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大分県椎茸農業協同組合 × ほしじいたけ ほしばあたけ

絵本とのコラボレーションで、地域の特産品を自慢の名産品に

大分県椎茸農業協同組合が、石川基子さんの絵本『ほしじいたけ ほしばあたけ』とコラボレーションした事例です。商品とキャラクターの親和性の高さが、さまざまな課題解決に寄与しました。

大分県椎茸農業協同組合×『ほしじいたけ ほしばあたけ』のコラボパッケージの特設サイト  

これ以上ない親和性の高さに着目

大分県は生産量・品質ともに日本一の乾しいたけ(干ししいたけ)の産地です。しかし、ここ10年で家庭での干ししいたけの消費量は45%も減少。大分県椎茸農業協同組合では、新規需要の掘り起こしが喫緊の課題となっていました。

課題解決のために、どのような経緯で講談社とのコラボを決め、実際にどのようなコラボが実現したのか。大分県椎茸農業協同組合 直販営業部 直販営業課 主査 水嶋沙織さんにお話を聞きました。

大分県椎茸農業協同組合 直販営業部 直販営業課 主査 水嶋沙織さん

【課題】
・新規需要の掘り起こし
・若年層の商品認知向上
・既存パッケージは、素朴で目立たない

「50〜60代以上の方は、子どもの頃から干ししいたけに馴染みがあり、普段の食事にも使ってくださいます。しかし一方で、若い方は限られた機会にしか干ししいたけを食べる習慣がありません。おせち料理の煮物やひな祭りのちらし寿司くらいでしか使わないという方も増えました」と水嶋さんは話します。

「干ししいたけには、"冬菇(どんこ)"と、"香菇(こうこ)"と、"香信(こうしん)"の3種類があります。冬菇や香菇はお中元やお歳暮などの贈答品に人気の高級品でしたが、お中元やお歳暮文化の低迷とコロナ禍が重なり、昨年と今年は繁忙期の注文が大きく落ち込んでいました」

そこで商機拡大の新企画として、水嶋さんはキャラクターとのコラボを提案。『ほしじいたけ ほしばあたけ』シリーズの絵本を選んだ理由は、"子ども人気"にありました。

「『ほしじいたけ ほしばあたけ』の絵本は、子どもたちに人気のシリーズです。しかも主人公が干ししいたけですから、これ以上ない最適のコラボだと考えました」


きのこ村のみんなから敬愛されている、「ほしじいたけ」と「ほしばあたけ」が主人公

子どもから大人まで、広く届くのが「絵本」の魅力

水嶋さんが絵本のキャラクターIPを選んだ理由は、ターゲットである20〜30代の子育て層に届けたかったからだと言います。

「20〜30代の子育て層に訴えるには3つの方法があります。1つは、おしゃれなイメージにすること。もう1つは、インフルエンサーとのコラボ。そして3つめは、子どもに訴えることです」

ただ、おしゃれ路線は費用もセンスも必要であり、インフルエンサーとのコラボは誰を選ぶかが難しいという懸念がありました。

「ですが絵本は、コンテンツ自体の魅力を活かせばいい。さらに絵本であれば、特定の世代ではなく、子どもから大人まで幅広い認知があるというのも、私たちの狙いと合致した部分です」

『ほしじいたけ ほしばあたけ』に登場するキャラクターは、大分県の特産品であり、おいしくて栄養もある「干ししいたけ」。キャラクター=商品という、これ以上ない親和性の高さが決め手になったと話します。

「こんな偶然、どこを探してもありません。コラボするなら、『ほしじいたけ ほしばあたけ』がいいと思います、と組合長にも伝えました」

加えて、「ほししいたけ」のキャラクターの「本物のしいたけのようなリアルさ」と「独自性の高さ」も、若年層や女性に刺さると感じたそうです。

ただ、提案当初、絵本を知らない組合長や理事からは「キャラクターが独特過ぎる」といった声もあったといいます。しかし、子育て中の若手女性職員は全員一致で「かわいい!」と大賛成。保育園の子どもたちの絵本への反応からも、「このキャラクターは絶対にいける」という確信を持ったと水嶋さんは振り返ります。

