2019.07.29

今日から始めるInstagram(インスタグラム)運用|SNSマーケティングの巻き返しに、基本をもう一度 <後編>

SNSマーケティングのなかでも、注目されているのがインスタグラム(Instagram)の活用です。なぜインスタグラムマーケティングに熱い視線が注がれているのか、TwitterやFacebookなど、他の主要SNS媒体とはどのような違いがあり、どのように運用すれば成功を引き寄せることができるのか、知っておきたいポイントと運用の基本ノウハウを解説します。

■インスタグラム(Instagram)がSNSマーケティングプラットフォームとして注目される理由

インスタグラム(Instagram)はビジュアルに特化したSNSで、写真や動画によるコミュニケーションがその大半を占めます。公式情報の発信などビジネス的なスタイルと親和性が高いFacebook、匿名による不特定多数へのリーチで"つぶやき"テキストの面白さや話題性、意外性などが鍵になりやすいTwitterに比べ、直感的な画像で伝わるおしゃれさや楽しさが特徴です。したがって、アカウントとしての世界観や雰囲気を統一することが重要で、トータルなセンスが固定ファンを獲得するカギにもなっています。

画像メインのSNSですので、アピールしたい商品のイメージをより分かりやすく定着させやすいメリットもあります。テキストよりはるかに豊かに、ダイレクトにブランドイメージを訴求しやすく、世界観をそのまま伝えられます。
ビジュアルメインであることは、言語面のハードルが低いことにもつながりますので、世界中にファンを広げられる可能性を持つ魅力もあります。

通常SNSでは、広告色の強いコンテンツはマイナスイメージの形成につながるリスクがありますが、その点でもインスタグラムは有利です。タイムラインで流れる画像・動画のひとつとして、広告的な要素を自然に表示できる強みがあります。自然に、高い好感度のもと、ターゲットと接触できやすいしくみを備えています。

さらにもう1点注目されているのが、インスタグラムを活用するユーザー層の特性です。アクティブユーザーの年齢層は10~30代が7割以上。他のSNSより若年層が占める割合が高く、他のチャネルではつかまえにくい感度の高い若者にリーチできます。男女別比率では、FacebookやTwitterに比べて女性ユーザーが多く、利用者の男女比はおよそ4対6となっています。女性を主なターゲットとする商品やブランドには、見逃せないプラットフォームです。

サービス開始当初から、感度の高いおしゃれな雑誌写真のような画像が支持される傾向にあり、そうした空気感が共有されているため、趣味嗜好や興味として、最新のファッションや流行に関心の高いユーザーが多いことも特色です。このような層にアプローチできることが、インスタグラムの大きなメリットであるとしている企業も多いでしょう。

「インスタ映え」という流行語が生まれるほどの社会現象となり、その後も機能追加によってさらなる成長をみせているインスタグラム。これまで利用していなかった層への広がりもみられ、インスタグラムマーケティングの重要性はこれまで以上に高まってきそうです。

■インスタグラム(Instagram)マーケティングの目標をどのように設定するか

SNSマーケティングに着手する場合、その目標設定と効果測定に関する指標を明確にしておくことは重要です。SNS運用では従来の手法に比べ効果測定がしづらく、「とりあえず開設したものの、運用の方向性があいまい」「改善点が見出せないまま、なんとなく続けられている」などのケースが多く見受けられます。そこで、まずインスタグラムマーケティングにおける目標設定はどのようにすればいいか、そして効果測定は具体的にどうすればいいかを見ていきましょう。

ご存じの方も多いと思いますが、マーケティングにはKPI(重要業績評価指標)とKGI(重要目標達成指標)という目標と評価の概念があります。インスタグラムマーケティングにおいても、この指標があてはまります。
KGIはさまざまな活動に対するビジネス面での最終目標であるのに対し、KPIはそれに向かって着実に歩を進めるための達成すべき小目標、マイルストーンとなる個々の指標です。

KGIの例では「売上高を前年比で20%アップさせる」「顧客リピート率を15%上げる」「会員登録者数を50%アップする」などが考えられます。数値なども含め、具体的に設定しておくことが必要で、「売り上げアップ」「認知向上」といった漠然とした目標にならないようにします。
そしてインスタグラムにおけるKPIの例としては、フォロワー数やその増加率、いいね!の数とフォロワーに対する割合、コメント数、クリック数、関連ハッシュタグの投稿数、自社サイトやキャンペーンページなどへの流入数といったものが代表的なものです。

