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西日本豪雨の復興支援に大きな反響 「獺祭 島耕作」が発売されるまで

マンガ×マーケティング2018.09.07

西日本豪雨の復興支援に大きな反響
「獺祭 島耕作」が発売されるまでのエピソードと
35周年を迎える『島耕作』が持ち続ける影響力


弘兼憲史×外岡知司子(モーニング編集部) 田ノ上博規(モーニング編集部)

今年7月の西日本豪雨で被災した純米大吟醸「獺祭」の蔵元、旭酒造。浸水被害によって3日間停電となり、当時発酵中だったタンク150本分のお酒が「獺祭」として販売できないものになってしまった。そこで立ち上がったのが、弘兼憲史さんだ。味は美味しいそのお酒を「獺祭 島耕作」として65万本発売し、一本につき200円を復興支援に当てることになった。『島耕作』シリーズは今年で連載35周年。唯一無二の作品が生まれ続ける背景を、担当編集2人と語り合った。



大人たちが本気を出した復興支援への取り組み

外岡 「獺祭」で有名な旭酒造は、弘兼先生の故郷である山口県岩国市の酒蔵ですが、会長の桜井博志さん、社長の桜井一宏さんには、2016年に取材でお世話になりましたね。『会長 島耕作』で、島耕作が日本酒「喝采」造りに挑戦するというエピソードのモデルとなりました。
弘兼 その後、島耕作ラベルの非売品「シマコー獺祭」を読者プレゼントにしたんだよね。
外岡 はい。そのときに作ったラベルの版を、今回発売した「獺祭 島耕作」に活用することができました。
弘兼 最初はね、被災して泥水をかぶってしまった酒瓶を自費で100本買って、少しでも手助けしたいと申し出たんですよ。そうしたら、泥をかぶった酒瓶のものは外には売れないから、もっと大きな支援につながることをしたいという話になって。当時発酵中だった美味しいお酒がまだタンクにあるんだけれど、3日間停電があったからもう「獺祭」としては売れなくなってしまったということで、これを復
興支援に役立てようという話になったんだよね。
外岡 すごいスピード感で決まっていきました。7月23日の夜に旭酒造さんと打ち合わせをして、8月2日には講談社で記者会見。大人が本気になると、ここまですごいんだなというのを目の当たりにしました!
田ノ上 その打ち合わせの場で、題字を岩見屋錦舟さん(書家。弘兼氏の同級生)にお願いする電話を弘兼先生自らされていましたよね。
弘兼 そうだったね。通常売られている「獺祭」の文字と「島耕作」の文字の感じが違うから、島耕作の題字を書いてもらっている岩見屋さんに今回の題字もお願いしようということになって。書いてもらえるか聞いたら即、快諾してくれて、3日後くらいに上がってきた。
  販売価格も、30分くらいでバタバタと決めて。最初は一本に寄付分100円をつけて1100円で売ろうという話だったんだけれど、そうすると寄付額は65万本全部売れても1億円にいかない。1100円というのも、何だか切りの悪い数字だし、買う意識としては100円も200円も変わらないんじゃないかということで、200円に決まった。
外岡 四合瓶一本で1200円(税別)。中には通常だと3万円を超える最高峰の獺祭「磨き その先へ」や通常5000円ほどの「磨き二割三分」のお酒があるのを、すべて同じラベルで発売するということで、ツイッターなどでは何が当たるかお楽しみの「獺祭ガチャ」だと盛り上がっていました。
弘兼 そうそう。ただ、飲み慣れていないとわからないから、違うものを飲んで「これが3万円のだ!」と言っている人もいれば、3万円のものを普通に飲む人もいただろうね。開けたらふたの裏に“当たり”って書いてほしかった(笑)。
外岡 8月10日の発売でしたが、8月7日の時点でもう65万本のうち40万本に予約が入っていました。発売日に池袋東武や池袋西武で120本発売された分も、30分で完売したそうですよ。ものすごい反響でした。


「獺祭 島耕作」発売の記者会見には50近いメディアが取材に訪れた。
左から旭酒造・桜井一宏社長、弘兼氏、旭酒造・桜井博志会長

弘兼 メディアの力も大きいよね。いろいろな方が協力してくれて、ありがたかったですよ。
外岡 インスタでも、「#島耕作」をつけて多くの人がアップしてくれました。私の知人でも、居酒屋を経営している島耕作ファンが100本買ってお店で出していましたよ。
田ノ上 僕の友人もフェイスブックで「獺祭 島耕作」を上げていて、思わずコメントしました(笑)!


