さまざまなビジネスシーンで耳にする「マーケティング」という言葉。あまりにも広範囲にわたって使われているため、受け手の認識も人それぞれ。まっさきに理論や分析を思い浮かべる方、戦略についてイメージされる方、「デジタルマーケティング」「マスマーケティング」などの概念を連想される方、「Youtubeマーケティング」「Instagramマーケティング」などの手段について考えるという方、あるいはぼんやりしたイメージしか持てない方などなど、広がるイメージも人により異なるのではないでしょうか。
「◯◯マーケティング」のような派生した用語も多数あるため、「頭の中で整理がつかない」とお感じの方も多いことでしょう。
この記事では「マーケティング」という言葉の本来的な意味だけでなく、派生した「◯◯マーケティング」などの用語も体系的に整理しています。さらにマーケティングの王道的なプロセスと、成功させるためのポイントにも触れています。マーケティングの概要が理解できる、また実際にマーケティング活動を行う際の指針になる、2023年の超入門記事としてまとめましたので、あらためて参考にしてください。
マーケティングの定義
「マーケティング」とは、企業がモノやサービスを顧客に買っていただくために行うすべての活動を指しています。その中には、「市場調査」から「商品開発」、さらに「戦略立案」、広告宣伝や店頭・EC施策などの「戦術展開」、そして「営業」「アフターサポート」に至るまで、あらゆる事業活動が含まれています。
そのためか、所属する部署などによってどの部分を大きくイメージするかが異なってきます。たとえば、マーケティング部門の方がもっとも意識するのは「戦略立案」や「戦術展開」になるでしょう。
しかし実際には、その企業の直接部門として事業活動に関わっているすべての人が、マーケティングと無関係ではないのです。マーケティング活動はマーケティング部門だけによって行うものではないという認識は、活動する上で重要となります。
カテゴライズすることでわかること
「◯◯マーケティング」という用語は、現在たくさんあるだけではありません。今後も新しい「◯◯マーケティング」が次々に生まれることでしょう(もちろん衰退してしまうものもあるでしょう)。
そんな中で、「◯◯マーケティング」や「△△マーケティング」などについて議論しているとき、ふと「このような検討のしかたでいいのだろうか?」と違和感を覚えたことはないでしょうか。
それは、別々の領域に属している「◯◯マーケティング」を一緒にして論じているからかもしれません。ここからは数ある「◯◯マーケティング」をさまざまな視点からカテゴライズしてみます。それぞれが持つ目的やレベル感が明確になり、頭の中を整理することにつながります。
「相手先」によるカテゴライズ
まずは生活者や利用者がターゲットとなっていく以前の、その事業の「相手先」による分類です。よく使われるのは、一般の生活者を相手先とする活動を指す「BtoCマーケティング」と企業や法人などを相手とする「BtoBマーケティング」です。ご存じの通り、この両者には戦略立案や施策に大きな違いがあります。
そのほかにも、相手先という視点では「インターナルマーケティング」などがあげられます。これは「インターナル」が意味するとおり、「企業内部」に向けたマーケティング活動です。BtoBもBtoCも相手は顧客ですが、ここでは従業員を相手先とし、従業員の満足度を高めたり、ビジョンや知識、技術を共有する仕組みをつくります。これによって事業活動の質を高め、結果として顧客満足度をアップし、収益や売上も上げていくことが目的です。これとは逆に、通常の社外に対するマーケティングが「エクスターナルマーケティング」です。
「活動範囲」を視点としたカテゴライズ
次に、「活動範囲や領域」を視点としたマーケティングをカテゴライズしてみます。「デジタルマーケティング」は、デジタルテクノロジーが及ぶ範囲の活動領域で行われるマーケティング活動を指します。その領域は、インターネットという環境でもあり、PCやスマートフォン、デジタルサイネージなどのデバイスでもあり、WEBやアプリなどのプラットフォームでもあります。
同じ意味で「WEBマーケティング」は、活動範囲をWEBに絞り込んだマーケティング活動であり、デジタルマーケティングの一部であるといえます。
同じ視点でカテゴライズされるマーケティングは他にもあります。以前よりも存在感は薄くなりましたが、ディストリビューターや小売業者など流通チャネルという活動領域に働きかける「チャネルマーケティング」などです。
「基本方針」を示すカテゴライズ
「ターゲットを誰にするのか」など、基本方針を示したマーケティングです。
代表的なのが、ひと昔までのマーケティング活動を支えてきた、言わずもがなの「マスマーケティング」です。「マス(mass)」は、「大きなかたまり・集団」といった意味あいから「大衆」を指すようになった言葉です。マスマーケティングとはマスへのマーケティング、つまり「ターゲティングを行わないマーケティング」であり、不特定多数の消費者に向け大量の商品を画一的なアプローチ方法(たとえばテレビ広告などのマスメディア)を用いて販売する、という基本方針を示した活動です。
