2019.10.23

カップルでも「露天ひとり旅」が増えた理由~ドキドキ・キュンキュンより「癒されたい」(後編)

【連載】中性化するニッポン 〜なぜ男女マーケに「異性のココロ」が必要なのか〜

こんにちは。マーケティングライターで世代・トレンド評論家の、牛窪(うしくぼ)恵です。

NHK総合「日曜討論」に出演中

カップルは「恋人同士」から「男友達・女友達」へ

前回は、この10年ほどで「カップルでも『ひとり旅』」が増えた理由を、様々なデータや若い男女のナマの声からご紹介しました。
もっとも、恋人との旅が面倒だからといって、「男女のカップル文化」が完全に崩壊したわけではありません。例えば、「男友達・女友達」、つまり男女関係にはない異性の友達カップルの急増です。

とくに最近は、複数のレジャー施設が「カップルで来ると割引きになります」といったプランを展開しているため、「付き合ってなくても、男友達・女友達と一緒ならおトク」と考える若者も大勢います。

その一例が、サンリオピューロランドが展開する「ラブラブ♡ペア割引き」(来年3月まで。一部期間を除く)。通常、窓口で購入すると、大人1人あたり3300円かかるパスポートが、2人で5000円(1人あたり2500円)と1人800円安くなります。
当日は、二人揃った状態でチケット窓口に行く必要がありますが、例えば「窓口でキスしないとダメ」などといった縛りはないため、友達同士でも「男女」ならOK。過去に取材した際にも、「女友達と行くより、おトクだから」と利用する女子大生らがいました。

また、以前は「レディースデイ」を大々的に展開していた映画館も、近年は「ペア(2人)であれば、カップルや男女を問わず割引きます」と呼びかける流れにあります。
例えば、「109シネマズ(川崎ほか)」の「ペアデイ」。通常、映画1作品(2D)あたり大人1人1900円のところ、毎月22日なら男女問わずペアで2400円、つまり1人700円引きで観られる計算です。

「恋人同士」にこだわらないメリット

なぜレジャー施設や映画館は、「ペア」を意識する一方で、「恋人同士」にこだわらなくなったのでしょうか?
1つは前回も触れたとおり、いわゆる恋人同士のカップル(ペア)が減ったから。
バブル期のように、20代男女の7割に彼氏・彼女がいた時代なら、カップルすべてに割引を適応すると「赤字」になってしまったでしょう。でもいまや、20代の7割に「恋人がいない」時代。数としては、以前より圧倒的に少ないはずなので、割引してもさほど痛手にはなりませんよね。

しかも男女ペアで来てくれれば、将来もしそのカップルが結婚・出産したときに「またみんなで、サンリオピューロランドに行こう」となってくれる可能性も高い。仮にいまは男友達・女友達の関係であっても、そこから交際に発展するケースもあります。いわば、将来への「投資」でもあるわけです。

もう1つの理由は、ジェンダーやLGBT等への理解も含めて、「恋人同士」や「レディースデイ」だけを展開するデメリットが生じてきたため。

私が10年ほど前、20代男性100人に徹底取材した際にも、若者の間で「なんでレディースデイはあるのに、メンズデイはないんスか?」や、「恋人でも、男(女)同士のカップルだって、いるじゃないスか」といった声が、多数あがっていました。

映画館などレジャー施設とすれば、1人より2人以上で来てもらえたほうが、グループ単価(1組全員が支払う料金)が確実に上がります。
一方で、「レディース」「メンズ」と銘打ってしまうと、たとえ2人以上で来てくれても、「あの施設は、男女にこだわるんだ」「LGBTに優しくないんだ」などと見られ、企業価値が下がるリスクもある。

だとすれば、「ペア」を打ち出しながらも、恋人同士や男女云々にはこだわらないほうが、ほどよく集客や未来への投資ができて、企業価値の低下も防げますよね。

男女の友情は、成立する!(はず)

とはいえ、ここで大きな疑問が湧きます。それが、男女ペアで行動していて「恋人(恋愛)」を意識せずにいられるのか? すなわち、よく言われる「男女の友情は、本当に成立するのか?」問題です。

私が10代後半~20代前半だったバブル期には、ドラマや恋愛小説で「男女の友情なんて、成立しない!」と言われたものですが......いまはどうなのでしょう。複数の調査結果から、見てみましょう。

ある女性サイトが22~39歳の男女400人超に行なったアンケートによると、「男女の友情は成立するか?」の質問に、「成立する」の回答が、男女共に7割弱(66.3%)もいました。逆に、「成立しない」は、3割強(33.7%)に留まりました(2016年 マイナビウーマン調べ)。案外少ないですね。

