2019.11.06

令和は「子作りも女性がリード」で、男性のホンネは? ~誰もが「ヒキタさん」になれるのか?(前編)

こんにちは。マーケティングライターで世代・トレンド評論家の、牛窪(うしくぼ)恵です。

フジテレビ「ホンマでっか!? TV」楽屋の前で。
手に持っているのは、同番組の10周年記念で頂いたモバイルバッテリーです

新しい時代に、子作りブームがやってくる?

先月22日、皇居・宮殿で「即位の礼(即位礼正殿の儀)」が行われました。それまで激しく降っていた雨が、式典直前にサッと上がり"虹"が見えましたよね。あの瞬間、令和への希望を感じた方も多かったのではないでしょうか?

これを機に、改めて20~30代の間では、「やっぱり令和元年の間(12月末まで)に、彼氏と結婚したい」「子作りもしたい」との願望が高まっているのを感じます。あと2ヵ月弱、なんとか願いが叶うといいですね。

でも「妊娠・出産」は、結婚以上に、思い通りにはなりません。とくに昨今は、「子どもが欲しくても、なかなか授からない」という「不妊」が、社会問題にもなっています。
一体どれぐらいのカップルが、不妊に悩んでいるのでしょう?

国の第三者機関の調査によると、日本で不妊の検査や治療を経験したことがあるカップルは、夫婦全体の約5.5組に1組(2015年 国立社会保障・人口問題研究所調べ)。
10年ほど前からは「妊活」という言葉が広く認知され、妊娠を望む女性の多くが、基礎体温を測ったり、排卵日を調べたりと、積極的に行動に移すようになりました。

そんななか、先月4日に公開された映画が、『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』。
作家・ヒキタクニオ氏が自らの体験をもとに、不妊の男性と妊活の実状を描いたエッセイを、映画化した作品です。

主役は、49歳の作家・ヒキタクニオ(松重豊)、そして彼と「年の差婚」をした、若く美しい妻(北川景子)。あるきっかけで、仲睦まじい二人は妊活に挑むようになりますが、なかなか結果(妊娠)が出ません。
そこで、心配になってクリニックを訪れてみると......、どうやら原因は、ヒキタの側にあることが分かる。彼はショックを受けます。「まだ自分は、若くて健康だと自負していたのに、あろうことか、精子が老化現象を起こしていたなんて」......!

夫と妻の意識の差


先ほど、「妊活経験のある夫婦が、約5.5組に1組」とお伝えしましたが、このうち「ヒキタさん」のように、医療機関で自身の「精子の状態」まで確認する男性は、妊活経験者のおよそ3人に1人、と言われます。意外に多い印象ですよね(2019年 リクルートライフスタイル調べ)。

ただ一方、同じ調査によると、妊活中の男性の7割近くが「想定した期間内に子どもを授かるためには、もっとできることがあった」と後悔していました。後悔の内容は、「健康的な生活をする」や、「ストレスを溜めない」など。「なぜ、その行動に出なかったのか?」への回答には、「おカネがかかるから」、そして「自然に授かりたいから」がありました。

そう、男性の中には、「妊活までしなくても、子どもは"授かりもの"だから」「そのうち自然にできるだろう」と考える人も、少なくありません。それはそれで、確固たる一つの価値観だと、私は思います。

ですが、多くの女性からすると、「このままボーッとしていたら、年齢的な限界が来るのでは?」との焦りもあります。とくに昨今は、「35歳を過ぎると、妊娠確率が20代のころの半分近くまでに下がる可能性がある」といった学説が囁かれる時代。

私は30代後半のころ、オット(夫)と「子作りするのか、しないのか?」で揉めて、結果的に仕事を優先させ、敢えて子作りしませんでした。舞台から"降りて"しまった派です。
でも今になると、やっぱり子どもがいたら、ステキな人生が待っていただろうなとも思います。私以上に、母性本能が強い女性たちは、なおさらでしょう。

だからこそ、冷え症であれば「妊娠しやすい身体になりたい」とホットヨガに通ったり、「妊娠にいい」とされる運動を続けたり、半身浴で血流を良くしようと頑張ったりする。
最近は、「ふたりで授かる体をつくる 妊活レシピ」(主婦の友社)や、「赤ちゃんがほしい人のための栄養レシピ」(池田書店)など、"食"の分野でも「妊活を意識しよう!」と促す本が、次々と出版されています。

イマドキ子作り世代の妊活

「妻が排卵日の前後になると、いつも朝ご飯は"生卵"とレッドブル、夜ご飯は"うなぎ"なんですよね」と笑うのは、大阪の大手メーカーに勤めるA男さん(30代後半)。

一般に、生卵やうなぎは、「精力がつく」「スタミナ倍増」などと言われる食品です。
レッドブルも、清涼飲料水でありながら「エナジードリンク」と呼ばれる通り、カフェインやアルギニンが含まれ、「疲労回復や筋力増進などに、効果があるのでは?」ともされていますよね。

妻からすれば、「せっかく子作りの"チャンス(排卵日前後)"なんだから、できる限りのことは全部やりたい」と考えるのも、理解できます。
とくに近年は、スマートフォンで生理の開始・終了や排卵日がチェックできる「妊活アプリ」が、女性の間で人気。自分の体調や身体のリズムをしっかり把握して、万全の状態で"チャンス(排卵日前後)"に臨もうとする女性も、決して少なくありません。

