2021.03.22

#3 WEB広告に関するデータ分析のステップと、今後のデータ活用を考える

<連載>データをチカラに アドテクノロジーとWEB広告

WEB広告運用とデータ活用は二つで一つと言っていいほど密接に関わっています。WEB広告運用を補助する外部ツールは数多く登場していますが、どのツールを選ぶべきなのか、そのツールをどのように使い、取得したデータをどう活用するのかについて悩むマーケターや広告担当者も多いようです。
今回はそんな広告担当者の皆さまのヒントになるよう、WEB広告にまつわるデータ分析のステップと、それぞれに関する留意点などを解説します。あわせて、昨今話題のCookie規制やAI分析についても触れていきます。

WEB広告とデータを結びつけるための基礎知識

WEB広告運用を経験した方は、そのWEB広告をより効果的なものにするために、自然とデータを参照することになると思います。そしてそのデータをどのように扱うべきか悩み、外部の分析ツールやデジタル・マーケティングの専門サービスに頼るものの、「思ったように改善が進まない」と感じることも多いようです。

外部のツールやサービスを効果的に活用するためには、担当者自身がデータの扱い方を理解したうえで、適切な頼り方をしなければなりません。この記事では、初めてデータ分析に向き合う方や、これから外部ツールの利用を検討している方を対象に、WEB広告運用のプロセスとデータの種類について、またそれらに関わる留意点をまとめます。

WEB広告運用とデータ活用の第一歩は「目標設定」

データに向き合う前に、まずやってほしい第一歩が「目標設定」です。データ自体は加工前の素材にあたるもので、目標がなければ加工方法を導き出すことができません。
目標を立てるときのポイントは、目標を一つに絞ることです。たくさんの課題が見える場合は、最終的な目標を一つ立てたうえで、その目標との因果関係を結んで課題を整理してください。解決することで起こるインパクトが最も大きいものを目標に掲げるとよいでしょう。

例えば、商品Aの売上を伸ばしたい場合、商品Aの広告をクリックするユーザー数を増やすのか、それとも広告をクリックしてから商品購入に至るユーザーの割合を増やすのかを区別すると、それぞれ異なる施策が必要でしょう。これらを混在させて取り組んでしまうと、適切な施策が打ち出せないだけでなく、効果検証も難しくなります。

データ分析に目を取られると、この目標設定のステップをおろそかにしてしまいがちですが、効果的なデータ分析は適切な目標設定の上に成り立ちます。また、データに関わる多くのプロセスは自動化できますが、前提となる目標の設定は人の思考から切り離すことができません。

データを扱う時の3ステップ

目標設定ができたら、いよいよデータに向き合います。ここからの工程は「取得」、「整理」、「分析」の3ステップに分けて考えていきましょう。また、最後の「分析」フェーズは、さらに「データの探索」と「目標達成のための分析」に分けられます。これらのステップそれぞれに特化または横断したツールやサービスがあることを理解し、自社の不足や課題を補う形で利用すると、予算の無駄遣いをせずにデータ分析を効率化できるはずです。

「取得」:WEB広告で扱うデータの種類とは

まず最初の「取得」に関して、WEB広告運用で主に扱うデータの種類を解説します。WEB広告の運用とは、言い換えれば商品を求めるユーザーに広告を配信し、購入を促すための施策と改善の繰り返しです。そのためには、ユーザーの行動履歴を保存したCookieデータを参照しなければなりません。Cookieデータは、取得する主体の違いによって下記の種類に分けられます。

1. ファーストパーティーデータ

ファーストパーティーデータとは、企業が自社で取得するデータのこと。ログインなどのアクションに際して取得した氏名や電話番号、ユーザーの商品購入履歴、あるいは自社WEBサイト上の閲覧数などがこれにあたります。

2. サードパーティーデータ

サードパーティーデータとは、データ収集を専門とするベンダーが収集し、企業に提供するデータのこと。複数のWEBサイトを横断したユーザーの閲覧履歴を収集し、そのユーザーの特性や趣味趣向をまとめたものがこれにあたります。多くのWEB広告にはこのサードパーティーCookieが組み込まれており、広告をクリックするなどのユーザーの行動は広告配信サーバーに記録されます。