海外でも大人気! サラリーマン漫画の金字塔

外岡 取材に行く先々で先生のファンだという方が多いので、取材もしやすいですよね。今年、台湾へ行ったときも、台北松山空港で出待ちのファンに囲まれて大変でした。どうやら取材した台湾の国会に当たる立法院が、「今日弘兼先生が台湾を発たれます」とニュースを流したらしいんですよ。サインが欲しい、写真を撮って欲しいと押しつぶされそうになって、私はアイドルのマネージャーのような気分でした(笑)。
弘兼 芸能人になったかと思った。日本なら飲み屋へ行って裸踊りだってできるけど(笑)、台湾では何もできないな。
外岡 島耕作は全世界でシリーズ累計発行部数4000万部を突破していますが、台湾でも103万部出ています。いつも海外へ取材に行くときには、手土産用に『島耕作』のコミックをトランク2個分持っていきますよね。
弘兼 海外では日本の情報とか漫画があまり入らないから、持っていくと喜ばれるんですよ。
外岡 日本人の場合でも、海外出張のときはガイドブックより『島耕作』シリーズのNY編やミャンマー編を読んだほうがわかるという人もいます(笑)。社会人になった4月に読む人もいれば、人事異動の時期は昇進があるから『課長 島耕作』『部長 島耕作』といったシリーズが全部動いていくんですよね。やっぱり、日本で唯一とも言えるサラリーマン漫画の金字塔なんだというのを、担当していてすごく感じます。
弘兼 中国編などは、中国で起業しようとする人の参考になっていると言われましたね。世の中にサラリーマン漫画はいろいろありますけど、これほどリアルにサラリーマンの仕事を描いたのはたぶん初めてだろうしね。
田ノ上 僕は今年の6月に先生の担当になって、それから全部読み返しましたが、学生編なども当時の政治経済や風俗文化がわかって、とても新鮮でした。
弘兼 スペースが決まっている漫画は余計なことが描けない分、わかりやすいんですよね。学生運動が一番盛んな時期でしたから、それを中心にしながらも、島耕作は全然巻き込まれない。面倒くさいなと思う、ちょっと批判的な傍観者をメインに描いているんです。あの時代を描くとどうしても学生運動に共感するようになってしまうので、あんなものって感じで描きました。
外岡 島耕作は時代を俯瞰の目で見ていますよね。
弘兼 自分のキャラクターを強く出すタイプじゃないですね。勢いのある突出した主人公というよりも、むしろバイプレーヤーを活躍させて、話に広がりを持たせるというか。リアルにいけば、島耕作のようなちゃんと俯瞰で見られる人じゃないと上には行けないと思うので。
外岡 CMにもいろいろ起用されたりして、島耕作は講談社が誇るキャラクターです。
田ノ上 もう文化人のような扱いですよね。スキャンダルの心配もないですし(笑)。
外岡 この秋も日本橋の三越で島耕作まつりを予定していますし、来年の3月までは35周年のイベントもまだまだ開催していくことになりそうです!



ひろかね・けんし╱1947年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業。
松下電器産業に勤務の後、1974年漫画家デビュー。
『人間交差点』(原作 矢島正雄)で第30回小学館漫画賞、
『課長 島耕作』で第15回講談社漫画賞、『黄昏流星群』で2000年文化庁メディア芸術祭優秀賞と2003年日本漫画家協会賞大賞を受賞。2007年には紫綬褒章を受章。そのほか主な作品に『ハロー張りネズミ』『加治隆介の議』など多数。現在は『会長 島耕作』(モーニング)、『黄昏流星群』(ビッグコミックオリジナル)を連載中。







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※弊社広報誌「News Clip」Vol.300よりの転載です。モーニング編集部の担当がまとめました。



課長 島耕作   著:弘兼 憲史 


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