2020.10.21

最新調査で探る各種マンガコンテンツの「広がり」と「熱さ」| マンガキャラクター 活用の極意と最新事情<第6回>

今年は10月も終わりに近づくなか、天候不順な日が続きますが、皆さんお元気でお過ごしでしょうか。
前回は、講談社の主な少年マンガ、青年マンガ、女子マンガを対象にGoogleトレンドを使った過去10年間(2010年9月~2020年8月)の検索推移を調査、
●少年マンガはアニメ化やゲーム化、イベント、青年マンガはイケメン主演のドラマ化で検索数が急上昇する
●独立UHF局深夜枠での初アニメ化作品は、放送終了後の検索数減少が顕著である
●ドラマ化・映画化作品は、キャストのパワーでターゲットが広がり、検索数が激増する
ことなどをご紹介しました。

今回は、300に及ぶキャラクターについて、日本国内に居住する男女3~74才の2,000名を対象として9月17日(水)~23日(水)に実施した最新定量調査結果から、講談社の主な少年マンガ、青年マンガ、女子マンガの浸透状況を紹介します。
調査実施機関は「楽天インサイト」で、園児・保育園児~小学生(+中学生の一部)は、長子について母親が子どもの回答を聞きながら代理記入しています。

図表1. 「キャラクター定量調査2020」調査概要

少年マンガのメイン支持層とその動向

図表2は、講談社の少年マンガ計9作品の性・年齢別好意度です。横棒グラフ中のスコアはTOP2 BOX(4段階評価のうち「好き」+「やや好き」と答えた人の割合)による好意度で、当該キャラクターの非認知者も含めた全数ベースで算出しています。

図表2. 少年マンガ各作品の性・年齢別好意度(「好き」+「やや好き」)


やはり各作品とも男性で好意度が高くなっています。男女3~74才全体の好意度が39.6%と上記9作品で最も高かったのが「あしたのジョー」。男性成人層全般、そして連載当時に名ライバルキャラ・力石徹の葬儀など社会現象を目撃したであろう女性高年齢層から、今も圧倒的支持を得ています。
男女3~74才全体で39.5%と、現在マンガ連載中の作品で最も好意度が高かったのは「進撃の巨人」でした。テレビアニメや映画で何度も映像化されており、男女ティーンと男性成人層全般の幅広い層に支持されています。

ドラマ化やアニメ化で人気を博した「GTO」、今も長期連載中の「はじめの一歩」、何度もアニメ化された「FAIRY TAIL」は、ともに男性20~40代から支持されており、時間経過を経てファン年齢が上昇しています。「GTO」はF1(女20~34才)の支持も目立ちますが、これは2012年以降にリメイクされたドラマの影響かと思われます。

マンガ連載が最近終了し続編アニメを控えている「七つの大罪」「五等分の花嫁」、また現在連載中でアニメが最近終了した「ダイヤのA」は、ともに男子ティーンとM1(男20~34才)に人気です。これらの作品は共通して女子ティーンの支持も高く、この年代が週刊少年マガジンの主な読者層であることを反映した結果と言えます。「転生したらスライムだった件」はWEB小説を皮切りに月刊少年シリウスで現在連載中。展開媒体は異なりますが、同年代の男子ティーン、M1、女子ティーンに支持されています。
少年マンガ原作作品のメイン支持層は、男女ティーンとM1(男20~34才)、そして連載終了後も支持を続ける男性中高年層が一般的なようです。

青年マンガのメイン支持層とその動向

次は講談社の青年マンガ計9作品の性・年齢別好意度です。各作品とも男性成人層で好意度が高くなっていますが、女性成人層の好意度が高い作品もいくつかみられます。

図表3. 青年マンガ各作品の性・年齢別好意度(「好き」+「やや好き」)

男女3~74才全体の好意度が32.8%で、上記9作品中で最も高かった「コウノドリ」。女子ティーンとF1から支持されており、同年代男性のスコアを上回っています。これは二度にわたるドラマ化の影響で、今もコアファンが特に女性で多数存在することをうかがわせます。ドラマ化による女性コアファンの存在は、「きのう何食べた?」のF2(女20~34才)も同様です。

