デジタルネイティブのZ世代たち。そのなかで、ファッション誌を手に取る読者とは、どのようなユーザーなのでしょうか?
今回は、Z世代(15~25歳)の女性を対象にした女性ファッション誌(32誌)の読者を「ファッション誌読者」として、その特徴をビデオリサーチ社の生活者データベース「ACR/ex」を使って浮き彫りにしてみたいと思います。
文/株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューション部 寺出 朋子
ACR/exでは、日常のメディア接触や意識項目(生活意識やメディア意識、商品関与や趣味など)を捕捉しています。この中から、「Z世代女性のファッション誌読者」と、特に条件を設けない「Z世代女性全体」とで項目を比較し、違いを見ていきます。
ファッションは「自己表現」、SNSでの発信も得意なZ世代のファッション誌読者
ACR/exの「生活意識(ファッション)」項目を見ると、Z世代女性のファッション誌読者の約77%が自分を「魅力的に見せるためにおしゃれをする」と回答しており、この割合はZ世代女性全体より約10ptも高いことが分かります。
図1 ファッション・情報発信の意識(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、女性15-25歳)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
さらに、Z世代女性のファッション誌読者は約79%が「ファッションは自己表現する手段」と考え、65%(Z世代女性全体より+約10pt)がメイクも「自己表現に重要なアイテム」と考えています。
Z世代女性のファッション誌読者が、ファッションやメイクの情報に敏感なのは、ファッションやメイクで「自分を表現したい」というモチベーションがあるからなのでしょう。
また、Z世代女性のファッション誌読者の約半数が「ファッションや言葉で自身を表現すること」が得意と感じているようです。加えて、「良いと思ったことは積極的に発信する」や、SNSは「自分の生活をアピールできる」ツールという意識も、Z世代女性全体と比較しても高いことが見受けられます。
このデータから、「Z世代女性のファッション誌読者」の特徴は、以下のようにまとめられそうです。
・ファッション、そしてメイクへの関心が高い!
・SNSを通じた自己表現、情報発信が好きかつ、得意!
Z世代のファッション誌読者は、Twitter・Instagramのアクティブな投稿者
では、実際に、Z世代女性のファッション誌読者はどれくらいSNSを活用して発信しているのか、その実態を見てみましょう。
図2 1か月以内のSNS利用率(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、女性15-25歳)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
SNS(Twitter・Instagram・TikTok)の利用率では、どのSNSもZ世代女性のファッション誌読者の方が高く、積極的なSNS活用がうかがえます。
Twitter・Instagramは元々Z世代での利用率が高いSNSですが、Z世代女性のファッション誌読者ではさらに高く、どちらも70%以上が利用しています。特に、Instagramの利用率約78%はかなり高い利用率であることが分かります(Z世代女性より+約11pt)。
SNSへの投稿率も高い、Z世代のファッション誌読者
次に、各SNS利用者をベースに定期的な投稿率を見てみると、Z世代女性のファッション誌読者では、Twitter利用者の約67%、Instagram利用者の約72%が定期的な投稿をしています。
図3 SNSの定期的な投稿率(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、女性15-25歳、各SNS利用者ベース)
※全国7地区:東京50Km圏・関西・名古屋・北部九州・札幌・仙台・広島
これは、Z世代女性全体の各SNS利用者と比較しても高い投稿率で、閲覧のみではないアクティブなユーザーが多いことが分かります。
これらのデータから、Z世代女性のファッション誌読者の「SNS活用の現状」は、以下のようにまとめられそうです。
・複数のSNSアカウントを所有し、さまざまなプラットフォームで積極的に情報発信をしている!
・特に、Twitter・Instagramでは頻繁に投稿するアクティブなユーザーが多い!
推しをはじめ、"好き"が行動につながる
さらに、Z世代女性のファッション誌読者の特徴をもう少し掘り下げてみました。ここでは、ACR/exの「生活意識」や「購買特性」の項目から、Z世代女性のファッション誌読者とZ世代女性全体とでスコア差の大きい項目をピックアップしました。
図4 Z世代女性のファッション誌読者の特徴(ACR/ex2021年4-6月、全国7地区、女性15-25歳)
4つの特徴(スコア差)を見ると、総じてZ世代女性のファッション誌読者は、自分の好きなものがはっきりしていて、好きなものやハマったものにエネルギーを注ぐ傾向が強く見られます。"好き"が行動につながるケースが多いため、「衝動買いをすることが多い」もZ世代女性全体より+8.3ptとなっています。
また、「推し」(好きなタレント)への注目度の高さも興味深いところです。「好きなタレントの広告に注目する」「好きなタレントの広告商品は試したい」という回答率は非常に高く、推しへの応援は、広告領域にもおよぶことが見て取れます。
そのため、Z世代女性のファッション誌読者をターゲットにしたプロモーションは、いつも見ている「ファッション誌」と彼らの「推し」を組み合わせることで、効果を高めることができると言えそうです。また実際の購買行動だけではなく、誌面や商品を気に入れば、SNSを通じた情報発信も期待できるでしょう。
Z世代に愛されるメディアと組むことで、情報は届きやすくなる
いま、Z世代では、SNSにおける一般ユーザーの投稿(UGC)が大きな影響力を持っており、前回ご紹介したように、UGCをきっかけにコンテンツや商品を知ったり、購入したりという動きが出てきています。
たとえば、広告を見て実際に使ってみたら良かった、という投稿もUGCの一種です。しかしUGCは、あくまで一般ユーザーの自発的な投稿なので、発信したいという欲求やモチベーションによって発信されるものです。そのため、UGC×マーケティングには、そのコンテンツや商品が好きで、発信して広めたいという熱を持った"ファン"の存在が不可欠です。
そのなかでZ世代女性のファッション誌読者は、ファッションやメイクへの関心が高く、該当ジャンルにおいてはファンになってくれる可能性が高い層とも言えるでしょう。そんな彼女たちの興味を惹くためには、彼女たちが日頃から親しんでいるZ世代に愛されるメディアと組むことで、情報は届きやすく、そして拡散しやすくなるのではないでしょうか。
<著者プロフィール>
株式会社ビデオリサーチ マーケティングソリューション部
寺出朋子(てらで・ともこ)
2019年、株式会社ビデオリサーチ入社。メーカー等広告主や広告会社をクライアントに、広告効果測定やブランディングに関するリサーチに従事。同時にビデオリサーチのシンクタンク"ひと研究所®"の若者研究チームメンバーとして、若者のコンテンツ受容に関する研究に携わる。