KPIは分析ツールや公式のインサイトデータで、数値として確認しやすく、さまざまな軸をとることができますが、あくまでKGIにつながるものでなくてはなりません。新規顧客の開拓による売上高アップを目指しているなら、ファンとみられるフォロワー数の増加が重要ですし、リピーター増による顧客満足度の向上、個人単価アップが狙いなら、コメントやいいね!などのエンゲージメントをより重視したKPI設定が必要です。KGIと関係づけながら、KPIの具体的な数値目標を適切に設定することが大切です。

KGIは、早ければ3ヶ月から、最低でも年に1度は達成度を検証する必要があります。社内データやアンケート調査などを用いて確認し、その結果に応じて次の戦略立案や、運用方法の改善に役立てます。そして時にはKPIの見直しを行うことも考えるべきでしょう。


■成功に近づくためのインスタグラム(Instagram)運用ポイント:基本

さて、次はいよいよ最も重要な、成功する投稿手法、投稿コンテンツの作り方などの運用ノウハウについてです。素晴らしい戦略計画があっても、コンテンツに落とし込めていなければ効果を発揮させることはできません。まずインスタグラムならではの基本のポイントを押さえ、成功例に学びながら効果的な投稿を目指しましょう。

●何より大切なのは統一された世界観

インスタグラムで評価されるための大きなポイントは「世界観をどのように規定し、表現を統一していくか」です。どんな目的で、何をどのように発信しているのか、雰囲気・テイストが一目で分かり、ターゲットにとって魅力的と見えるようにすることが重要なのです。ひとつひとつの投稿コンテンツにおけるクオリティは十分に高くても、ジャンルがバラバラであったり、ポップな表現とシンプル・ナチュラル系の表現が混在していたりすると、魅力も半減してしまいます。

画像はデザインや背景のトーンや色味を統一します。加工する場合は同じフィルターを共通して使うなど気を遣いましょう。コンテンツは単独で検証せず、少なくとも10前後の最新投稿分をひとつの作品としてまとめてチェックし、余白バランスは適切か、同じ並びの画像が単調に連続しすぎていないかなどを確認し、全体として楽しめてしかも世界観を充分に感じ取れるかどうかに気を配りましょう。

パリ発のライフスタイルトレンドをサプライズボックスに詰め込んで届けるサービスのMy Little Boxが展開するアカウントは、パリジェンヌのナチュラルでおしゃれな暮らしに憧れる女子を主要ターゲットとしています。そのためこのような層が好みやすいイメージカラーの白を投稿コンテンツの基調とし、撮影の雰囲気も明るい陽が差し込んでいるようなイメージでそろえています。さらにさりげなく"パリ"を象徴するアイテムを含むなどして、投稿を重ねています。このようなテイストが好きな人であれば、間違いなく見ていて心地よい印象を受け、いいね!やフォローを呼び込む仕上がりとなっています。

トヨタ自動車は、日本各地の美しい風景と溶け込む自社の車を撮影した写真を中心に、車のある暮らし、おしゃれなドライブ旅をイメージしやすいコンセプト投稿を行っています。風景と車という組み合わせを基本ジャンルにすることで統一感を生み、ストーリー性やブランド力の高さをセンス良く発揮することに成功しています。複数の投稿画像をプロフィール画面で見ても、美しいカタログアルバムのように楽しむことができます。加えて露骨に広告色を出すことなく、幅広いユーザーにアピールできている点もポイントです。

インスタグラムは他のSNS媒体より、広告色が薄い点がユーザーに評価されてきたメディアという歴史があります。おしゃれな画像にこだわり、表現への感度が高いユーザー層から拡がってきたものであるため、広告らしさを出し過ぎない工夫が重要です。


●異なるインスタグラム(Instagram)アカウントで運用することも考える

アカウントにおける統一感を明確にするために、運営する公式アカウントをひとつに限定せず、コンセプトやキャンペーン、ターゲットによって切り分け、複数運用する方法も有用です。インスタグラムで運用するアカウントが一企業・一団体にひとつでなければならない決まりはありません。アピールしたい商品やサービスが複数ある場合や、これまでと異なるテイストで新規顧客を開拓したい場合、通常の落ち着いたテイストとは違うポップな表現を前面に出したい場合などは、アカウントを分けてみるのも手です。