このファーストパーティーデータとサードパーティーデータの二種は、利用する頻度が多いためよく耳にすることでしょう。
ちなみに、この他にセカンドパーティーデータとゼロパーティーデータと呼ばれるものも存在します。セカンドパーティーデータは、特定の他社によって収集されたデータを指します。つまり、他社にとってのファーストパーティーデータを自社のマーケティングに利用する際はセカンドパーティーデータと呼ぶわけです。

ゼロパーティーデータはユーザー自らが取得に協力したデータです。アンケート調査などによって取得されたデータはゼロパーティーデータと呼ばれます。ゼロパーティーデータは自動的に取得されるファーストパーティーデータと区別するために生まれた概念で、「同意取得済みファーストパーティーデータ」と呼ばれることもあります。

ここで、GDPR施行によってこれらCookieデータが個人情報と定義されたことに触れておきましょう。2018年以降、先ほど解説したCookieデータについて、取得及び利用に原則各個人の許可が必要になりました。個人の許可を前提とすると、これまでのデジタル・マーケティングの在り方は変容せざるを得ないでしょう。

具体的な例を挙げます。一度あるオンラインショップでTシャツを購入すると、その後に類似のTシャツや同ブランドの広告が頻出することは珍しいことではありません。これは、そのオンラインショップにて自動的に取得したファーストパーティーデータをもとに広告配信している状況です。あるいは、スポーツアイテムの広告が出ることもあるでしょう。それはサードパーティーデータによって分析され、Tシャツ購入の履歴も含めてスポーツを好む可能性が高いと判断して配信された広告かもしれません。これらの広告配信はそのユーザーの許可なくデータを取得され分析されたものですが、今後こういった広告配信をおこなうとプライバシーの侵害とみなされるわけです。

とはいえCookieデータの利用が全面的に禁止になったわけではなく、基本的には各ユーザーがデータ取得に同意していれば問題ありません。昨今Cookieデータ取得の同意を求めるポップアップが至るところで見られるようになったのは、各社のプライバシー保護対策というわけです。

2021年3月現在、頻繁に話題にされるのはGoogle Chromeの対応です。高いシェア率を誇るGoogle ChromeがCookie問題に対してどのような回答を出すかが、広告配信業界に多大な影響を与えるからです。現状、マーケターはGoogleから新たに提供されるソリューションを用いることで、安全性を担保しながらオーディエンスにリーチすることが可能だと言われています。

ともあれ、今後はこれまでとは大きく異なる仕組みの中で広告配信を捉えなおさなければならないことに変わりはありません。来たる新時代の未来予想図を、現在の情報から正確に描くことはできません。今後広告配信業界がブラウザの変化にどのように対応していくのか、逐一チェックしていく必要があります。

「整理」:分析前に必要なデータ整理

取得したデータを分析する前にやらなければならないのがデータの整理です。データの整理には、アナログで取得したデータのデジタル化や、分析に必要なデータの補完、データの分割や統合などが挙げられます。もとよりデータの保存先を統一しておいたり、分析に必要なデータを定期的に精査したりすることで、データの整理にかかる工数は削減できます。

「分析」:データの観測がポイント

データが整理できれば、あとは分析するのみです。この時、まず分析対象のデータがどんな性質を持つのか知るために、探索的な視点からデータをチェックするようにしましょう。
これは料理で例えるならば、素材を知る段階です。野菜や肉の性質を知ることで、どんな調理をすればよりおいしくなるかわかります。この下準備を経てから設定した目標と照らし合わせてデータを分析することで、広告運用の改善策が導き出せるはずです。

データの整理と分析の具体な工程については、設定した目標によって多くのケースが考えられるため、ここで示すことは容易ではありません。ただ、WEB広告運用に関わるサービスやツールの多くは、この「整理」と「分析」をサポートしてくれるものだということを理解しておくと良いと思います。
広告運用の目標設定とデータ取得が不十分な状態でサービスを利用すると、結局そのツールの機能を活かせない場合があります。また、何が不足しているのか自分で判断するためにも、データの取得と整理のステップは自社内で理解を深めておくほうが良いでしょう。

AIの強みを理解して活用する

"AI"を謳うマーケティングのデータ解析ツールの多くは、先ほど述べた「整理」と「分析」の工程を機械学習によって自動化し、マーケターの仕事をサポートするものです(中には分析結果から目標設定について提案するものもありますが、その提案を採用するかどうかは人が決めることです)。

