元への愛着は南九州・沖縄、北海道。北関東で高く、中部エリアで低い
  • 東西の27県は、遠方からの魅力度評価が低いレベルにとどまる

今回は、それぞれの居住地域に分類される各都道府県をPRする際に、どんなキャラクターやタレントを使えば効果を発揮するのかについて、分析を試みました。

47都道府県の旗

マンガ原作系キャラは、地域を問わず好意度で上位に位置

まず、2023年2月実施の男女3-74歳を対象とした「キャラクター定量調査2023」結果を用いて分類した12箇所の居住地域別にみた、好きなキャラクター純粋想起結果を紹介します(図表1)。

図表1.  好きなキャラクター(作品)純粋想起結果 (男女3-74才全体:居住地域別)

好きなキャラクター(作品)純粋想起結果1 (男女3-74才全体:居住地域別)好きなキャラクター(作品)純粋想起結果2 (男女3-74才全体:居住地域別)

地域によって順位の変動はありますが、「スヌーピー」や「ポケモン」など、おおむね上位陣の顔触れは共通しています。

その中でマンガ原作系(上図で青く網掛け)に注目すると、殆どの地域で5位以上の「ドラえもん」をはじめとして、「ワンピース」が東北で2位、南関東で10位、東京都で3位、甲信越静で1位、北陸で6位、東海で6位、近畿で8位、中国・四国で1位、北部九州で4位、南九州・沖縄で4位。「鬼滅の刃」が北関東で1位、南関東で6位、南九州・沖縄で10位。「SPY×FAMILY」が北海道で2位、近畿で10位。そして「ドラゴンボール」が東北で6位、南関東で10位、中国・四国で6位、と上位を占めています。

また、「ぐんまちゃん」が北関東で4位、「くまモン」が近畿で6位、中国・四国で8位、北部九州で4位、南九州・沖縄で2位と、近隣地域ではご当地キャラも浸透しているようです。

マンガ原作系キャラの純粋想起が多い東京都と東海地方

今回の調査対象者1,150名のうち2名以上に純粋想起された計161キャラクターについて、どんなタイプで構成されているのか、12箇所の居住地域別に内訳を算出しました(図表2)。

「マンガ原作系(日本全国の25.5%)」が特に多いのは東京都(33.0%)と東海(32.6%)で、少ないのは北海道と北関東(ともに20.8%)です。東京都は「絵本・ゲーム等原作系」と「オリジナル系」が少なく、東海は「ファンシー系」も多い一方で「絵本・ゲーム等原作系」が少なくなっています。「ファンシー系」は、東北や中国・四国で特に多く、他にも北海道や北部九州で多いようです。

図表2. 居住地域別:「好きなキャラクター(作品)」のタイプによる構成内訳

居住地域別「好きなキャラクター(作品)」のタイプによる構成内訳

人気タレント・有名人の顔触れは共通するも、地元出身者に支持

続いて、12箇所の居住地域別にみた、好きなタレント・有名人の純粋想起結果を紹介します(図表3)。

地域によって順位の変動はありますが、男性お笑い芸人や男性アイドル、男女俳優など、おおむね上位陣の顔触れは共通しています。その中で、北海道での大泉洋さん人気は流石です。他にも北関東での「back number」など、地元出身タレント・有名人への支持が幾つかの地域で目立っています。

図表3:好きなタレント・有名人純粋想起結果 (男女3-74才全体:居住地域別)

好きなタレント・有名人純粋想起結果1 (男女3-74才全体:居住地域別)好きなタレント・有名人純粋想起結果2 (男女3-74才全体:居住地域別)

好きなタレント・有名人タイプのトップは「男性お笑い芸人」

キャラクターと同様に、今回の調査対象者1,150名のうち2名以上に純粋想起された計214組のタレント・有名人について、どんなタイプで構成されているのか、12箇所の居住地域別に内訳を算出しました(図表4)。

「男性お笑い芸人(日本全国の21.5%)」が特に多いのは北海道・東北、東京都、東海、九州で、お笑いの本場である近畿は平均レベルにとどまっています。「男性俳優(日本全国の20.1%)」は北陸で多く、北海道・東北、南九州・沖縄で少ない、「女性俳優(日本全国の15.4%)」は東海、中国・四国、南九州・沖縄で多く、北海道で少ない、「男性アイドル(日本全国の7.5%)」は東北や北部九州で多いなど、地域による違いがあります。ただそれらが意味することについては、さらなる分析が必要なようです。

図表4. 居住地域別:「好きなタレント・有名人」のタイプによる構成内訳

居住地域別:「好きなタレント・有名人」のタイプによる構成内訳

今回は以上です。地域による違いは、サンプル数が少ないこともあってか解釈が難しい結果となりましたが、現在企画中の新たな定量調査に仮説を反映させる形で、引き続き分析を続けていきます。それでは皆さん、よいお年をお迎えください。

<第2部 バックナンバー>
第18回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(2)
第17回:地域によって異なる? キャラクターやマンガへの好意度と関連行動(1)
第16回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(3)
第15回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(2)

第14回:調査で解明する、エンドーサー(宣伝マン)としてのキャラクターの可能性(1)
第13回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(ご当地キャラ&タレント・有名人&Vtuber編)
第12回:純粋想起による2023年の好意度ランキング(キャラクター全般&企業キャラ編)
第11回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(3)
第10回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(2)
第9回:さまざまなタイプのキャラクターファンが、どのようなプロフィールを持つのか分析する(1)
第8回:2023年トレンド予測・キャラクター活用は5つの流れで進む
第7回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第6回:拡がるVtuberの活動領域とその実像を分析する(前編)
第5回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(後編)
第4回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(中編)
第3回:Z世代のマンガ原作コンテンツへの支持傾向と消費行動(前編)
第2回:ティーン・ヤング層に人気のマンガは、ターゲットにどんな体験を提供するか
第1回:男子ティーン・ヤング中心に人気のマンガコンテンツ。女子ティーンからコアな支持を集める作品も

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第1部 連載記事一覧

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授を、駒澤大学や福井工業大学で講師を務め、法政大学経営大学院でMBAを取得して、キャラクターやアニメコンテンツに関する企画提案・分析業務でも活動中。2022年4月からは、福井工業大学の環境情報学部経営情報学科でマーケティングやメディア論の教授として着任。

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