2020.01.29

SDGsの第一人者・薗田綾子さんが解説 「SDGsで未来を変えるために、今、できること」

2019年12月20日(金)に行われた「FRaU×SDGs共創カンファレンス2019→2020」。このカンファレンス第一部は、SDGsについて学びを深めるセッションでした。「SDGsの第一人者」として広くご活躍されている株式会社クレアンの代表取締役・薗田綾子さんが登壇され、「SDGsの現状と2020年の動向」について、わかりやすくレクチャーされました。その詳細をお伝えします。

カンファレンステーマは、「SDGsで未来を変える」。SDGsが今までどのような広がりを見せ、これからどうなっていくのか。SDGsの第一人者である薗田さんによる、最新の情報やデータを交えながらの説明は、国連訪問の話から始まった。

株式会社クレアン 代表取締役・薗田綾子さん

皆さん、こんにちは。クレアンの薗田綾子です。今日は皆さんに、昨年開催された「国連気候行動サミット2019」の様子や、16歳の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの最新情報などを紹介しながら、SDGsがこれまでどんなふうに広がり、この先どう展開していくかについてお話させていただきます。

若い世代からSDGs認知度が高まる理由

グレタ・トゥーンベリさんは、皆さん、ご存じですよね? スウェーデンでたった1人で国会議事堂前で座り込みを始めた女の子なんですけれども、彼女の登場により、男女問わず、若い世代にどんどん環境活動の波が広がっています。

2019年9月23日、ニューヨークの国連本部で「国連気候行動サミット2019」が開催されまして、私も参加してきました。そこで感じたことは、2000年代以降に生まれた「ミレニアル世代」と呼ばれる若者たちや、それに続くZ世代という子どもたちが、いろいろ気付き始めている、ということです。グレタさんの活動により、大きなムーブメントが起こっているな、と感じています。

「タイのグレタ・トゥーンベリ」ともいえるリリーちゃんは12歳の女の子です。

プラスチックごみを拾うリリーさんの活動を紹介する薗田さん

「ニューヨークには行けないけれど、私の場所はタイだから、毎日プラスチックごみを拾って、海をきれいにする」と、8歳のときからほぼ毎日のように海でプラスチックごみを拾っています。

でも、ごみを拾うだけでは、環境課題は解決できません。ですから、ごみ拾いと並行して、「ライフスタイルを変える、プラスチック自体の使用を減らす、あるいは、プラスチックを何度でも使えるリターナブルな製品にしていこう」と訴え続けています。

ムーブメントは教育にも起こっています。最近は、学校教育にもSDGsが組み込まれるようになりました。入試問題で出題されたこともあり、小学校・中学校の参考書でも扱われています。2020年からは、正式に学習指導要領にも入りますので、若い世代のSDGs認知度がさらに高まることが考えられます。

日本の課題はジェンダー平等

もうひとつ、ニューヨークでは、女性がすごく活躍されているのを感じました。

株式会社クレアンも、女性の活躍推進に取り組む企業として、ニューヨークで、「女性のエンパワーメント原則」にサイン(署名)をしてきました。

薗田さん(右)が、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの
ための国連機関「UN Women」の職員と
握手を交わした時の様子をスライドで紹介

女性のエンパワーメント原則(Women's Empowerment Principles、以下「WEPs」)とは、2010年3月に、国連グローバル・コンパクト(GC)とUNIFEM(現UN Women)が共同で作成した女性の活躍推進に積極的に取り組むための行動7原則のこと。
企業における女性の活躍推進に向けて、各国政府が積極的に働きかけを行い、2015年のG7エルマウ・サミットや2016年のG7伊勢志摩サミットでも、WEPsが首脳宣言で取り上げられている。

原則1 トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進
原則2 機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃
原則3 健康、安全、暴力の撤廃
原則4 教育と研修
原則5 事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動
原則6 地域におけるリーダーシップと参画
原則7 透明性、成果の測定、報告

WEPsの原則5と6は、企業が社内の女性の活躍を応援するだけではなく、自分たちの商品を作る人たちや使う人たちと一緒に社会をよくしていく、あるいは、商品を使っている人々を元気にしていく、という原則です。これに皆がサインしていけば、社会はどんどんよくなっていくと思います。