AIが膨大なデータを客観的に学習することによって、広告配信を最適化したり、ターゲット層のペルソナを多面的に捉えて傾向を把握したり、より訴求効果のある広告手法やビジュアルを選定したりと、さまざまな手段が可能になります。AIの強みを理解して活用すれば、効果的かつ効率的なWEB広告運用が実現します。

そのために、AIの学習方法について触れておきましょう。AIの学習方法には大きく分けて3種あります。
まず「教師あり学習」の場合、正解とされる教師データを基準に学習を進め、今後起こりうる変化の予測や、データの分類を行うことができます。次に「教師なし学習」の場合は、AIは客観的に見たデータの類似性や規則性をもとにデータを分類するため、予測し得ない傾向を発見できます。最後に、「強化学習」は、設定された目的(スコア)を最大化させるための行動を学習することができます。何万もの戦略の試行を繰り返すことで、ゲームなどの勝率を高めるのもこの「強化学習」の領域です。
こうしたAIの学習方法を踏まえたうえで、自社データに対して何をしたいのか想像してみると良いでしょう。

AIを使う際の注意点は、プロセスがブラックボックス化することです。AIが導き出す答えがデータに基づいた客観的なものであることは確かですが、「なぜそうなったのか」説明することはなかなかできません。戦略は根拠によって成り立つものですから、何もかもAI任せというわけにはいかないことを念頭に置いておきましょう。

データを活かしたWEBマーケティングに挑む方へ

最後に、これからデータを活用したWEB広告運用に始める方に、失敗しないためのいくつかのヒントをご紹介します。

一つめは、マーケティング施策を進めると同時に、"データ人材"の育成にも注力してほしいということです。
昨今デジタル・マーケティングの重要性が高まるにつれ、データリテラシーの有無が企業力に大きな影響を与えるようになっています。データ活用に対してあらゆる選択肢があったとしても、その選択肢を検討できる人材が社内にいなければ最適の施策は導けません。やみくもに広告予算ばかり立てるのではなく、企業全体でデータを扱う風土やスキルを育てていくことが、今後は必要不可欠になるでしょう。

二つめは、外部ツールやサービスを利用する目的を明確にすることです。例えば、自社商品について各顧客の購入データを取得できているものの、そのユーザーがどんな趣味を持ち、なぜ商品を購入したのかがわからないとします。こうしたケースならば、そのユーザーの趣味趣向を分析できるデータを持つ外部ツールを用いると多面的にユーザーのペルソナを描けるでしょう。

具体的なツール例として、講談社が提供する広告ネットワーク・プラットフォーム「OTAKAD」を挙げます。「OTAKAD」は講談社が運営する多彩なメディアのデータをAI分析することで、読者層を"オタク性"によってカテゴライズします。こうしたユーザーカテゴリと自社商品購入データを紐づけて広告配信することで、顧客の理解を深めるとともに、商品に関心がある可能性の高いメディア読者層に訴求することができます。

そして三つめは、Cookie規制や廃止に対応できるツールやサービスを選ぶことです。講談社の複数メディアから得られるデータを分析できる上記プラットフォーム「OTAKAD」のように、データ取得許可済みの多くのデータを直接提供するサービスを利用することで、持続的なWEB広告運用が可能になるでしょう。

今回はWEB広告運用におけるデータの扱い方、及び広告運用で考えたい事項を段階別に解説しました。ここではデータ分析について限定的な解説をしましたが、アドネットワークや広告配信の概要について知りたい方は、下記のシリーズ記事もご覧ください。

>#1 アドネットワーク、DSP、DMP、ユーザーデータ...。WEB広告の基本とは
>#2 広告プラットフォームのトレンドと特色を知って結果につなげよう



筆者プロフィール
宿木雪樹(やどりぎ ゆき)

広告代理店で企画・マーケティングについての視座を学んだ後、ライターとして独立、現在は企業の魅力を伝える記事執筆を中心に活動。大学にて文化研究を専攻したバックボーンを生かし、メディアのトレンドについてフレッシュな事例をもとに紹介する。2018年より東京と札幌の2拠点生活を開始。リモートワークの可能性を模索中。

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