「One to Oneマーケティング」では、正反対に消費者ひとりひとりをターゲットとします。そして個々のニーズを読み取り、それぞれに対して最適なコミュニケーションを行うことによって目的を達成するマーケティング活動です。 当然手間ひまが大きくかかる方法なため、なかなか定着しない問題点もありましたが、最近ではデジタルマーケティングの側面からツールなどの環境が整い、多くの企業が導入しています。
「ファンマーケティング」は、その企業のサービスやプロダクトを愛してくれるファン(顧客)とともに、事業を発展させていくマーケティングです。ファンと共創しながら事業を拡大したり、クチコミによりさらに新しい顧客を連れてきてもらったり、サービスの改善を進めたりすることで、事業をさらに前に進めていくのがねらいです。つまりコアとなるターゲットが、「いまいるファン」ということになります。
「手法」としてのカテゴライズ
次は「手法」としてのマーケティングです。この後に出てくるのが「手段」としてのマーケティングですが、「手段」は 具体的な目的を達成する方法を指します。一方、手法とはその前段の「やりかたに関する大まかな方針」ととらえることができます。つまり、ここでは粒度の大きいものが「手法」、小さくなったものが「手段」であると考えています。
たとえば、こちらからプッシュして成果を出すのではなく、顧客から自然に興味・関心を持ってもらい、最終的に購入につなげたりファンになってもらう、というやりかたの方針を意味している「インバウンドマーケティング」は、このカテゴリにあたります。
「コンテンツマーケティング」は、潜在顧客にとって価値の高いコンテンツを提供することで見込み顧客をつくり、購買に繋げるマーケティングであり、短期的ではなく中長期的に顧客を育てていく手法です。コンテンツマーケティングはインバウンドマーケティングの中に含まれる、とされることもありますが、方針であってもまだ具体的な手段とまではいえないでしょう。
「SNSマーケティング」もここにカテゴライズことができます。SNSマーケティングは、「SNSという人と人のつながりによって構築された環境の中で、サービスや商品を購入するに至るしくみづくりを行う」という手法です。
「手段」としてのカテゴライズ
続いては、目的を達成するための具体的な「手段」としてのマーケティング活動です。たとえば、コミュニケーション手段としての活動やそのノウハウを指す「動画マーケティング」や「メールマーケティング」などです。人為的に口コミを発生させることをねらう「バズマーケティング」もコミュニケーション手段としての活動です。
「オウンドメディアマーケティング」という言葉も、しばらく前によく使われました。インバウンドマーケティングやコンテンツマーケティングの手段としてオウンドメディアを活用するマーケティングですが、現在では企業がオウンドメディアを運営することはごく普通になったためか、ことさらに語られる機会は減りました。
「プラットフォーム」によるカテゴライズ
個別のSNSプラットフォームは、目的達成のための手段であり明確なツールです。「Twitterマーケティング」「YouTubeマーケティング」「LINEマーケティング」「Instagramマーケティング」「TikTokマーケティング」などは、いまや完全に定着しています。次々に新しいものが生まれてくるプラットフォームですが、「プラットフォーム+マーケティング」という言葉が生まれたら、完全に定着したといっていいでしょう。
カテゴライズすることで何がわかるのか
ここまで、主だった「〇〇マーケティング」を目的やレベル、フェーズなどの視点でカテゴライズしてきました。用語は他にもまだまだありますし、他のカテゴリもあることでしょう。では、このようにすることに、どんな意義があるのでしょうか。
まずは、カテゴライズによって、自分の行いたい活動を整理することができます。
「BtoCマーケティングにおいて、ファンマーケティングという基本方針を進めるため、SNSマーケティングを手法として採用し、動画マーケティングを手段に、プラットフォームを決めてYouTubeマーケティングを展開する」というように、体系的に確認できるのです。
また、このようなカテゴライズを念頭に置いておけば、外部の専門スタッフを起用するときなどに、「どのようなところに最も専門性があるのか」という確認をしやすくなります。「手法」における専門家なのか、「手段」あるいは「プラットフォーム」における専門家なのか、などを確認することによって、守備範囲を見定めることができるからです。
フレームワークを使ったプロセスの進めかた
ではここからは、実際にマーケティング展開を行う場合のプロセスについて確認していきましょう。マーケティングにおける「戦略」と「戦術」に該当する部分です。
マーケティングプロセスについてはさまざまな例示や解説がありますが、ここではもっともよく使われる以下のプロセスを、フレームワークを活用しながら紹介します。
- 市場分析(R)
- セグメンテーション(S)
- ターゲティング(T)
- ポジショニング(P)