約10年前にドラマ化やアニメ化でファン層が広がった「神の雫」「GIANT KILLING」は、今はM1に支持される一方、女性層の支持が目立ちません。メディアミックスによるターゲット拡大効果がいつまで続くのかの手がかりを示す、興味深い結果といえます。
その意味では、現在アニメ化やコラボキャンペーンが盛んな作品は、更なるターゲットの広がりが期待できます。
例えば「はたらく細胞」は、男女ティーンとM1など、少年マンガ作品と同様のターゲットから支持されています。「ブルーピリオド」はまだ認知率も低く(男女3~74才で13.2%、M1で27.8%)好意度もM1で目立つ程度ですが、マンガ大賞や講談社漫画賞を今年受賞したことで、今後アニメ化、ドラマ化、映画化などが実現した際にどう化けるか注目されます。

また青年マンガには、長期連載作品も散見されます。例えば男女3~74才全体の好意度が32.6%と高い「クッキングパパ」は、30年以上の長期連載ながら作品中の登場人物が現実と同じく年齢を重ねていく作品です。連載開始時に生まれていなかった層も、90年代前半に3年間放送されたテレビアニメの本放送や再放送で育って今や親世代であることからか、M1とM2(男35~49才)といった幅広い年代から支持されています。

同じく長期連載で、登場人物が現実と同じく年齢を重ねている「島耕作シリーズ」は、男性成人層全般とF3(女50~74才)に支持されており、島耕作と同世代からの共感だけでなく子ども世代からも関心を持たれています。同様に、かつて高校生だった主人公の20年後を描く「金田一37歳の事件簿」は、男子ティーンとM1に人気です。こちらも「金田一少年の事件簿」ファンがそのままスライドしただけでなく、新たな若年層のファンを獲得しているようです。青年マンガには、ドラマ化やアニメ化で女性や若年層に支持が広がる作品と、読者と一緒に年齢を重ねながら新たな世代もファンにする長期連載作品が併存するといえそうです。

女子マンガのメイン支持層とその動向

さらに講談社の女子マンガ計9作品の性・年齢別好意度です。各作品とも女性層で好意度が高くなっていますが、ティーン以上の男性層で好意度が高い作品も幾つかみられます。

図表4.女子マンガ各作品の性・年齢別好意度(「好き」+「やや好き」)

1990年代半ばにアニメが大ヒットし、今も男女3~74才全体の好意度が47.0%と上記9作品中で最も高い「美少女戦士セーラームーン」は、40代までの女性全般、特にF1から絶大な支持を受けています。この作品は男性20~40代からの支持も高く、今も映画化やローソンコラボキャンペーンなどの展開が相次ぐのが頷ける結果です。規模は違いますが、90年代後半にアニメがヒットした「カードキャプターさくら」も、マンガ連載&アニメ放送時のファンだったF1、M1に今も支持されており、作品世界同様にファンタジー性を重視するサマンサタバサやサマンサベガとのコラボ商品が展開中です。

「逃げ恥」の略称で知られる「逃げるは恥だが役に立つ」も、ドラマの大ヒットの影響で今も男女3~74才の好意度は45.4%。特に男女ティーンとM1、F1に支持されています。「ちはやふる」も、映画化やアニメ化で、同じく男女ティーンとM1、F1に支持されています。女性だけでなく若年層男性にも共感されるリアルな内容である点が影響しているようです。

人気女優主演のドラマ化でヒットした「東京タラレバ娘」「ホタルノヒカリ」、何度かドラマ化された「きみはペット」は、女子ティーンやF1など若年層女性に特化して支持されています。「午前0時、キスしに来てよ」も、2019年に映画化されて女子ティーンに特化して支持されています。現状では女性20~40代の支持が高めながら、まだ認知率が低い(男女3~74才で13.6%、F1で20.4%)「犬と猫どっちも飼ってると毎日楽しい」は、今年10月からのアニメ化でどう化けるか注目されます。
女子マンガは、読者が成人してもファンで居続ける少女向けファンタジー作品と、ドラマ化で男性や若年層に支持が広がるオトナ向けリアル作品が併存する傾向にあります。