親和性の高い絵本とコラボレーションして生まれた、少量サイズの新商品「大分 乾しいたけ」

プロのサポートが、クリエイティブの質の向上にも寄与

講談社とのコラボレーションにより、絵本への造詣が深いプロフェッショナル(編集者)のノウハウや知見を借りられたことも、完成度の高い広告展開につながったと水嶋さんは話します。

「最初は、講談社さんのような大きな出版社が、地方の小さな組合とコラボしてくれるのか不安もありました。でも、ダメ元で問い合わせをしたところ、とても丁寧にこちらの話を聞いてくださり、大変うれしく思いました。プロならではのアイデアもたくさんご提案いただき、おかげさまで、自分たちだけで考えていたら絶対にできなかったハイクオリティの広告展開が実現できました」

今回は、店頭展示の販促物としてうちわと風船、キャラクターパネル、店頭販売用のテーブルクロスを制作。そのほかに、大分県内限定で流すテレビCMと新聞広告も制作しました。

テレビCMの中で、講談社の編集者がアイデアを提案した「シワシワだったほししいたけのじいさんが、水で若返るシーン」は、「一度見たら忘れられないインパクトを創出できた」と水嶋さんは語ります。

大分県内で流れている「大分 乾しいたけ」のCMは子どもたちにも大人気

「大手の出版社さんに、こんなに親身に寄り添っていただけるなんて思ってもみませんでした。思い切ってご相談して、本当によかったです」

女子高生からも好評! 若年層へのアプローチにも成功

今回のコラボでは、キャラクターの魅力によって、ターゲット層以外の若年層にもアプローチを実現するという相乗効果も生み出しました。

「大分県内のスーパーと空港で販売しているのですが、子どもが売場に親を連れてきたり、女子高生が『かわいい!』と興味を示してくれたりと、若い世代に商品を知ってもらうことができました。さらに、テレビCMが流れるたびに問い合わせや注文が入り、『県外の親戚や知人に贈りたい』という問い合わせも増えています」と水嶋さんは語ります。

しかし当初は、スーパーに専用売場を持っているわけではないため、どこまで売れるか不安も抱えていたそうです。

「キャラクターコラボによる効果は想像以上でした。コロナ禍という制限があるなかでは、最大限のプロモーション効果が得られたのではないかと感じています」

子どもたちに喜んでもらえるように、風船やうちわを設置

今回コラボレーションした商品「大分 乾しいたけ」は、15gという1回で使い切れる内容量と低価格にした点も、プラスに作用しました。

「これまでは最低でも100gという大容量しかなかったので、1回使い切り量15gという小分けパックの販売は大きなチャレンジでした。でも、『これならかわいいし、ちょっと使ってみたい』と手に取っていただくきっかけが作れたのではないかと考えています」

知名度や人気ではない、コラボ成功の秘訣

今回のコラボレーションが成功した要因を、水嶋さんはどう見ているのでしょうか。

「私たちの思いと、商品とキャラクターの親和性があってこその成功だと思っています。そしてやはり講談社さんのサポートも大きくかったですし、どれかひとつ欠けても、うまくいかなかったと感じています」

「新しいキャラクターを作ったの?」と聞かれることもあるというほどの親和性の高さから生まれた今回のコラボレーション。「今後もシリーズ化してどんどん商品を増やしたい」と水嶋さんは意欲を見せます。

さらに、大分県庁も今回のコラボレーションに注目しており、地域活性化の一助になるのではと、期待を寄せているそうです。

「今年はコロナ禍で中止になってしまいましたが、『全国乾椎茸品評会』のイベントに作者の石川先生をお招きしてトークショーを開催するなど、やりたいことはたくさんあります。今後も新しいチャレンジをしていきたいですね」

大分県椎茸農業協同組合×『ほしじいたけ ほしばあたけ』の特設サイト
http://osk-shiitake.or.jp/Collabo/  


講談社の絵本『ほしじいたけ ほしばあたけ』とのコラボレーションにより、認知度拡大と新たな需要獲得につなげた、大分県椎茸農業協同組合の事例。キャラクターマーケティングは、地域や商品を問わず、効果を発揮することが証明された好例と言えそうです。

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