ところで皆さんは「SDGsの3層構造」は、聞いたことがありますよね。

SDGsの3層構造とは、持続可能な開発目標を達成するための「環境」「社会」「経済」の3つのバランスと関係を、ウェディングケーキにたとえて整理した模式図を指す。一番下の層に「環境」、真ん中の層に「社会」、いちばん上の層に「経済」が存在している。

SDGsの概念を表すウェディングケーキモデル
(出典:Stockholm Resilience Centre

この図を見たことがある方も多いと思うのですが、17ゴールは全部並列ではなく、一番下に生命の基になる「環境」があり、その上にそして人間の住む「社会」が、さらにその上に「経済」があります。これらを統合するのが17番のパートナーシップ。連携が重要ということです。

でも、皆さんの生活では経済がベースで、その上に社会、そして環境はその上に少し乗っているだけではありませんか? この意識を本来の姿に変えないと、SDGsが目指すゴールが達成できません。

さらにSDGsの前文には、「全てのゴールにジェンダー主流化を」という言葉が入っています。今までの社会では、男性の意見がかなり強かったのですが、これからは女性や子どもたちなど、多様な意見を入れてやっていこうという目標です。

先日発表された「ジェンダー・ギャップ指数」では、日本は121位という非常に悲しい順位でした。これは、経済分野と政治分野の点数が低いことに起因しています。日本では国会議員の女性比率が非常に低く、企業の役員比率も7.7%という低い数値です。ランキング上位を占める北欧は環境面や福祉面で進んでいるだけでなく、教育レベルや幸せ度が高くなっています。

FRaUからのSDGsのメッセージの中には、「もっとみんながエンパワーメントされるような世界をつくっていきたい」という思いが込められています。今後は、このFRaUのようなメディアを使って情報発信していくことも、ますます重要になってくると思います。

2019年12月20日に発売になったFRaU SDGs号第2弾

社会課題は一人ひとりの問題

SDGsのテーマになっている社会課題というのは、決して「誰かの問題」ではなく、「この地球上に生きている一人ひとりの問題」です。

特に環境問題は不可欠で、不可避です。

SDGsの17のゴールの中には、いくつか環境課題に関する明確な目標がある。「ゴール13:気候変動に具体的な対策を」、「ゴール14:海の豊かさを守ろう」、「ゴール15:陸の豊かさを守ろう」は、その課題解決を目指すもの。

近年、海洋プラスチック問題や漁業の仕方など、海に関する対策が急務とされており、漁業大国の日本は率先して持続可能な方法を考える必要がある。FRaUも昨年、丸ごと1冊海の環境問題をテーマとした「FRaU SDGs MOOK」『OCEAN』を発売。"Change"をテーマに、海に対するこれまでの考え方や視点、暮らしを変えるという内容で世の中に問いかけた。

グレタさんたちのように若い世代がどんどん活動して、「未来にたくさん借金を残さないで」と訴えていますが、日本は廃棄物やプラスチックごみに関して、アメリカに次いで第2位の生産国&消費国です。

私はペットボトルを使わずにマイボトルを持ち歩いていますが、実はペットボトルの資源化は、10%以下といわれています。回収率は、ほぼ9割ですが、回収されてない10%はほとんどがごみとして埋め立てられたり、海洋投棄されたりしているのです。日本人は一人当たり年間平均200本くらいを消費していますので、日本全体で年間約250億本消費されるなかの1割として、20〜25億本が海洋投棄や埋め立てされている状況です。

最近は、セブン-イレブンさんやコカ・コーラさんが回収ボックスを置いて、「ボトルtoボトル」という仕組みを始めたので、資源化が10%ぐらいに上昇しました。日本の場合は、サーマル・リサイクルという焼却処分もリサイクルの一部に入れていますが、熱回収は世界ではリサイクルには入りません。

ペットボトルで使用されているのは、いいプラスチックなので、それを燃やしてしまうのはもったいないと、できるだけ他のものに作り替えられないかと考える動きも出ています。

SDGsの「ゴール13(気候変動)」は、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じることを目指す目標。温室効果ガス排出量は年々増加しており、現在では1990年と比較して50%以上増加。地球の温暖化によるとされる異常気象は、世界中でさまざまな災害を引き起こしている。もはや先進国だけではなく、途上国にも協力を仰ぎ、今すぐ対策を講じなければ、取り返しのつかない結果となる可能性がある。