スポーツブランドのNIKEは、この切り分け運用を非常に上手く行っています。「nikerunning」、「nikefootball」、「nikewomen」、「nikesportswear」など、スポーツ種目や世界観・コンセプト、ブランドラインなどで、それぞれのアカウントを設け、画像のテイストや情報内容をそこに合わせたものにしています。これによって必然的に統一感が生まれ、それぞれの世界観が伝わるようになっています。受け手のユーザーも興味のあるジャンル、好きなテイストの情報だけを得られることになり、ムダな情報へのストレスを感じにくいようになっています。

●思わず参加したくなる動機をつくる

自然な運用スタイルが理想のインスタグラムにおいて、ユーザーを巻き込む工夫をどうやって組み込むことができるか。ここはまさにマーケターの腕が問われるところです。ターゲットの反応が期待できる話題を選び、思わず参加したくなる動機づけを行うことが重要です。

ハーゲンダッツ ジャパンは、カップアイスを開封したときに現れる"くぼみ"模様にハート型を見出し、ネット上で話題にする動きがあることに着目して、これを「ハーゲンハート」として訴求しています。動画にしたり、ユーザーからの投稿を募ったりすることで、コミュニケーションを広げる運用を行っています。
ちょっと参加してみたくなる楽しい投稿に加え、公式としてよりクオリティを高めた"インスタ映え"コンテンツの発信も並行しています。アイスに添える小物や画像の加工でも、ブランドの世界観をおしゃれに表現し、ブランディングとユーザーの支持獲得に成功しています。

大塚製薬のカロリーメイトでは、ターゲットを「卒業を控えた高校生」に絞りこんだキャンペーンを実施。ユーザー投稿を募ったり、受験生へのメッセージを名言から引いて製品に書き込んでアップしたりと、カロリーメイトのある学生生活、青春の1ページを上手く演出し、ファンを増やしています。思い切ってターゲットを絞り込んだ記録が、そのまま美しい彩りとなって、アカウント全体を盛り上げました。

●ハッシュタグは傾向を分析してたくさん付ける

運用において、画像や動画のコンテンツ作成に劣らず重要なのは、ハッシュタグの使い方です。インスタグラムは、共有やリツイートに類する機能がないSNSであるため、やや拡散性に欠ける側面があります。それをカバーするのがハッシュタグであり、これがつながりを作りますから、なるべく多くつけるよう意識してください。

撮影された物を示すワードだけでなく、見てほしい相手やコミュニケーションのシーン、気持ちなども表現対象になります。「Top HashTags」のランキングで、どういったタグが多く使われ、検索されやすくなっているのか、人気傾向を把握しておくのもお勧めです。

インスタグラムのクイーンとして絶大な人気を誇っているタレント・渡辺直美さんは、写真に関するテキストやツッコミ、会話をそのままハッシュタグ化してしまうような斬新なスタイルにもトライしています。面白さや親近感で距離を縮め、よりファンになってもらうことを目指すような運用なら、こうしたタグ使いも中・上級編として参考にしてみてください。

■成功に近づくためのインスタグラム(Instagram)運用ポイント:応用・オプション

ここまでインスタグラムマーケティングの基本的な心得と、ベーシックなフィード投稿による運用のノウハウについてご解説しました。
次にオプション活用的な運用についてや、運用の際に気をつけなければならないポイント、そしてさまざまな業種での成功事例などをご案内していきましょう。

●ストーリーズ(Stories)を使ってみる

インスタグラムには、基本であるフィード投稿のほかに「ストーリーズ(Stories)」という機能があります。別枠で短い動画や写真を気軽にシェアしたり、ライブ配信を行ったりすることができる仕組みになっています。24時間後に自動消滅しますが、連続投稿すれば継続性も生まれ「一般フィードよりこちらが楽しい」と支持するユーザーも増えています。このストーリーズをうまく取り入れることで、Instagramマーケティングの効果を高められる可能性があります。

ストーリーズでライブ配信を行うと、必ずメイン画面上部に表示されるため、滞在ユーザーにリーチできる可能性が非常に高くなるメリットがあります。またタイムラインに残る通常の投稿とは異なり1日で消滅するため、普段とは異なる世界観で展開したり、攻めた企画の投稿や商品の裏側をみせるオフショット投稿などにトライすることもできます。
先述したアカウントの切り分けは、あらためてファンを集めなければならない、複数運用は負担も大きいなどのハードルがありますが、ストーリーズ機能を活かせば、異なる世界観での一時的運用も可能です。

自動消滅する特性を活かし、期間限定のキャンペーンを打つのも有効です。限定プロモーションコードの配布やタイムセール告知などには、すぐに活かせます。またストーリーズにあるハイライト機能を用いて、まとめコンテンツのような仕立てにし、製品の活用アイデアやアレンジレシピを紹介するというような使い方もできます。

