2019.02.19

今さら聞けない「メールマーケティング」|成約に結びつけるための基礎の基礎

SNSをうまく活用して、コンタクトすることができなかった新規顧客を囲い込みたい。そんな希望を持つ一方で、これまでいろいろな方法で集めた顧客リストを活用して効率的に成果につなげることができたら......。マーケティング担当者の頭には常にある課題だと思います。

「メールマーケティング」は、このような課題の解決策としてまず考えられる手法です。
メールという手段に古さを感じたり、開封率が年々低くなっているという現実から、メールを軽視しがちな傾向も見られます。しかし、いまだにメールをきっかけとして商品を購入する割合はFacebookやLINEなどの他のチャネルと比較して最も大きい、という調査結果もしばしば見受けられます。
さらにメールマーケティングをサポートするメール配信ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールが充実してきたことで、メールマーケティングを推進しやすい環境になっています。そこで今回は「成果に結びつけるためのメールマーケティング」をテーマに、知っておくべき基礎をご紹介します。

メールマーケティングとは? メルマガなら配信してるけど......

メールマーケティングとは、読んで字のごとくメールを用いたマーケティング活動のことですが、しばしばメルマガ配信と混同されることがあります。
メルマガはメールマーケティングの一つですが、多くのお客様に同一の情報を一斉に配信するメールで、もっともシンプルな方法といえます。もちろん、すべての顧客リストに対して等しく有効な、あるいは必要な情報を伝えたい場合、メルマガは効果的です。
しかしメール配信による成果を追求していくと、「誰に対しても共通の内容」を「一斉に配信する」メルマガスタイルだけでない「戦略的なメールマーケティング」が必要になってきます。
明確な目的にもとづくプランでメールの内容や配信スケジュールを決定し、さらに配信後も改善を図っていく。メルマガとの併用も含めて、このような「戦略的メールマーケティング」へと進化していくはずです。

メールマーケティングのシナリオ設計

メールマーケティングの活動は、目的を達成するために「誰に」「どんなタイミングで」「どのような内容の」メールを送るかで構成されます。そのシナリオを作ることは、メールマーケティングのなかで最も大切な要素です。
ここでは例として、「某オフィス向け製品」のメールマーケティングの簡単なシナリオを考えてみます。

(1)目的の明確化
まずメールマーケティングによって達成すべき目的(KGI)を明確にします。
ここでは「ある特定の製品に関する問い合わせを10件獲得する」とします。

(2)配信リストの抽出
ここでは全顧客リストから、該当製品の販売ターゲットである業種・業界・企業規模のリストを抽出します。さらにそのリストの情報から「現場スタッフ」と「管理者」を分類してみます。
※ここで大切なのは、リストの数から逆算予想したときに(1)の目的達成が見込めるかを見極めることです。リストの総数が少なすぎる場合は、抽出の方法を考え直したほうがよいでしょう。

(3)配信内容の決定
現場スタッフ→「該当製品活用による業務負担軽減」をテーマにシリーズ化した内容
管理者→「該当製品導入によるコストダウン」をテーマとした内容

というように配信内容を決定します。

(4)配信スケジュールの設定
対 現場スタッフ→該当製品を活用できる繁忙期の半年前から数回に分けて配信、3ヵ月前にキャンペーン情報と合わせて最終版を配信
対 管理者→繁忙期の3ヵ月前(導入検討期)にキャンペーン情報と合わせて配信

というように配信スケジュールを決定します。以上のようなおおまかなシナリオをもとに、さらに各要素の詳細を考えていくとよいでしょう。


メールマーケティングの手法

前項のシナリオでも少し触れましたが、メールマーケティングの手法には下のようなものがあります。

(1)ステップメール
ステップメールは、お客様の興味・関心の度合いに合わせて、段階ごとに配信内容を変え、メールを送信する手法です。最終的には問い合わせや購入などの目的に結びつけることをめざしています。
例えば前項のオフィス向け製品の例で考えると、

第1回 繁忙期にありがちなトラブルや問題(共感)
第2回 担当者が考えた解決策が失敗に終わった事例(他社の取り組みへの興味)
第3回 この製品を導入して成功した事例(製品への強い関心) + 問い合わせやデモ申込みへの誘導

というように、ちょっとした共感から製品への強い関心まで、徐々に意識が高まっていくようなメールを送ります。
ここでは詳しい説明は省きますが、ユーザーがどのような課題を持ち、その解決のために動くかを分析した「カスタマージャーニー」を想定することで、適切な内容を検討しやすくなります。

(2)ターゲティングメール
お客様をなんらかの基準でセグメント(分割)し、最適な情報をメール配信します。
たとえば、男女、年齢、居住地、事務職と技術職などの属性から趣味や志向、収入などの個別情報、あるいは「1週間以内にサイトにログインした人」「サイトで対象ページを閲覧した人」などの物理情報などでセグメントします。そのターゲットごとに内容を最適化してメールを送信することで、メールの開封率やメール内URLのクリック率が上昇し、次の行動につながります。