- マーケティングミックス(MM)
- 実施と管理
マーケティングのプロセス
市場分析(R)
自社の製品やサービスについて社内および社外の環境を把握し、戦略策定につなげるために、マーケティングでまず行うべきとされるプロセスです。
中でももっともよく知られている分析方法がSWOT分析です。SWOT分析とは、以下の4つの領域に自社の事業の現状をあてはめ、好影響と思われる要因と悪影響と思われる要因を整理するフレームワークです。
- 強み:Strength(内部環境で好影響と思われる要因)
- 弱み:Weakness(内部環境で悪影響と思われる要因)
- 機会:Opportunity(外部環境で好影響と思われる要因)
- 脅威:Threat(外部環境で悪影響と思われる要因)
SWOT分析の4領域
要因はひとつとは限らず、考えられるだけ設定します。では、具体的な事例をこのフレームワークに当て込んでみましょう。ここでは地方の自社工場でワインを生産するワイナリーA社の新製品を対象として設定してみます。
強み:Strength
・自社栽培したブドウと自社ワイナリーで丁寧に生産、品質に自信あり。
・近年の受賞歴がある
弱み:Weakness
・小規模工場のため、大量生産ができない
・強力な流通ルートを持たない
機会:Opportunity
・国産ワインへの関心が高まってきた
・ナチュラルワインブームもあり、若年を含む広い層でワインブームが拡大している
脅威:Threat
・同じ産地のワイナリー間で、競争が激化している
・特に若年層は移り気な傾向がある
フレームワーク図にすると、このようにわかりやすくなります。
SWOT分析の例
この分析が終わったら、内容を反映して製品やサービスに対するコンセプトを規定します。ねらうニーズや顧客イメージ、自社の強みなどが明確であり、製品やサービスが端的にわかるような内容が望ましいです。上記の例なら、「ナチュラルワインブームをきっかけに本格的なワイン好きになった人に向け提供する、こだわりの素材と製法で海外ワインに負けない国産ワイン」というような規定です。
なお、SWOT分析は最もポピュラーな市場分析方法ですが、このほかにもCustomer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの要素から環境分析を行う3C分析や、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つから環境分析を行うPEST分析などがあります。
セグメンテーション(S)
「セグメンテーション」とは、区分することを意味しています。マーケティングにおけるセグメンテーションは、ターゲティングを行う前段階として、市場にいる顧客をさまざまな視点から分類し、セグメントというグループを作ることです。そして、どのセグメントが自社の製品やサービスに対するターゲットとして有望なのか、から絞り込んでいく「ターゲティング」へと進んでいきます。
セグメンテーションを行うには、分類のための基準を決めていく必要があります。その代表的なものが以下の4つの切り口です。
- 人口動態変数:年齢、性別、職業、収入、家族構成、学歴など
- 地理的変数:国、都道府県や市町村、都市の規模、気候、文化や生活習慣、人口密度など
- 心理的変数:価値観、ライフスタイル、性格、趣味嗜好 など
- 行動変数:認知の有無、来店の有無や頻度、購入経験の有無や頻度など
セグメンテーションの際に、必ずしもこれらの要素をすべて使う必要はありません。製品やサービスと明らかに関係のあるものや重要と思われるものをピックアップし、グループ分けを行っていきます。
ターゲティング(T)
「ターゲティング」はセグメント(グループ)の中から最もアプローチすべきところを、市場として定めるプロセスです。図にすると以下のようなイメージです。
セグメンテーションとターゲットのイメージ
またターゲット設定に近いマーケティング活動に「ペルソナ設定」があります。ペルソナ設定は、ターゲットをより理想的な購入者イメージに近づけ、その人物像を具体的にする作業です。
ターゲット設定で解説したそれぞれの変数をより具体的にし、実在する個人として描き出すのですが、特に心理的変数(価値観、ライフスタイル、趣味嗜好など)を具体化することがポイントです。ターゲットだけではなくペルソナを設定することによって、顧客を深く理解し、潜在ニーズや行動パターンが把握できるようになります。
ポジショニング(P)
「ポジショニング」は、ターゲティングで設定した顧客に対し、自社の製品やサービスがどのようなポジションにあるのかを伝えるために必要なプロセスです。ターゲットに購入を決めてもらうためには、「競合と比較してどのような位置にあり、どのようなメリットがある製品やサービスなのか」を理解し、魅力を感じてもらわなければなりません。
ポジショニングの設定では、ポジショニングマップがよく使われます。前述のワイナリーを例として、2軸を使ったマップによるポジショニングをしてみましょう。2軸の内容は、「市場」「ニーズ」「自社の強み」のいずれかの要素から、反対となる内容で設定するとうまくいきます。