世界平均地上気温(陸域+海上)の偏差
(気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第40回総会 IPCC第5次
評価報告書統合報告書の政策決定者向け要約より抜粋)

温暖化の問題では、今、1.11度気温が上昇していますが、これが1.5度、あるいは2度上がったら大変なことになる、というレポートを、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な研究の収集・整理のための政府間機構「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が発表しています。

グレタさんはこのIPCCのレポートをしっかり読み、データを踏まえてスピーチをされています。体温が2度上がると大変なのと同じように、地球の温度が平均で2度上がると生態系が崩壊してしまう可能性があります。たとえば、平均気温が2度上がるとサンゴの99%は死滅してしまうといわれています。「CO2を吸収してくれた森も砂漠化してしまい、さらに温暖化が加速する」とIPCCが予測をしています。

こうしたなか、私たちが日々できることだけではなく、企業や自治体と連携してできることがもっとあるのではないか、という動きも出始めています。また、企業にとってもSDGsに取り組まないと、ビジネスモデルが存続できなくなるという状況が出てきています。

日本も、首相の直轄でSDGsの推進本部ができ、内閣府直轄で、自治体を連携した「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」がつくられました。自治体に3000万円の補助金を出し、「モデル都市」としてさまざまな取り組みが行われています。去年は北海道の下川町が選ばれ、多くの企業や自治体が視察に訪れています。

2030年のために今から行動する

どのようにSDGsを導入していいかわからない、という企業に対しては、国連が出している「SDGコンパス」があります。5段階にわけてSDGs達成のためのさまざまな方策が掲げられています。大きな多国籍企業に焦点をおいて開発されたものですが、中小企業、その他の組織も、新たな発想の基礎として、必要に応じて変更して、この指針を使用することができます。

SDGコンパスは、2016年3月にGRI(Global Reporting Initiative)、国連グローバル・コンパクト(UNGC)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の3団体が共同で作成した、企業向けのSDGsの導入指南書。具体的な5つのステップが提示されていて、1:SDGsを理解する 2:優先課題を決定する 3:目標を設定 4:経営に組み込む 5:報告とコミュニケーション となっている。5番目のステップでは、各企業がFRaUをはじめとする、さまざまな媒体を使ってSDGsに関する進捗状況を発信していくことも重要だとされている。

企業がSDGsに取り組むメリットとしては、働いている人たち、特に若い世代のモチベーションが上がっているというデータが出ています。SDGsを行っている企業への信頼性や、「この会社で働いていて本当によかった」と思う割合が比較的高く、退職率が3.5%ダウンしているというデータもあります。逆に、SDGsをやらない企業は、今後生き残れなくなってしまうリスクがあります。

このあと、薗田さんは、ユニリーバ、パタゴニア、KLMなど、いくつかの国内外の具体的な企業名をあげ、各社がどのようなSDGsの取り組みを行っているかを紹介。サステナブル経営に向け、一人ひとりの生活者がSDGsに取り組む企業を応援してほしい、とリクエスト。

皆さんには、SDGsに取り組む企業を応援するとともに、全然できていない企業には「もっとこういうことやってください」と、声を送ってほしいと思います。そして、FRaUには、そのつなぎ役になってほしいと思います。

SDGsは、今までの延長上ではなく、「バックキャスティング」という「未来から考える」方法を採っています。今までやってきたことと、未来からの逆算ではギャップがありますが、このギャップを埋めるために、イノベーションやクリエイティブなど今までになかった発想が重要になってきます。イノベーションを起こして世の中を変えていく、そういう企業文化をつくっていくためには、生活者一人ひとりの意識がとても重要になります。

2030年、お年寄りも子どもたちも、あるいは、皆さんの子どもや孫やひ孫や、そういう世代もハッピーに暮らせる持続可能な社会にするためには、今から行動を始めていかないと間に合いません。FRaUと一緒に、あるいは、地域や学校と連携する、企業のいろんな製品を使うなど、できることはたくさんあります。「誰1人取り残さない」を合言葉に、すてきな世界をつくっていきましょう。

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