(3)リターゲティングメール
なんらかの事情があり成約につながらなかったが、商品やサービスに興味を持っていたお客様に向けてメールを送信します。「以前、製品資料ダウンロードをしたのに、その後の行動がなかったお客様」や「製品ページを2回以上見たけれどアクションにつながらなかったお客様」などがそれにあたります。
その場合「新しく追加した事例ダウンロード資料の通知」や「該当製品の限定キャンペーンの告知」など、内容を最適化したリターゲティングメールを配信します。


メールマーケティングを行うメリット・デメリット

それではメールマーケティングを他のマーケティング施策と比較した場合、その位置づけや価値はどうでしょうか。

●メリット
・低コストで開始できる
出費という視点だけで考えれば、メールマーケティングはとても低コストで運用可能なマーケティング施策です。メール配信システムや分析ツールの費用がかかる程度で、それらのツールも比較的安価です。中には数千円から利用可能なツールもあります。

・高いROIが期待できる
低コストゆえに高いROI(投資利益率)が期待できます。メールマーケティングの適確な設計によって一定の利益を確保することができれば、他のマーケティング施策よりも相当に高いROIを実現することができるでしょう。

・効果が数値で計れる
メール配信システムでカウントした開封率やURLクリック率などのデータはもちろんですが、Googleアナリティクスなどと組み合わせて活用することで、さらに踏み込んだ効果測定ができます。成果が出た場合の行動パターンをつかんだり、どこで多くがつまずいているのかなどを把握できますので、それを分析することで必勝パターンや改善プランを設計することができます。

・サービスツールが豊富
成熟期に入ったメールマーケティングには、数多くのクラウドサービスが存在します。メール配信に特化したもの、解析ツールが充実したもの、リッチなコンテンツ制作ができるもの、SFA(営業支援システム)と連携したものなどなど、考えうるあらゆるメールマーケティングのためのツールがあります。
緻密にプランニングして最適なツールを選ぶことはもちろん、まずは無料のツールで始めてみるということも可能です。

●デメリット
・実際には「手軽で簡単」ではない
目に見える部分に関しては低コストでお手軽に感じられるメールマーケティングですが、中身を考えたとき、そうとばかりは言えません。ノウハウや専門知識を持つ人材が綿密にプランを設計し、確実に実行しなければ効果があがらないからです。
目的を明確にし、それに対応したリストに対して最適化したメールを適切なタイミングで送る。さらにその結果を分析し、次の施策を改善する。もちろんその過程でミスなどが発生しないよう、細心の運用を行う。
MAツールなどのサポートが向上したとはいえ、あくまでツールはツール。この一連の業務を実施するための人材の確保とその内容を考えれば、メールマーケティングは決して手軽で簡単な施策ではないともいえるでしょう。


成約に結びつけるためのPDCA


メールマーケティングを続けるにあたって、PDCAはとても重要です。それぞれ整理してみましょう。

●PLAN
これまでにも説明してきた通り、
(1)目標の明確化
(2)目標に応じた配信リストの抽出
(3)配信内容の決定
(4)配信スケジュールの設定
までを設計します。

まず必要なのが「目標設定」です。メールマーケティングを活用し、どのような成果(KGI)を得たいのか明確にします。そしてKGIに対する指標となるKPI(メール到達率、開封率など)の設定も行います。
次に配信リストを抽出し準備しますが、このときリストの数に注意するようにします。目標やKPIから逆算した母数よりも、このリスト数が多くなければ達成は難しくなります。
さらに配信内容とスケジュールを設計します。前述した「ステップメール」「ターゲティングメール」「リターゲティングメール」いずれであっても、ユーザーに最適化した内容を作成し、スケジュールを設定することが重要です。

●DO
メール配信の実行では、PLANを実現するために最適なメール配信専用ツール(メール配信システムやMAツール)を選んで活用しましょう。ツールによっては、より効率的に目的をかなえられる配信機能を備えていることもあります。積極的に比較検討してみてください。

●Check
実行の後は効果測定が必要です。メールそのものの効果測定の指標としては「メール到達率」「開封率」「URLクリック率」「コンバージョン率」などがあります。
さらにメールからのサイトへの誘導、そしてその先の行動まで把握しておきたいことはいうまでもありません。

●Act
もし思ったよりも開封率が思わしくないのであれば、「配信リストのユーザーに対して、本当にふさわしいテーマでメールを送っているか?」「もっと注意をひき、開封してもらえるメールのタイトルは考えられないか?」というような検討を行い、改善を加えていきます。
すべての数値が期待以下だった場合は、そもそもの配信プランが適切ではなかった可能性もあります。配信先のセグメントや配信テーマから考え直すことも必要でしょう。

メールというシンプルなチャネルを利用しながらも、お客様の行動を促すメールマーケティングは意外と奥深いものです。
時代とともに新しいコミュニケーションチャネルが次々と生まれていますが、メールはいまでもマーケティングの施策としてとして欠かせないものです。メールマーケティングのメリットとノウハウを大いに生かし、成約へとつなげてください。

講談社が提供する各種プロモーションサービスのご利用に関するお問い合わせ・ご相談はこちら