『通受け』ゾーンに位置する作品に今後の可能性が

続いて、今回分析対象としたマンガキャラクターコンテンツへの支持を、図表5で『広がり』と『熱さ』に分解してみました。

図表5. キャラクター支持の『広がり』×『熱さ』による分類方法

キャラクターコンテンツを使った映像化や商品化を考えた場合、「キャラクターの認知率」「認知者ベースでの好意度」が両方とも高い、いわゆる『花形』が最も効果を発揮しやすいですが、それだけに使用に際してハードルが高い場合もあります。
一方キャラクターの認知率は低くとも認知者ベースの好意度が高い、つまり熱心なファンが存在する『通受け』は、少数でも熱いファンによる拡散でキャンペーンが話題になりやすかったり、高額コラボ商品などの展開がしやすかったりする傾向があります。

さらに、今回分析対象とした講談社のマンガキャラクターコンテンツ計30作品+今話題の「鬼滅の刃」「キングダム」で、男女3~74才の『広がり』×『熱さ』をマップ化してみました。

図表6. マンガ各作品の『広がり』×『熱さ』による分類結果

ここでのキャラクター認知率は、キャラクターの名前だけ調査画面に提示して、「よく知っている」+「名前を聞いたような気がする」と答えた人の割合です。
平均値以上の認知率を獲得している作品は、アニメ、ドラマ、映画など映像化されたものばかりで、『花形』は「逃げ恥」「コウノドリ」のみ、「鬼滅の刃」もこのゾーンに分類されます。

今後の可能性が期待できる『通受け』には、「はたらく細胞」「犬と猫どっちも飼ってると毎日楽しい」「ランウェイで笑って」「中間管理録トネガワ」「五等分の花嫁」「きのう何食べた?」「プルーピリオド」「FAIRY TAIL」など多くの作品が該当しました。これらの作品は、少年誌や青年誌のマンガでも女性からの支持が多いのが特徴です。

人気作であっても分類上『印象希薄』のゾーンに入る作品も多く見られました。これらは認知率が高く、かつ支持層が特定の性別や年代に限られる傾向にあります。つまり認知率が高いがゆえに好意度の平均値が薄まっているケースが多く、例えば同じ作品が男子ティーンやF1では『花形』に分類されることもあります。これらの作品はコミュニケーションを取りたいターゲットごとの結果を見極め、評価することが重要です。

図表7は、性・年齢別にみたマンガキャラクターコンテンツ各作品の『広がり』×『熱さ』マップです。対象とする性・年齢で、『花形』『通受け』などの内訳は大きく異なることがご理解いただけるかと思います。なお具体的にどの作品がどのゾーンに該当するかは、図表8に記しています。

図表7. 性・年齢別:マンガ各作品の『広がり』×『熱さ』による分類結果

図表8. 性・年齢別:マンガ各作品の分類内訳

まだまだ多くの調査データがありますが、今回はここまでとさせていただき、来月の第7回で引き続き調査結果をもとに、「マンガキャラクターの接点」について解説する予定です。どうぞお楽しみに。

上記以外の性・年齢区分での結果や、他設問の調査結果に興味をお持ちの方は、野澤メールアドレス(twazano1110@gmail.com)、またはTwitterやFacebookまでご連絡ください。

<バックナンバー>
第1回:調査データにみる日本人とマンガキャラクターの関係
第2回:データでわかった、キャラクターが提供する体験と効果の実像
第3回:キャラクターが誰に、どのように効くのか可視化する
第4回:Twitterの書き込みからマンガの情報拡散を分析する
第5回:Googleトレンドから見えた、マンガキャラクターの人気傾向とクラスタリング

筆者プロフィール
野澤 智行(のざわ ともゆき)

栃木県宇都宮市出身。1987年千葉大学文学部卒業、(株)ビデオリサーチ入社。98年旭通信社(現ADKグループ)入社、研究開発部門、マーケティング部門で広告効果やブランディングの研究、企業のマーケティング・プロモーション支援を、キャラクター総研リーダーとしてアニメコンテンツの戦略支援、キャラクターに関する開発・活用提案を行う。2013年に日本百貨店協会主催「ご当地キャラ総選挙」実行委員として、企画立案およびキャンペーン・イベント総指揮を担当。デジタルハリウッド大学院で客員教授として、現在は法政大学経営大学院で学びながら、駒澤大学や福井工業大学で講師も務める。

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