2018.05.24

少年、少女の区分がなくなった│ブルボン小林さんが語る男性マンガの隆盛と変遷 ポイント④

ポイント④少年、少女の区分がなくなった
草食化するキャラクターたち


その後、揺り戻しのように、2000年以後の、あるいは2010年代のマンガって、何でもありになったっていうのかな。少年と少女の区分もなくなってきた。「ジャンプ」は少年マンガだけど、いまは読者に女性がたくさんいますから。

そして、マンガの主人公も草食系になっていったわけですよ。お調子者で、女の子にロックオンして、すぐ鼻の下を伸ばしちゃうような主人公がいなくなった。『金田一少年の事件簿』の金田一少年が、まさに典型でね。2000年代にも清潔な顔のジャニーズタレントが実写ドラマ版で演じていたんだけども、パンチラやおっぱいを尊ぶ演技が、そこだけは違和感があってね(笑)。今の高校生って、そんなじゃないから。読めばいまだに面白いんだけど。

でも、そのシンボリックな描き方っていうものが、リアリティーがなくなって、同じバスケットマンガで、『SLAM DUNK』の後に「ジャンプ」で描かれた『黒子のバスケ』は、全員涼しい顔をしている。マネージャーはいるんだけど男勝りで、選手もその子にいいところを見せようみたいなのがない。

女性に好かれない表現っていうのがなくなりましたよね。ゴレンジャーでいうと、キレンジャーみたいなキャラクターがいなくなった。全員アカレンジャーかアオレンジャーみたいな顔でないと、表現ができない。

ヒーローからチーム男子へ

そして、ヒーローがチーム男子になってきた印象がある。全てのマンガがそうではないけれど、昔は主人公が1強になる傾向にあった。例えば『鉄腕アトム』は、アトムだけが七つの能力を持っていて、ウランちゃんやコバルトには能力がない。

いまのマンガは、主人公があらゆる能力を駆使して困難に立ち向かうものではなくなった。『黒子のバスケ』もそうだけど分業制で、どのヒーローがお好みですかっていうふうになっている。


少年・青年マンガにおけるヒーロー像の移り変わり

講談社だと、『おおきく振りかぶって』もそうだよね。表現が緻密になっていった以後の、魔球でやっつける野球マンガじゃなくなったっていう意味でもそうだし、メンバー全員に協調性がある。チーム男子だけど無個性じゃない。全員にちゃんと個性が振り分けられている。

マンガ的な醍醐味としては、ちょっとずつキャラに誇張があるわけ。ものすごいコントロールがいいけど、すごい弱気で自信がない、みたいなさ。必殺技がない時代だけども、現実にはそんなにコントロールのいい選手はいないから、そこはマンガっていうものを駆使している。でも、女房役の男の子とか、ちびっ子のスラッガーとか、ちょっとずつの微差の個性ですよね。微差だけど繊細に描くことで、無個性で誰が誰だか分からないということはない。


ヒーローでなくても、例えばギャグマンガの『監獄学園』も、笑わせる役が入れ替わり立ち替わりになっていて、みんなに個性がある。仲が良いんですよね。

バナーでわかりやすいマンガがヒットする


僕は、マンガ喫茶ですごく無作為にマンガを読むんですよ。あれとあれは読まなきゃというマンガをまず押さえたら、新刊コーナーでジャケ買いじゃないけど、気になったものを手に取る。

そうすると、何かノリがおかしいというか、どのマンガにも似たテイストを感じる。調べると、ネットのバナーをクリックさせるのに力を入れてきたマンガが、すごく多いんだよね。SNSでバズりやすいマンガというか、コンパクトに面白さが言える作品が増えた印象がある。

「いまから殺し合いをしてもらいます」的なマンガが妙に増えてるのも、バナーGIFの少ない情報量で引き込めるからでしょう。試し読みで殺し合いが始まったほうがわかりやすいというか。

僕は最新のものについていくのが遅いから、マンガの世界のドラスティックに変わっていく感じをつかみ損ねてるかもしれない。でも、バナーがヒットと関係しているのは確か。バナーで気になる言葉を言えたマンガが、売れるマンガとも言える。

ちょっと前の、「うわ......私の年収、低すぎ......?」的なマンガというか。そういう、誰もが思い当たる節みたいなことを持っているマンガがバズっていく。そればかりでもないんだけど、気が付いたら、かなりマンガの棚を占めている。

初出がウェブで、何万アクセスとか何万リツイートとかの実績を積み上げると出版社からオファーが来て紙版を出すみたいなことも、ここ数年で増えた。

バナーで興味を持たせるのは構わないんだけども、出オチというか、そこがピークになっちゃうマンガばかりになってはよくないな、と。危惧っていうと大げさだけども、思います。マンガは、次回に興味をもたせる「引き」というテクニックを大事にしてきてるけど、読書って、引きだけではない。残るのはそのテクニックと無関係でしょう。バナーで興味をそそったとして、それから先に、豊かなものを描いてほしいですよね。

ブルボン小林さん
1972年生まれ。「なるべく取材せず、洞察を頼りに」がモットーのコラムニスト。2000年「めるまがWebつくろー」の「ブルボン小林の末端通信」でデビュー。現在は朝日新聞夕刊(関東、九州、北海道)、週刊文春、女性自身などで連載。小学館漫画賞選考委員。著書に『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』(ちくま文庫)、『増補版ぐっとくる題名』(中公文庫)、『ゲームホニャララ』(エンターブレイン)、『マンガホニャララ』(文春文庫)など。

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