2020.06.02

フードロス削減と持続可能な農業・漁業を目指すフードシェアリングサービス「たべるーぷ」の可能性──SDGs取り組み事例⑪(前編)

地球上には飢餓に苦しむ人々が多くいますが、日本では近年、大量に廃棄される食品が社会問題となっています。「もったいない」という気持ちから誕生した、生産者と購入者をつなぐフードシェアリングサービス「tabeloop(たべるーぷ)」。運営する佐治 祐二郎さんに、フードロスと生産者の現状についてお話を聞きました。

「たべるーぷ」を運営する、バリュードライバーズ 代表取締役CEO 佐治祐二郎さん

──「もったいないが世界を救う」というキャッチコピーで、フードロス削減に取り組んでいる御社。もともと、お菓子を半額で販売する「SWEETS POCKET(スイーツポケット)」というサービスを展開されていたそうですが、なぜこのサービスを始めたのですか。

佐治 私はもともと、コンサルティング会社で飲食店や小売店を支援する仕事をしていました。食品流通業界には「1/3ルール」という商習慣があって、まだ食べられるのに廃棄処分されてしまう食品がたくさんあるんです。それをなんとかしたいと思い、店頭に並ばなくなったお菓子をランダムに詰め合わせて半額で販売するサービスを2014年に始めました。

お菓子詰め合わせを半額で販売している「スイーツポケット」は、香港や中国など海外でも人気が高い

──「1/3ルール」とは? なぜ食べられるのに、廃棄されてしまうのですか。

佐治 食品業界には、食品の製造日から賞味期限までを3分割して、賞味期限の残り1/3までしか販売できないという商慣習があります。期限までに売れなかった商品の一部は格安店などで再販売されることもありますが、大部分は廃棄されてしまいます。この現状を見てきて、まだ食べられるのに捨ててしまうのはもったいない、とずっと思ってきました。なんとかできないかと考えたのが、余剰在庫のお菓子を詰め合わせて半額で販売する「スイーツポケット」でした。

──メーカーと消費者、双方にメリットのある仕組みですね。

佐治 はい。想像以上に反響も多くありました。そのため最初はお菓子だけに限定していましたが、お菓子以外の多くのメーカーや卸、生産者の方からも、自社の商品を取り扱ってほしいというご要望を多くいただくようになりました。そこで、2018年に新サービスとして「tabeloop」をスタートしました。

──「tabeloop」のサービス内容について、教えてください。

「たべるーぷ」のサイトイメージ

佐治 「たべるーぷ」は、売り手と買い手をつなぐ、フードシェアリングプラットフォームサービスです。現在、日本では643万トン(※バリュードライバーズ調べ 平成28年度 環境省資料より)もの食品が捨てられています。そのうち、家庭での食べ残しなどによる廃棄が291万トン、小売店・飲食店などでの規格外品や売れ残り、食べ残しなどによる事業系廃棄が352万トンもあるといわれています。「たべるーぷ」では、この事業系で発生する食品ロスを半分に減らすことを目的としています。

──643万トンとは、どのくらいのイメージなのでしょうか。

佐治 日本のお米の年間生産量は778万トン、年間漁獲量は429万トンです。つまり、1年間で収穫できるお米に匹敵するくらいの量で、年間漁獲量獲より多くの食品が、廃棄されていることになります。

日本の年間食品ロス量は、国連WFP(World Food Programme)の年間食料支援量の2倍近くも多い
(バリュードライバーズ調べ 平成28年度 環境省資料より)

──どうしてこんなに廃棄される食品が多いのでしょうか。

佐治 まず家庭においては、賞味期限切れによる廃棄、調理時の過剰切除、食べ残しによる廃棄など、食料の買い過ぎや食品ロスに対する意識の低さに起因する廃棄があります。一方、流通業界においては、機会ロスを防ぐために各プレイヤーがそれぞれ過剰生産、過剰在庫、大量多品種陳列をしていて、規格外品や売れ残り、先ほどの「1/3ルール」などの商慣習も相俟って廃棄が発生しています。また外食業界やホテル業界での食べ残しによる廃棄も原因の一つです。

さらに上流の生産現場に目を向けると、色や形が悪いなどの規格外品が返品・廃棄処分となるほか、作りすぎ・獲れすぎなどによって需給バランスの調整が必要となって結果的に生産者が廃棄をせざるを得ないケースや、そもそも人手不足で収穫や流通への対応が間に合わずに廃棄されるケースも見られます。また今回の新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、給食停止の影響で食材が余るなど、新たなフードロスの問題も発生しています。

──「たべるーぷ」で、こうしたフードロスがどう解決できるとお考えですか。

佐治 「たべるーぷ」は、一次生産者が、れすぎたり規格外品が出たりしたタイミングで販売し、それを飲食店などが購入するしくみです。まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を、一般消費者や飲食店などに購入してもらうことで、事業系で発生するフードロスの削減と生産者の支援を目指しています。

買い手である飲食店からは、「加工して使うメニューなら、形や色が不揃いのものでも気にならない」「ダイレクトに商品が届くので、生産者の顔が見える食材が手に入り、かえってよい」など好意的なご意見をいただいています。一般消費者からも「訳あり商品でも自宅で使う分には安い方がうれしいし、食品ロスを減らすことに貢献したい」というご意見が多く寄せられています。

「たべるーぷ」が広く認知されることで、「もったいない」という概念が広がり、一般家庭のフードロス削減にもつながると、うれしいですね。

「たべるーぷ」の理念に賛同し、フードロスに貢献している、
ローカルダイニングの榊原代表(写真・左)、更科堀井の河合料理長(写真・右)

──生産者の方からはどのような声がありますでしょうか?

佐治 たとえ形が悪くても心を込めて育てた野菜・果物には変わらないので、できる限り適正価格で販売したいというお声をいただきます。規格外品や過剰分をできる限り適正価格で流通させることで、生産者の皆さまにとって現状よりも少しでもプラスになるようにお手伝いができればと思います。また、その持続的な販売によって、農業や漁業の継続にもつながればと思います。

以前、栽培過剰で収穫間近の大根を廃棄する現場に立ち会ったことがあるのですが、丹精込めて育てられた生産物が廃棄されるのは、部外者の私が見てもつらいものでした。「たべるーぷ」を普及させることで、こうした現状を、少しでもよい方向へ変えていきたいと思っています。


SDGsのゴール2でも掲げている「飢餓をゼロに」の達成に寄与している「たべるーぷ」は、生産者への持続可能な農業・漁業支援にもつながっている、と話す佐治さん。次回は、佐治さんがSDGsに取り組んだ意外なきっかけと、SDGsによるビジネスの広がりについてお聞きします。

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