パナソニックは「パナソニッククッキング」で、自社の調理器具に関し、季節を意識したイベントのレシピをストーリーズで紹介しています。さらにアンケート機能を活用し、クイズ形式で楽しめるコンテンツを発信するなどして、利用者とのコミュニケーションを深めています。


●インスタグラマーを起用する

インスタグラムのインフルエンサーである、インスタグラマーの存在も見逃せません。インスタグラマーとは、インスタグラムのユーザーの中でも特に精力的に投稿を行い、多くのフォロワーやファンを有して多大な影響力をもつ人のことです。著名人も含まれますが、ネットだけで活動する一般人であることも珍しくありません。インスタグラマーの投稿は、多くのユーザーのリアルな行動や意識を左右したり、流行の起点となったりしています。

このインスタグラマーに、自社商品やサービスに関する投稿を依頼するのが「インフルエンサーマーケティング」です。企業側からの一方的な発信ではなく「信頼できる友人や憧れの存在が自分たちの目線でお勧めしてくれている」ような感覚で情報を提供できるのが最大のメリットでです。インフルエンサーマーケティングは、あからさまな宣伝や訴求を嫌う現代のニーズに合致し、好感をもって情報が受け取られ、拡がっていく流れをつくることができます。
またインスタグラマーの投稿とバナー広告をうまく連携させてCPCの改善につなげたい、などの動きもあります。

インスタグラマーの活用については多くの企業が強く関心を示していますが、そこで重要になるのはどのインスタグラマーに依頼すればよいか、というキャスティングです。例えば「料理」ひとつをとっても、パーティー料理系やスイーツ専門、お弁当専門など、ジャンルは細分化されています。訴求したいターゲット層に支持されている人、親和性の高いジャンルで強い影響力を発揮している人を選び出し、適切に依頼してこそ効果が出ます。

依頼に際しては、インスタグラムのDMで直接本人にコンタクトする方法と、キャスティンのグノウハウをもつインスタグラマー専門の事務所や広告代理店などを使って依頼する方法の2種類があります。
前者の場合はコストを最小限に抑えられるメリットがある一方、対象の発掘、報酬の決定、契約、投稿確認、報酬の支払いまで全てのプロセスをすべて自社で担わなければなりません。
後者は、手数料コストがかかる、依頼情報の伝達において齟齬のリスクがある、などのデメリットがあります。しかし細かな管理を一括して任せられ、自社内にノウハウが全くない状態でも一定のクオリティを満たしたインフルエンサーマーケティングが行えることがメリットです。

常盤薬品工業のコスメライン「excel(エクセル)」は、読者モデルとしても活躍し、インスタグラマーとして同年代の女性から高い支持を得ている小沼瑞季さんを起用、新作のプロモーションを実施しました。小沼さんは普段から愛用コスメの紹介やメイク方法などを積極的に発信しているため、"カワイイ"のトレンドや美容に関心の高い層へすばやく情報が伝わりました。2,000件を超えるいいね!が付いたほか、ユーザーからの関連投稿もうまく喚起することができています。ターゲットに伝わりやすい表現と、リアルな活用方法によって商品を紹介してくれた、インスタグラマーならではのPRが行えた一例です。

講談社では雑誌&Webメディアを通じて、専属モデルやカリスマスタッフたちを強力なインフルエンサーとして起用するサービスを提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。


●インスタグラム(Instagram)広告を活用する

他のSNSと同様、インスタグラムでもフィードなどに画像や動画コンテンツの広告を掲出することができます。Facebook傘下のInstagramでは、Facebook広告と同様の細かく多彩なターゲティングによって効率よくリーチでき、そしてインスタグラムならではの表現が可能な魅力ある広告メニューを用意しています。

インスタグラム広告には、大きく分けて写真広告、動画広告、カルーセル広告、ストーリーズ広告の4タイプがあります。「写真広告」はインスタグラムがベースとする画像1枚をコンテンツとした、最もシンプルで基本となる広告メニューです。投稿と同じ正方形フォーマットのほか、長方形、縦長のフォーマットも選択可能です。説明文をつけることができるため、商品紹介文や誘導したいサイトへのURLを記載することも可能です。

ファイルはjpgまたはpng、選択したフォーマットにより、解像度などのサイズ制限がありますから注意しましょう。画像1つで勝負するタイプの広告ですから、クリエイティブ性やインパクト、センスをいかに発揮するかが求められます。