また、あるブライダル研究所が発表した20~40代の未婚者への調査でも、20代女性では「(男女の友情は)成り立つ」が6割弱(55.3%)と、こちらも少なくありません(2014年 リクルートマーケティングパートナーズ「ブライダル総研」調べ)。

実は、行動心理学のうえでは、男女の友情は「成立する」とされています。
ただし、その友情が長く続くためには「ある条件」が必要との研究結果も。その1つが、1970年、心理学者のルービンが行なった「愛と恋愛・好意」に関する実証的な研究です。

ルービンは、この研究で「愛は、『恋愛(LOVE) 』と『好意(LIKE) 』によって成立する。ただし、恋人に対してはLOVEとLIKEの2つが、友人などに対してはLIKEだけが存在する」ことを明らかにしました。
つまり、同じ「愛」であっても「LIKE」だけの感情なら、男友達・女友達の友人として、関係性が成り立つということです。

その後、研究者のデイビスやスタンバーグは、LOVEだけに特徴的な感情を、「魅惑や性的な親密さといった強い感情である」や、「ロマンスや身体的な魅力の情熱、あるいは愛するという強い意志や約束のコミットメントによって成り立つ」などと定義しました。

とくにスタンバーグの「約束のコミットメント」の言葉は、いまの若者がよく言う「付き合っちゃったら、面倒だから」とリンクしています。

すなわち、いざ恋人同士になると、「いま彼(彼女)は何をしているのか?」と監視されたり、「浮気していないか?」と問い詰められたりする。これらは、いずれも「約束(唯一無二の相手として、裏切らない)にコミットメントしているのか?」と気にする、恋人特有の感情ですよね。

半面、デイビスが言う「魅惑や性的な親密さ」が、男友達・女友達としての関係性のキープを阻害することも。
ある女性サイトが、25~35歳女性に「異性で親しい友人と、関係が崩れたことは?」と聞いたところ、「ある」が7割もいたのですが......、代表的なコメントとして「相手を"異性"として意識してしまう(含:下心)」があがっていました(2019年 「Noel(ノエル)」調べ)。

恋愛にのめりこまなくても大丈夫?

でも逆に言えば、「性的な魅力に対する衝動」を抑えることができれば、無理に「男友達・女友達」の壁を乗り越えて、恋人になる必要はない。そのほうが、束縛や拘束もされずに済むし、「男は奢るべき」「女はデート中、女らしくすべき」といった面倒な概念に煩わされることもないでしょう。

私が、著書『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー21)で取材した際にも、20代男子は軒並み「付き合ったとたん、男が奢るのが当たり前、みたいになるのが納得いかない」と声をあげ、20代女子は「女なんだから、女らしくお弁当ぐらい作って来てよ、という目で見られるのが苦痛」などと洩らしました。

いまの20~30代は、学校で「男女平等が当たり前」との教育を受けています。社会に出たのも「職場で男女差別を行なうこと」が明確な禁止事項になった、均等法改正(90年代後半)の後。
厳密に言えば、若い世代でも女性の多くは、「料理上手など、女らしくありたい」といった「大和撫子シンドローム」(と私は呼んでいます)を抱いているのですが......、だからといって、当然のように周りから「女らしくしろ」とされることには、抵抗がある。

男子の場合は、さらに「実利」が伴います。異性の友人と恋人同士になった直後から、「男なんだから、奢ってよ」や「美味しいお店ぐらい探してよ」と言われれば、それだけ「時間やお金が余分にかかるな」と考えるでしょう。

逆に、たとえ「いいな」と思う異性がいても、無理に「恋人同士」にならなければ......、時間や費用などコスパの面でも、おトクを享受できそうですよね。

もっとも男女に「性的衝動」が起きず、恋人同士にならなければ、のちの日本経済や社会に大きく影響するであろう問題があります。
お察しのとおり、それが「少子化」ですが、恋愛クールないまの20~30代男女は、既にこの問題にも「いまどき」のツールを活かして、立ち向かっているのです。
次回はぜひ、中性化する「妊活」事情について、お話させてください。

筆者プロフィール
牛窪 恵(うしくぼ めぐみ)

世代・トレンド評論家。マーケティングライター。修士(経営管理学/MBA)。大手出版社勤務等を経て、2001年4月、マーケティング会社・インフィニティを設立、同代表取締役。著書やテレビ出演多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は新語・流行語大賞に最終ノミネート。新刊は「なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?」(光文社新書/共著)

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