2019.01.15

望まれる"次世代型教育産業"とは!?│キッザニア KCJ GROUP 社長インタビュー 前編

そろそろ21世紀型の教育を始めよう

社会が望む人材は勝手には育たない!
望まれる"次世代型教育産業"とは!?

KCJ GROUPが運営するキッザニアは、こども向けの"職業体験型テーマパーク"だ。施設に築かれた「街」の航空機パイロット、お菓子工場の工員、消防士などなどはみんなこども。ANA、森永製菓、AIGなど錚々たる企業からスポンサードを受け、仮にパイロットであればフライトシミュレーターで"操縦"可能など、リアルな職業体験ができる。'06年にキッザニア東京が誕生すると、'09年にはキッザニア甲子園(兵庫県)が開業、現在は名古屋への出店計画も進めるなど人気がとどまらないなか、住谷栄之資代表取締役社長兼CEOは今の教育産業に何を思うのか。
キッザニアは、
モタモタする姿を見守る施設?

夏目 別の角度から質問を始めたいのですが......今のこどもたちは昔と違う、と感じることってありますか?

住谷 いえ、こどもたちはいつの世も変わらず、よほどシリアスな場面でない限り無邪気に明るく遊ぶものだと思います。ただ"大人たちがどんな環境にいるか"は敏感に察知しているはずです。むしろ現代は、大人たちが昔と違うのではないでしょうか。昭和の頃、大人は「今より悪くなることはない」とがむしゃらに頑張っていました。一方、現代は満ち足りた世の中ですが、「今以上」を望む大人が少ない。さらに言えば"こどもを見守る余裕"もありません。

夏目 どのような場面でそうお感じになりますか?

住谷 例えばこどもがユニフォームを着るとします。その時、こどもは「まずここに腕を通して、次に......」と自分の頭で考えようとするはずで、当然、モタモタします。ただし、こどもの「考える力」を育てたいなら、そのモタモタする姿を見守ってあげるべきなんです。
ところが今は大人が忙しい。時間がないからつい着させてあげてしまう。これでは、こどもは自分で考える力を身につけられません。
ただし、これは特定の大人の責任ではなく、社会の風潮に原因があると思います。大人は職場で「早くやれ」「結果を出せ」と追われ、まさか「ゆっくりやりなさい」とは言われないから「早くやることが正しい」と思ってしまいがちなんです。

夏目 なるほど。

住谷 あえて言えば、キッザニアは「モタモタする」姿を見守る施設かもしれません。(消防士やパイロットなどの)仕事に慣れたこどもは誰もいませんよね。だからみんな、新しいことに時に戸惑い、それを理解し、時には自分なりのやり方にトライしたりする。これが実は、こどもたちにとっては楽しいんです。

塾もキッザニアも、
学校教育を補完していた

夏目 住谷さんがキッザニアを起業されたきっかけをお教えください。60歳を過ぎてから起業されていますね。

住谷 ええ、元は先輩と一緒に起業した会社に勤めていました。キッザニアと出会ったのはたまたまで、定年退職後、アメリカ人の友人から「メキシコにこんなテーマパークがあるよ」と話を聞いたんです。面白そうだと思い、日本での展開も視野に入れつつ家族で訪ねてみると......孫たちが閉館時間まで帰ろうとせず「明日も来たい」と言うんです。その時、私は成功を確信して、ライセンスの獲得と日本への誘致を決めました。もし孫が「もう帰りたい」といっていたら、日本にキッザニアは誕生していなかったかもしれません(笑)。

夏目 キッザニアは工場見学のように何かを見るだけでなく、体験ができるからこどもがワクワクするんでしょうね。例えばムーンスターの「くつ工場」のパビリオンに行くと、タブレットでパーツに色や模様をつけて靴のデザインができます。

住谷 しかも、仕事を体験すると「キッゾ」という通貨でお給料がもらえます。その時、こどもたちは本当に嬉しそうな顔をしてくれるんですよ。これは何かをもらえたことがうれしいだけでなく、自分が社会に参加したことがうれしいはずなんです。そして、こどもたちはもらったキッゾをどう使おうか自分で考えます。実はこの「社会に参加した感覚」や、キッゾの使い方を「自分で考える」ことも大切な要素です。