「動画広告」はフィード部分で動画を表示することができるメニューです。正方形または長方形のフォーマットが選択でき、MP4かMOVのファイルが推奨されていますが、その他のタイプでもほとんどがカバーされているので、4GBという最大サイズに注意すれば、すでに作成した動画コンテンツなども活用できるでしょう。長さは3秒~60秒未満です。
動画は指定サイズに沿ってコンテンツの編集や切り取りなどを実行した際、思わぬ画質劣化や見切れが発生してしまうこともありますから、アップする前には必ずプレビューで確認を行いましょう。

「カルーセル広告」は、1つの広告で10件までの複数のコンテンツを表示させ、それぞれに別のリンクをつけた掲出ができるものです。閲覧ユーザーが横にスワイプすると、連結した複数画像・動画を見られるようになっているため、物語性のある表現が行いやすくなります。ECサイトならば、リターゲティング配信で関連商品をお勧めするのにも向いています。「カルーセル広告」はFacebook広告でも人気のあるメニューで、画像特化型のインスタグラムではさらに注目度が高い広告と考えられます。なお、カルーセル広告の場合、表示フォーマットは正方形のみですからご注意ください。

最後の「ストーリーズ広告」は、フルスクリーンによる画像や動画の広告掲出が行える、インスタグラム独自のメニューです。30MBまでの画像、4GBまでの動画ファイルに対応し、縦長フルスクリーンというダイナミックで訴求力の強いスタイルによりコンテンツを表示させられるのが特長です。
正方形フォーマットの場合も、自動で背景グラデーションによりフルスクリーン化されて配信される仕組みで、その場合フィード広告で用いているテキストが下部にあわせて表示されるようになっています。ストーリーズは24時間で自動消去されますが、広告については時限で消えることはありません。

これら4タイプに加え、「コレクション広告」と呼ばれるものもあります。これは、製品画像などをカタログ形式で表示できるメニューで、インスタグラムショッピング機能と組み合わせ、ECサイトに誘導するのに特に適した広告です。

インスタグラムショッピング機能は、投稿画像から購入画面へとシームレスに誘導できるため、ECサイトを運営しているのならばより直接的な売り上げアップを期待することができます。「ShopNow」として米国で先行公開されて以降、国内提供が待望されていた新機能で、導入例が急増している注目の機能です。
ショッピング機能を導入した投稿画像には、ショッピングバッグのアイコンが付きます。タップすると商品名と金額を記したタグが現れ、さらにそのタグに触れると詳細ページが開かれて「ウェブサイトで見る」の専用ボタンから、ブランドのECサイトにつながる仕様となっています。また、アカウントのプロフィールページには「ショップ」ボタンが表示され、これをタップすることで購入可能なアイテムの画像のみピックアップした一覧ページへ遷移するようにもなっています。
このような機能によって、インスタグラムから実売行動へとつなげることが非常に容易となりました。満たすべき一定の条件と審査がありますが、導入に費用はかからないため、EC関連のサービスを持っているならぜひ利用を検討してください。


■インスタグラム(Instagram)運用で気をつけるべきこと

費用対効果が高く、新機能や多彩な広告メニューでも魅力が大きいインスタグラムマーケティングですが、運用に際してはNGとされることや気をつけるべきこともあります。

まずフォロワー数の増加を目指す施策として、他のアカウントを大量にフォローし、フォローバックによるフォロワー増を図る行為はやめましょう。フォローしてくれた人をフォローするというSNS文化で、一時的に数を増やすことはできますが、自主的にファンとなったユーザーではないため、マイナスイメージで受け止められやすく、ブランドの毀損を招くもとになります。フォロワー数だけを狙う安易な行動は避けるべきでしょう。

また"ステマ"(ステルスマーケティング)と呼ばれる行為に抵触しないよう、注意することも重要です。タレントが報酬を受け取る利害関係を結んでいながら、そのことを一般ユーザーには隠したままクチコミやブログ投稿を行い、特定の商品・サービスを広く勧めたケースなどが問題となりました。
ステマであることが発覚すると、一般消費者を欺いたとして大きく信頼を損ねますし、インスタグラム運営元からの厳しい処置を受ける可能性もあります。また、国によっては違法行為として定め、法規制に着手しているケースもあり、日本国内でも法規制を求める声が強まっています。自然なかたちで広告表現を行うことは必要ですが、明らかなステマと認められる悪質な行為をとらないこと、キャスティングしたインスタグラマーにもきちんとタイアップ広告であることを明示した投稿にしてもらうことなどを忘れないようにしましょう。