中には、排卵日の妻から「飲んで帰って来たら、コロス(殺す)」や「残業(で子作りできない)を言い訳にしたら、離婚だよ!」と、強い口調のメール(またはLINE)で、子作りプレッシャーをかけられている夫たちもいます。

また最近、ビックリしたのは、「うちの部下(アシスタントディレクター)が、妊活中なんですけど」と切り出した、あるテレビ局のディレクターの体験談。

彼曰く、部下のB男さん(20代後半)は、奥さんが年上(30代半ば)で、「早くしなきゃ!」と子作りを焦っていたそう。ある日、泊まりがけで撮影していた栃木のロケ地に、奥さんが「よろしくお願いします」と、笑顔で訪ねて来たと言います。

「なんでだと思いますか? 奥さんが排卵日だから、今日は夫婦で、宿泊先の同じ部屋に泊まるって言うんですよ」。
宿泊先は、局が番組制作のために予約したホテルなので、妊活中のB男さんの部屋の両隣にも、スタッフが泊まっていたとのこと。

翌朝の朝食会場。スタッフたちはなんともバツが悪く、B男さん夫婦と「顔を合わせないようにしよう」としていたそうですが......、彼らはまったく照れるそぶりもなく、「おはようございます」「なんとなく"いい(妊娠した)予感"がします」と、堂々と挨拶したそう。

ディレクターは、思わず「もう少し、恥ずかしそうにしたら?」「仕事の現場で、そんなこと(子作り)してんなよ!」と思ったそうですが、それから3ヵ月後、B男さんから次の報告を受けて、考え方が変わったそうです。

「先日はありがとうございました。やっぱり"予感"が当たって、妻が妊娠しました。あの夜、妻を(ホテルに)泊まらせて頂いたおかげです!」(B男さん)

子作りは果たして本能なのか?

この話を聞かせてくれた、B男さんの上司は、現在40代半ば。彼と奥さんは、私と同じDINKs(Double Income No Kids)で、子どもがいません。若いころから「いつか自然に、授かるだろう」と思っていたものの、時期を逸したと言います。でも、B男さんは、「なんとか子作りしたい」「せっかくの"チャンス"を逃したくない」と積極的に行動したことで、いわば"結果(妊娠)"を出した。

上司の彼は言います。「恥をかこうが何しようが、いま思えば、動いたモン勝ちだったのかもしれないですね」。

先ほどの「朝ご飯は"生卵"とレッドブル、夜ご飯は"うなぎ"」のA男さんや、その友人男性たちもそうです。
彼はそのとき、会社勤めをしながら、大阪の大学院に通っていました。MBA取得を目指して経営学を学んでいたため、ゼミの仲間7人と一緒に、私に「ビジネスアドバイスをください」と東京まで訪ねて来てくれたのです。

そのとき、A男さんが先のような話を始めたので、私は残る7人に「失礼ですが」と前置きして、図々しく聞いてみました。
「この中で、A男さんのように、妊活中の方っていらっしゃいますか?」
すると、なんと! 7人中3人、つまりA男さんを含めると8人中4人が「はい」と手を挙げました。年代的に、全員が30代半ば~40代前半だったせいもあるでしょう。

さらに驚くことに、その3人のうち2人も、A男さんと同じように、「排卵日前後は、朝食に生卵が出てくる」と吐露しました。そして、「オレたちって、なんだか"種馬"みたいだよなー」と笑い合う彼ら。思わず、私は聞きました。
「あのー、それで皆さんは、"種馬"扱いされることがイヤじゃないんですか?」

次の瞬間、その場が「シーン」と若干気まずい空気に。「ヤバい、余計なこと聞いちゃった」と申し訳なさそうな私の様子に、すぐ気づいてくれたのがA男さん。彼は空気を換えようと、明るくこう言ってくれたのです。

「最初は、("種馬"扱いされて)『ムードも何もないな』と思いましたけど......、でも確率論で言えば、ちゃんと奥さんに排卵日を聞いて、"決め打ち"するほうが、結局はムダがないんですよね」

すると、他の3人も「うんうん」と深く頷いて、笑顔でこう言い合いました。
「だいたい、35歳も過ぎれば、エッチしたいとか欲求もなくなるし」「とくにカミさんとは、そういう気になれないよな」。
だからこそ、ロシアンルーレットや「黒ひげ危機一発」(タカラトミー)のゲームのように、「いつ当たりが来るか、分からない」とやみくもにトライするよりは、「排卵日前後だから」と事前に把握したうえで"決め打ち"したほうが、はるかに効率がいいと考えるのでしょう。

古代から昭和、平成の時代まで、男性には「子作り(遺伝子を残す)」の本能があるのが当たり前、との論調が主流でした。でも最近、世界的に男性の精子が「弱体化」しているとされるうえ、「子作りは、本能とは言えないのではないか?」といった説が次々と登場しています。
なぜ精子が「弱体化」しているのか? それには、私たちの毎日に欠かせない「あるモノ」が関係していると言われているのですが......、次回、詳しくお話させて頂きますね。どうぞお楽しみに!

筆者プロフィール
牛窪 恵(うしくぼ めぐみ)

世代・トレンド評論家。マーケティングライター。修士(経営管理学/MBA)。大手出版社勤務等を経て、2001年4月、マーケティング会社・インフィニティを設立、同代表取締役。著書やテレビ出演多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は新語・流行語大賞に最終ノミネート。新刊は「なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?」(光文社新書/共著)

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら