2017.12.04

本音肯定で発展してきた歴史│トミヤマ助教に教わる女子マンガの系譜 ポイント①

女子マンガは、女性向けの商品やサービスと同じように、常に女性の味方。女性をいかに元気づけ、肯定し、発言力をあげていくかをテーマに、生活者に寄り添いながら本音を読み解き、深層心理を浮き彫りにしてヒットが生み出されています。そこで、早稲田大学文化構想学部助教のトミヤマユキコさんに、女子マンガから女性心理を紐解く4つのポイントについて教えていただきました。

ポイント①本音肯定で発展してきた歴史
'80年代は、女子マンガの"踏み切り板"時代

'70年代に入ると、女性向けマンガ雑誌の創刊ラッシュがはじまります。そして、作品数が増えるにしたがって、女性の本音や欲望の描き分けが求められるようになっていきます。どれがヒットするかというのは、その時々ですけれど、作家さんには、女性の欲望を細分化することが求められるようになりました。

女性の欲望や本音の描かれ方には、「社会の中の"私"を認めてほしい」という流れと、「社会とは全く切り離された、個人としての"私"を、愛し、認めてほしい」という流れがあります。本当はその両方が手に入れば幸せですが、この時代の作品には、まだ分裂が見られます。そういう意味で、女性の欲望、本音を肯定した作品が描かれだしたごく初期の、"踏み切り板"みたいな時代だったと言えるでしょう。

'80年代に連載されていた『白鳥麗子でございます!』は、本音の肯定という視点で見てみると、とても面白いです。主人公の麗子はいわゆる「ツンデレ」で、読者は彼女の「心の声」を読めますが、他の作中人物にはそれが分からない。読者は神の視点に立って、麗子が言っていることと、やっていることが全然違うということが分かるからこそ、面白いと感じるわけです。

白鳥麗子でございます!(1)著:鈴木 由美子

当時はみんな、「なんだ、この女、面白過ぎる!」という感じで読んでいたと思いますが、現代から見ると、麗子は心の中でしか本音を言えていない。『白鳥麗子でございます!』は、本音を口に出したいけれど、心の中に留めてしまう、過渡期的な作品と言えるかも知れません。

'90年代以降、思ったことをはっきり言う女性たちの登場

3人娘がかしましくしゃべる『くちびるから散弾銃』が'80年代末に連載を開始し、'90年代に恋の本音満載の『ハッピー・マニア』が出てきて、女子マンガの流れが、思ったことをはっきり言う方向へとシフトしていきます。そして『ハッピー・マニア』の流れを汲む"ガールズトークマンガ"として位置づけられるのが『東京タラレバ娘』です。作中で語られる女性たちの辛辣な本音トークこそが、多くの女性の共感ポイントだと思われますが、作者の東村アキコは、一貫して「女に変われという時代はもう終わっていて、女は変わらなくていい」というメッセージを発信しており、女性読者の自己肯定感アップに繋がっていると思います。

東京タラレバ娘(1)著:東村 アキコ

とはいえ、今の社会で生きにくさを感じている女性たちにとって、世間の目は完全に無視できるものではありません。そうした、周囲に馴染もうとする努力もしっかり描かれているところが、より深い共感を呼ぶのではないでしょうか。

女性の強さ、たくましさも全肯定

一方、'90年代に描かれた『美少女戦士セーラームーン』は、男性に託されがちな強さとか、たくましさを女性が体現している作品。また、女たちだけでプロジェクトを完遂することがあってもいいじゃないかという作品でもあって、セーラー戦士の話としても、女性が社会でどうやってたくましく生きていくかという話としても読めます。セーラームーン世代の女性たちが仕事で辛いときに、「セーラームーンのテーマ曲」を聞くと言う話もあるくらいです。

美少女戦士セーラームーン 完全版(1)著:武内 直子

読者にとっては、自分の気持ちを強く保つためのお守りみたいなものになっていて、その効力が未だに切れていない、本当の名作だと思います。

しかも、この作品から派生するようにして、『魔法騎士レイアース』や『カードキャプターさくら』『プリキュア』という、強い女性が活躍する作品が生まれていきます。

カードキャプターさくら(1)著:CLAMP

魔法騎士レイアース(1)著:CLAMP

戦闘シーンも、女子マンガならではの美しさで描かれています。女の子が何かに歯向かう、立ち向かう、ノーと言う。そのことを悪いと考える必要はないと、絵で説得しているのが凄いところです。これは、女性の社会進出と、とても重なる部分です。基本的に、いまだに世間は男社会です。そこで働く女性たちが、本音なり、異議申し立てなりを口にしなければならない場合があると思うのですが、セーラー戦士たちは、ただ敵を「倒す」のではなく、和解したり、教化したり、といった柔軟性を見せてくれます。そしてそれは、実生活のロールモデルとしても参考になるだろうと思います。

トミヤマユキコさん ライター/早稲田大学文化構想学部助教
1979年秋田県生まれ。早稲田大学法学部、大学院文学研究科博士後期課程を経て、文化構想学部助教に。ライターとして「ESSE」や「エル・グルメ」などで執筆。大学では、少女小説、少女マンガについての研究を行う。著書に『パンケーキ・ノート』(リトルモア)、『大学1年生の歩き方』(左右社)』がある。

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