このほか、インスタグラムの規約やガイドラインで禁止されている行為はいうまでもなくしてはいけません。「プライバシー&安全センター」や「コミュニティガイドライン」に記された内容などをよく確認しておいてください。Twitterなどに比べると、炎上や荒れるケースが稀なInstagramですが、さまざまな背景をもつユーザーが目にするものとして、不用意な投稿は避けるべきです。運用者が個人的な感覚で「これくらいはまあ大丈夫だろう」と安易に判断して、大きな問題に発展するといったことがないよう、リスク管理やコンプライアンスの徹底を常に意識してください。


■Instagramを活用する企業と事例

これまでにもいくつか実際のインスタグラム運用事例をご紹介しましたが、ここではとくに際立った成功を収めた企業の事例をピックアップて解説します。ぜひ参考にしてください。

まず旅行会社のH.I.S.は、"旅する女子"から名づけた「タビジョ」アカウントで高い注目を集め、新規の女性ファンを増やしながら、売り上げアップにもつなげるという大きな成功を収めています。
「タビジョ」は、一般の女性ユーザーらに、旅先で撮影したお気に入り画像を「#タビジョ」で投稿してもらう参加型で運用されています。目を見はるようなアイデアには感じられない取り組みですが、旅行会社からすると"魅力"とは思わなかった撮影ポイントでの写真が人気を集めているケースが発見でき、貴重な情報となりました。
彼女たちの中で発見されたリアルな「インスタ映え」が、「私もここに行ってみたい」「こんな体験をしたい」「写真を撮りたい」と旅行への意欲を強く喚起するきっかけとなりました。これは企業側からの一方的な発信では生み出せなかった効果です。
H.I.S.では、このような「タビジョ」での反響を丁寧に検証し、営業材料やツアーの商品企画にも反映させるなど、相乗効果が生まれる運用を行っています。

次にファーストリテイリングの若年層ライン、GUの例です。親和性の高いインスタグラムを中心に、SNSマーケティングには非常に力を入れているGUですが、2014年には「GU TimeLine」という企画アカウントを設け、大きな反響を得ました。
この「GU TimeLine」では、春夏シーズンの新作として投入した150種類以上のグラフィックTシャツなどを中心に、強力なインフルエンサーとなるモデルやブロガーなどを起用してアイテムを着用してもらい、その投稿画像がデジタルカタログとして表示される仕組みを作り出しました。
その結果、公開開始直後から話題を集め14,000超のいいね!が付く投稿などもみられるようになりました。公式アカウントのフォロワーは倍増し、オンラインストアへの流入ユーザーは1.5倍に伸び、投稿画像のアイテムがあっという間に完売となるといった多大な効果が得られたとされています。ECサイトにおけるインスタグラム活用では、大いに手本としたい事例でしょう。

江崎グリコの定番ロングセラー商品「ビスコ」は、「スマイルビスコフォトキャンペーン」と名づけたキャンペーンを実施しました。ユーザーに笑顔の子どもの画像を「わが家のビスコ坊や・ビスコ姫」として「#スマイルビスコフォト」のハッシュタグにより投稿してもらい、参加者に抽選でプレゼントや写真のページ掲載採用といった特典を付与するものとしました。
もともと「ビスコ」では、任意の写真画像データを送ると、それをビスコのロゴにのせ、オリジナルプリントとしてパッケージ化して注文者に商品送付する「スマイルビスコ」サービスを公式オンラインショップで展開していました。インスタグラムキャンペーンは、その発売6周年を記念して実施されたものです。
懐かしい素朴な味わいの商品イメージと、子どもたちの明るい笑顔がぴったりと合致して、ほっこりとした世界観をづくりに成功しました。そして世界に1つの「スマイルビスコ」作成サービスの認知拡大にも寄与し、効果の高いキャンペーンとなりました。


■まとめ

以上、インスタグラムマーケティングの運用における考え方や運用のノウハウ、成功事例などをご紹介しましたが、お役に立ちましたでしょうか。
インスタグラムは大きなコストをかけることなく、グローバルに、画像や動画という直感的なコンテンツを活用し、これまでなかなかリーチできなかった層にアプローチできる、大きな可能性を秘めたチャネルです。
ぜひご紹介したポイントを押さえ、じっくりと運用方針を策定し、インスタグラムマーケティングを展開してください。

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