2019.07.17

過去最高益へつながる「厳選集中」│ジャパネットホールディングス社長インタビュー(前編)

商品93%減でも業績絶好調!
「ジャパネット流」を大研究


小売業では、通販大手「ジャパネットグループ」を取材した。2015年、長崎弁をまじえ名調子で商品をすすめていた創業社長・髙田明氏が惜しまれつつ退任。しかし社業を継承した髙田旭人氏は「クルージングを扱う」「商品点数を一気に減らす」などの大改革を実施し、なんと創業以来初となる売り上げ2000億円超えを達成している。人口減、Amazon等の躍進にも屈しない同社の原動力はいったい何なのか――?
実は長崎だからこそ
当社は成長できたんです

夏目 御社は会社や学校にいる「すすめ上手な人」のような企業ですよね。何でも「これいいよ!」ってすすめて流行らせちゃう人っているじゃないですか――。

髙田 そうありたいですね(笑)。父は長崎の小さなカメラ屋の店主だった頃から、いいものを手にすると、お客様だけでなく社員にまで「これすごいよ!」と話して流行らせていました。実は今も、その思いが根本にあるんです。私たちは商品を扱うかどうか決める時、必ずみんなで使って「このカメラは反応が良いね」「この洗濯機、たくさん入れても汚れが落ちる」などと議論して厳選します。だから自信を持っておすすめできるんです。しかも商品をどう紹介するか議論する"制作議論"の時間にも、よく「友達や親に紹介するならどう言う?」と原点に帰ります。「テレビショッピングなんだからまずスペックを伝えなきゃ」などとかしこまらず、「この商品に惚れた、だからおすすめしたい!」 という本音を話そうよ、と。

夏目 旭人さんは子どもの頃からお父さんの働きぶりをご覧になっていたんですよね?

髙田 はい「カメラのたかた」の二階に住んでいた頃から両親を見ていましたよ。

夏目 今のジャパネットにつながるDNAはあったんですか?

髙田 いつも「何をしたらお客様に求めてもらえるか」を考えて、思いついたことはすぐ試す両親でした。ある日、両親が「宴席で盛り上がって、朝、写真が並んでたらうれしいよね」と話し合っているのを聞いたんです。すると、次からもう業務フローが変わっている。社員旅行で長崎にいらした団体さんがいて、父が宴席の写真撮影を頼まれたとします。すると、夜中のうちに母が現像して、翌朝、ホテルの朝食会場に昨晩の写真が並んでいるわけです。「何日か経ってからよりすぐのほうが売れるんじゃないか」と考え、思い立ったらすぐ試していたんですね。

夏目 その後、通販に進んだのは?

髙田 これも、父がいろいろ試したなかの一つでした。きっかけはたまたまで、1990年に父が地元のラジオ局さんから「番組でものを売りたい」と声をかけられたんです。私は小学生で、姉や妹と一緒に家に走って帰って、3人で寝転びながら父の話を聞いた覚えがあります。

夏目 その市場で成長できたのは?

髙田 今振り返ると、長崎にいたことがよかったんです。

夏目 なぜ?

髙田 アイデアマンの父が自由にいろんなことを試せたからです。
 東京は情報が豊富で、コンサルタントの方もたくさんいらっしゃいます。この方たちは「通販ならこういう売り方が普通ですよ」とか「スタジオはここを借りて」といろいろ手を貸してくださるはずです。もちろん、事業を早めに展開したい時などには大いに助かるはずですが......でも、一般的にこうするはず、という情報を聞き過ぎると、結果も「今まで通り」に収束していくんですよ。
 しかし長崎にはそういう情報が少ないので「どうやると売れるのかな?」と自分で考えるしかなかった。その結果、カメラ屋時代に昨晩の写真を朝並べたように、自分たちで「こう売ってみよう」「こう仕入れてみよう」と仮説を立て、試して、やってみて、また振り返って......とPDCAサイクル※を繰り返して「マスメディアを使って個人的にすすめる」といったオリジナルの手法を確立していけたんです。

※PDCAサイクルとはPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)を繰り返し、業務を継続的に改善することを指す。

夏目 以前、お父様の取材をした時「人間も企業もPDCAサイクルを繰り返した回数で到達点が決まる」とおっしゃっていました。その原点は「カメラのたかた」時代にあったんですね。

会議中の髙田社長。「商品を通してお客様の生活を豊かにし、感動をお届けしたい!」という想いは今も変わらない

「それ、わかってた」に
意味はまったくない

夏目 旭人さんも、長崎弁こそ出ませんがアイデアマンですよね。

髙田 家族からは「父そっくり」と言われます(笑)。

夏目 業績好調に大きく影響したアイデアは何でしたか?

髙田 当社は今、バイヤーが選んだ商品を数万台単位で買い取って販売しています。もし売れなくても、メーカーさんに返品はしません。すると、当社が在庫リスクを抱えるかわり、スケールメリットを活かして商品を安く仕入れ、販売することができるんです。しかも、ご注文をいただき次第すぐ発送できます。
 これは商品の目利きに絶対の自信があるからこそ実現できた好循環ですね。この案を社内で検討した時、バイヤーたちに商品に自信があるかどうかを聞いたら、みんな「ある」と言う。じゃあ買い取ってしまおうかと聞いたら「いやいや、それはリスクが」と言うんです。「それ、意味わかんないよ(笑)」と言って実現した覚えがあります。

夏目 チャレンジングだなぁ。その後、商品の大胆な絞り込みも行いましたね?

髙田 以前は約8500点もの商品を扱っていたのですが、これを約600点にまで絞りました。約93%減です。しかし、これが今の業績に結びついているんですよ。

夏目 なぜ!?

髙田 膨大な商品を抱えていると、現実的にすべての商品を熟知して、売り方を検討していくことは難しいんです。一方、商品点数を絞れば、社員は商品を熟知した上で丁寧に紹介できます。また、商品を厳選しているからこそ、大量に仕入れ、スケールメリットを活かすこともできます。

夏目 なるほど。

髙田 しかも、アフターサービスも当社で行えるようになりました。以前は、故障したら当社が商品をお預かりし、メーカーさんに修理を依頼してお客様にお戻ししていました。しかし現在は修理の約70%を当社で対応しているから、お預かりの期間を短縮でき、修理代も下げられ、顧客満足度が大幅に上がったんです。
 しかも、修理の時などに、お客様から「この機能はいらない」「なぜこれができないのか」といった声が集まってくると、当社がメーカーさんと一緒にオリジナル商品を開発できます。これもご支持をいただいているんですよ。

夏目 わかってきましたよ。旭人さんは以前、別のインタビューで「ものを仕入れて売る、という四面四角になりがちな商売に血を通わせた」とおっしゃっていました。その言葉通り、商品点数を絞ることで紹介からアフターサービスにまで血が通い、具体的に言えば販売だけでなく商品の企画にまで踏み込めた、というわけですね?

髙田 そうかもしれません。あとはやはり綺麗事でなく「チャレンジ」が大切だったんです。お客様のことを考え抜いて「こんなことしたら喜んでくださるかも」と思っても、人の意見を聞き、一般的な数字を見るうちに自信をなくして、それを他の人がポン! とやった瞬間「ああ、わかってたのに!」というシーンってありませんか? 実は、思いつく人はいっぱいいて、それより思い切ってやってみるかどうかが大切なんですよ。

夏目 とくに小売業は、棚の配置やPOPを少しいじるだけで結果が大きく変わりますからね。なるほど「ジャパネット流」の根っこが理解できてきた気がします。

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