2018.06.08

男性マンガとコマーシャル~企画もマンガのように考えるべき│ブルボン小林さんが語る男性マンガとコマーシャル

商品を訴求する際に、無数の選択肢がある中でマンガとのコラボを選ぶのは、どのようなメリットがあるのか。ブルボン小林さんに、マンガのポテンシャルを生かすためのポイントをうかがいました。
起用はダジャレのようなものでもいい

昔やっていたフェザーのカミソリのコマーシャルが『はじめの一歩』を起用していたんだけど、あれは一歩がフェザー級だからだと思うし、つまりダジャレなんですよ。

フェザーに限らず、テレビのコマーシャルって、シャレみたいなくだらないことでもヒットする。
もちろん、『はじめの一歩』がこれこれの世代に読まれているとか、ちょうど髭をそる若者世代に訴求するとかいうマーケティング的な言葉が、会議で出されたとは思う。

それも込みでゴーサインが出たに決まっているけれども、「こう訴求します」じゃなくて、「フェザー級で会社名がフェザー」っていうところがポイントじゃないと面白くない。でないと印象に残らない。入り口がマーケティングで始めちゃ、マンガの甲斐がないっていうのかな。

マンガって、どんなにシリアスなものでもどこかにデフォルメとか誇張がある。人間の手で描いた線で、デジタルでも指で動かした線で、誇張して描く。つまり、その誇張というのは、必ず現実よりも滑稽だったり、過激だったりする。そうでなきゃ、現実をやりゃいいわけだから。

ダジャレというか、現実よりくだらないっていうか、それを大事にしてほしいよね。もしコマーシャルみたいな場所でマンガを使うのであれば、やる側が悪ノリしているとか、マンガのように考えないと。

「マンガのように」っていうのは、マンガの筋のようにではなくて、現実より弾んでいたり、過激だったり、滑稽だったり、くだらなかったりっていうこと。マンガのように考えないと楽しくないし、マンガを使う意味がない。マーケティングは2番手、3番手の保険のようなものでいい。

マンガ家の作画が過小評価されている

あと思うのは、マンガ家はもっとテレビに出たらいいのにということ。テレビCMの15秒じゃ難しいけども、マンガ家が人気キャラクターを描くと、誰もが「おおっ!」ってなるから。

身近なマンガ家さんと飲んでいると、急に「それってこういうこと?」って、落書きのように何か描き始めることがある。そうすると、それまでの会話は忘れて、みんな「うわーっ!」と絵で大盛り上がりになる。

マンガ家が大したことと思っていないところに、実はものすごい価値があるから、それを使わない手はないよね。

プロのマンガ家たちの「描く」っていうことの感動のポイントは、出来上がった絵が上手いのはもちろんなんだけど、その絵を描くのが早いってことでね。『ゲゲゲの女房』とか『バクマン。』とか、マンガ家がモデルの作品で映像化されたものがあるけど、一番ネックになっているのは、マンガ家じゃない役者は、絵が遅いんだよ。

『ゲゲゲの女房』でも一生懸命、こういうふうに描いたら水木しげるっぽくなるみたいなシーンをやるんだけど、描き終えるまでがどうしても、もったりしてて、そこに感動がない。

『バクマン。』でも、一番重要な場面で代役を立てずに佐藤健が絵を描いていて、それ自体はすごく頑張ったと思ってるんだよね。なにげないけど大事な輪郭を描かなきゃいけなくて、「そこは息詰まる撮影だった」って大根仁監督も言っていたけど、同時に早さのことも言っていた。「どうしてもスピードで、それができない」って。

キャラ人気の時代だけど、キャラ以上にマンガ家の作画には価値がある。でも、うまく使われない。『浦沢直樹の漫勉』みたいな見せ方があるけど、コマーシャルにも切り離して使えることだと思う。

工程を見せることの面白さ

バラエティー番組でも、商品の製造工程を見せるものがこの5年くらいで増えたでしょう。例えば不二家の「ミルキー」だったら、シロップがアメにのばされてカットされて個包装されるまでの工場のラインを見せる。

そうすると感動するんだわ。だって、われわれは「ミルキー」をよく知っているから。アウトプットの最後だけしか見てなかったものが、急に工程が公開される。本当にあのかたちになったみたいにタレントも感心するし、テレビコンテンツとしてそういうのが増えてるってのは、面白いからだよね。

『漫勉』的なことが、どうカジュアルに面白く見せられるかみたいなことは、出版社や企業、代理店がもっと考えていいところだと思う。あんまりやっていくと、飽きられてくかもしれないけど。

ブルボン小林さん
1972年生まれ。「なるべく取材せず、洞察を頼りに」がモットーのコラムニスト。2000年「めるまがWebつくろー」の「ブルボン小林の末端通信」でデビュー。現在は朝日新聞夕刊(関東、九州、北海道)、週刊文春、女性自身などで連載。小学館漫画賞選考委員。著書に『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』(ちくま文庫)、『増補版ぐっとくる題名』(中公文庫)、『ゲームホニャララ』(エンターブレイン)、『マンガホニャララ』(文春文庫)など。

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