夏目 一足先に大人になれた、何かに変身できたような楽しさもありますよね。キッザニアは「エデュテインメント」をコンセプトにしていますが、いままでこういった施設はなかったのかな、と想像します。

※エデュテインメント=楽しむ(エンターテインメント)+学ぶ(エデュケーション)の造語

住谷 今まで日本では「教育」というと「教える」ことを指していたと思うんです。先生や親も「いい教え方ないかな?」と気を揉みますよね。しかし、こどもたちが自分で考え、何かに気づく体験も重要なはずなのです。私は学校教育や塾を否定するつもりはまったくなくて、こどもたちには「教える」ことも必要だと思います。でも、自分で考え、自分で気づく機会をこどもたちに与えることも大人の役割だと思っています。

夏目 学校では気づけない何かに気づける場をこどもたちに与えているわけですね?

住谷 そうかもしれません。以前はおもに学力によって能力が評価されてきました。しかし多くの方が現状にクエスチョンを持っていたのだと思います。例えば無人島に行って自活するような能力も、誰かを笑わせる能力も、生きていくために大切な「能力」ですよね。そしてキッザニアには、職業を体験することによって「僕にはこういう何かをデザインする仕事が向いているのかもしれない」とか「私は誰かに喜んでもらえた時が一番楽しかった」と自分の能力を感じるチャンスがあるんです。これが社会に受け入れられたのだと思います。

夏目 学校教育を補完するという意味では、塾と同じ役割もあるんですね。

実在する企業がスポンサーとなった、こどもサイズのパビリオンがリアルな街並みを形成している

次の世代で伸びるのは
最先端の職業にコミットした教育

夏目 考えてみれば、いま、社会人教育の場でも「学びだけでなく"本人の気づき"や"本人の頭で考えたこと"を大切にしよう」という空気がありますよね。確かに、学びだけだとダイバーシティ(多様性)が失われてしまいます。

住谷 まさにそこです。例えば企業が学生を採用するときに何を重視するかの調査結果を見ると、パッション、コミュニケーション、コラボレーション、クリティカルシンキング(枠組みにとらわれない発想)、といった項目が並んでいます。ところが、これらを持った人材をいかに育てるかに関しては手つかずなんです。

夏目 私見ですが、学校教育も時代遅れなのかな、とも思います。計算や歴史の年号の暗記など、エクセルや検索ページがあれば1秒もかからず正解が導き出せますよね?

住谷 いえ、私は学校教育を否定はしませんし、ある程度はこどもたちに大切なことを教えていくことも大切だと考えます。ただ、世の中が求めるものが変わっていて、学校教育だけでは対応できない部分が大きくなっていると思うんです。高度経済成長の時期はモノが足りなかったから、工場などでモノを大量生産できる、規則通りに動ける人が求められていました。しかし今は「何をつくるか」も要求される時代ですよね?

夏目 iPhoneもそうですが、モノを大量に安くつくるより、新しい技術を活かして何をつくるか考えるほうが大切な時代ですよね。

住谷 そこにキッザニアの意味もあります。当社は「ジュニアチャレンジジャパン」という中学生向けのプログラムを用意し、例えばAIの分野で著名な企業経営者をお招きし、特別なプログラムを実施しています。また、人気YouTuberをお招きして「YouTuber体験」をしてもらったり、ロボット、アート、食育など、様々な分野でプログラムを実施しました。
なぜなら、「新しい何かをつくってみたい」という思いは、やはりワクワクしながら世の中の最先端と触れ合ってこそ生まれるものだからです。これらの体験を通して好奇心を持てば、こどもたちは学校の授業も「今これを学んでいるのは、あの時に見たあの職業に役立つからなんだ」と広い視野を持って聞いてくれます。また、ニュースに興味を持つなど、自分から学び始めるでしょう。

夏目 なるほど、わかってきました。いままで教育産業というと塾や〇〇教室が多かったと思うのですが、今後は、こどもたちの大学進学でなく、こどもたちがどう働くか、どう社会と向き合うか、そこを教育すべきなんですね。そして教育産業の中でも、そこにコミットした企業が伸びていく......。

住谷 だといいですね。そして、そういう教育もあったほうが、日本の将来のためにもなると思うのです。

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