ポジショニングマップの例
ここでは横軸を価格(=市場要素)、縦軸を消費者の好み(=ニーズ要素)とした2軸にしています。すべての要素の組み合わせで作ると、3種類のポジショニングマップができることになります。
マーケティングミックス(MM)
戦略〜戦術の最終段階として、「マーケティングミックス」に入ります。マーケティングミックスとは、理想的なマーケティングを実施するためにマーケティングの要素を組み合わせ、戦術を作ることです。代表的なマーケティングミックスとして「4P」を紹介します。4Pとは以下の4つの大切な要素を指しています。
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- プロモーション(Promotion)
これまでの分析をもとに、この4つについて決定し、戦術として採用するわけです。では、同じようにワイナリーにおける4Pの設定例をあげてみます。
製品(Product)
・こだわりの素材と製法で作った高品質ワイン
・安定よりも個性的な味わいを目指す
・少量生産
価格(Price)
・中価格と高価格の中間の価格帯
流通(Place)
・品揃えに特徴のある高感度なワインショップ
・自社オンラインショップ
プロモーション(Promotion)
・個性的なラベルをモチーフにした店頭広告展開など
・ワインショップでのイベント販売
図にすると、以下のようになります。
4Pの設定例
なお、4Pは主にBtoCビジネスの場合の設定要素です。BtoBビジネスの場合は、「4C」を要素として決めることが一般的です。4Cとは、以下の4項目です。
- 顧客が感じる価値(Customer Value)
- 顧客が負担するコスト(Cost to the Customer)
- 入手のしやすさ(Convenience)
- コミュニケーション(Communication)
これらはそれぞれ4Pに対応しており、各要素を顧客の視点から言い換えたものです。
実施と管理
戦術が決定したら実施と管理のプロセスです。実施に関しては各戦術を適切に遂行すること、その後は運用管理と評価をしっかり行って次のマーケティングに反映することが重要です。このプロセスについては誰でもイメージがしやすいでしょう。
マーケティングを成功させるポイント
最後に、マーケティングを成功させるために、留意しておきたいポイントをまとめておきます。
商品やサービスの理念を明確にする
マーケティングプロセスでは「市場分析」から入るのが一般的ですが、実はその前に大切なプロセスがあります。それは、その事業のコアとなる「理念や想い」を明確にすることです。これがマーケティング戦略の前提になります。
その重要性は、マーケティング方針に影響を与える点だけではありません。消費の主役がZ世代になってゆく今後、顧客が理念を受け取りそれに共感することによって信頼を生んだり、購入の最終決定につながったりする傾向は、ますます強くなるでしょう。ぜひ事業の前提となる「理念や想い」を明文化しておくことをおすすめします。
マーケティングプロセスを適切に進める
前半で解説したように、現在ではさまざまなマーケティングの手法・手段が登場し、その効果が広くPRされるようになっています。自社のサービスや製品を感覚的にとらえ、「この製品はInstagramマーケティングで売っていこう」と、「手段」としてのマーケティング(多くの場合は4Pにおけるプロモーション)からいきなりスタートしてしまうケースがよく見られます。このような場合、その手段を使ったもののうまく行かずにまた別の手段を試す...といった行動を取りがちで、予算をムダに使ってしまうリスクが高くなります。
たとえそのプロジェクトが小規模なものであっても、これまで解説した「サービスや製品の価値を明確化する」「ターゲットを絞りこむ」「価値をターゲットに伝える」などの必要なプロセスをきちんと進めることが重要です。
データを活用する
ご紹介してきたマーケティングプロセスは王道ともいえるものですが、デジタルマーケティングが進んだ現在では、そこにデータ要素が関係してきます。たとえばセグメンテーションにおける変数は、実際に取得したデータを参照することでより精度高く設定することができるかもしれません。各プロセスにおいてデータの活用を進めることで、さらに成功の確率は高まるでしょう。
プロジェクト型の組織をつくる
最初に触れたように、顧客が実際にモノやサービスを買うための要素は、あらゆる事業活動のプロセスと関係しており、マーケティング活動はマーケティング部門だけで完結しません。
また前項でお伝えしたように、データが大きな位置をしめる現代のマーケティングでは、データを扱う部門同士がデータを連携したり共有したりしなければ、一貫したマーケティング活動ができません。
したがって、マーケティング(特にデータ活用など)においては、マーケティング部門だけに限定しないで進めるプロジェクト型の組織づくりが、より一層重要となってくるでしょう。
筆者プロフィール
C-station編集部
マーケティングの基礎知識、注目キーワードの解説やマーケティングトレンドなど、日々の業務に役立つ記事をお届けします。